癒しの T-Garden 赤い海の旅人

赤い華 67

赤い華51〜





夏休みでもないのに
館内は意外と賑やかで


ロビーにも くつろぐ人や
売店で買ったと思われる土産物を広げて
談笑している人たちが大勢いた


館内に数か所あるレストランも
前を通れば 中からは人の気配がする





ふらりと立ち寄った売店で 
沖縄のビールを買う


オリオンビール


確か 味が薄いんだよな・・・


郷に入ったら郷に従え という主義の俺は
現地の缶ビールを手にプールサイドをブラブラ


プールに面したレストランは 
ガラス張りで
外からも良く見える


きっと昼間は綺麗な海が 
良く見える特等席なんだろう





もう 誰もいなくなったプールサイドの
デッキチェアに腰かけて
ビールを飲む


星も綺麗だ・・・


ビールを飲みながら 
ゆっくりと星空を眺めて
ユノさんのことを考えた





ユノさんに出逢うまでの自分は
こんな ゆっくりとした時間は持てなかった


平日は必ずデートで夜も遅いし
週末は溜まった野暮用を片付けたり
たまに友人と会ったり


1人暮らしの俺は
買い物にも行かなければいけない


その上
開業してからは
仕事にも手を抜けなかった


クリニックを軌道に乗せるまで
走り続けようと決めていたからだ


仕事関係の本を読んだり
資料に目を通したり
思えば余裕のない生活をしていた





サラ達と毎日会っていた日々が
まるで遠い昔のように
ここ数日は思い出すことすらなかったというのだから
不思議だ・・・





どれもこれも
全部 ユノさんのせいだ





突然 俺の前に現れて
狙いを定めた虎のように
じーっと俺を観察したかと思えば


”好き好きビーム” を巻き散らして
あからさまに告白してくるんだから





昔から繋がりがあったとわかっては
俺も気になるし


気づけば
好き・・・とか・・・





部屋に戻ったら連絡をしてみよう


まだ帰ってないかもしれないし





空になったビールの缶を持ち
人気の全くないビーチに出る


波の音が好きだ


寄せては返す 静かな波の音


目を閉じて上を向き
大きく息を吸い込んで吐く・・・





ユノさん ・・・





逢いたいな・・・





長いこと外にいたせいか
少し肌寒くなってきた


夜は少し気温が下がる


そろそろ部屋に戻ろう





ホテルの出入り口に向かってビーチを歩き始めると
俺の前方から人の気配


そりゃあ 散歩に出る人もいるよな~
こんなにロマンチックなんだし


なんて思っていたら・・・





・・・?





見慣れたシルエット


背の高いその人は 


まっすぐに そして静かに歩いてきた





あ・・・


ぼんやりと


だけど段々はっきりと


映し出される その人の姿


逢いたかった人が
どんどん近づいてくる





幻・・・じゃないよな





少し現実離れしたシチュエーションに
センチメンタルに なり過ぎたのかも・・・





プールサイドの外灯が邪魔して
ユノさんの表情が見えない





間違いない





ユノさんだ





1人なのかな?





身体中の力が スーっと抜けて
嬉しさに包まれる





『チャンミン・・・』





逢えた





やっと 逢えた・・・





逢えないかと思ったのに・・・





「ユノ・・・さん・・・」





自然に流れ出た涙で
顔が良く見えないけれど
逢いたかった人の顔が見たい


瞬きをして
ユノさんに視線を合わせ
切れ長の瞳を見て
ゆっくりと微笑んだ





今 俺は
うまく笑えているだろうか?





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