くせ 93
僕が在校生の関係者で
怪しい人間ではないと言うことが分かった後も
何となく 視線を感じていた
チラチラと見る他の保護者たちは
殆どが母親で
何となく居心地が悪かった
ユノの話では 去年
文化祭のお化け屋敷に僕が顔を出して以来
【ユノ君のハンサムな親戚のお兄さん】 は
かなり有名になったらしい
ユノも3年生に進級したし
あれから半年以上が経っているから
もうとっくに僕の存在など忘れていると思っていた
これだけ視線を感じるということは
未だに注目されてしまっているのか・・・?
そう言えば 今朝
ユノが出かける時に
『チャンミンが来るって言ったら皆いいなあって言ってたよ』
なんて よくわからないことを言ってたっけ・・・
気にしても仕方ない
僕は 周りの反応に気づかないふりをして
ユノの撮影に没頭した
ユノは 何度も応援や演目に登場した
ユノのクラスは5組中2位につけており
ユノ意外の生徒の出番でも
クラスカラーの赤い鉢巻きを見るたびに
「頑張れー」 と声に出して応援した
昼休みの休憩時間
僕は 父兄の観覧エリアの一番端に座り
持って来た弁当を食べた
ユノに沢山作ったおかずやおにぎりの残りを
簡単に詰めたものだ
「天気もいいし最高だな」
ユノの雄姿を見ることができて
おにぎりもより美味しく感じた
本当は 缶ビールでも飲みたかった
でも 周りは女性が殆どで
祖父母と思われる人や父親と思われる人が
本当に少なかったので
妙に目立つのも避けたくてアルコールは諦めた
午後の競技開始まで まだ20分くらいはある
トイレも済ませて その辺を少し散歩でもしてくるか・・・
大した荷物もない僕は
カメラの入っているバッグを持つと席を立ち
競技場の回りを散策しようと歩き出した
広い公園の中にある競技場は広く本格的で
陸上の公式競技大会も行われるところだけあって
普段は目にすることもないような
砲丸投げの時に選手の左右に立てる防護ネットのようなものまであった
よくよく見渡すと
観客席も多く 設備も整っていた
きっとオリンピック予選なども行われるのだろう
僕の時代は 学校のグラウンドだったから
こんな立派な競技場で
体育祭ができるユノたちは恵まれているな
公園内には綺麗な花壇もたくさんあり
隅々まで手入れされているようで
所狭しと花が咲いていた
ここのところ
ゆっくりと花を愛でる機会もなかった僕は
しゃがみ込んでカメラを構えた
なんて 素晴らしい被写体
たまには植物を撮るのも気持ちがいいもんだなと思い
花壇の花の前でシャッターを切っていた
『チャンミン!』
「あれ?ユノ どうしたの?」
『どうしたの?じゃねえよ
探したじゃん
みんながチャンミンに会いたいんだってさ』
カメラを持って立ち上がると
ユノの後ろには
ぞろぞろと10人ほどのクラスメイトが立っていた
「えっ? 僕に?」
『そうだよ チャンミンは有名人なんだから
保護者の席に行ったのにチャンミンいないから探したんだぜ』
「そうだったの? ごめんごめん
まだ時間あるから散歩しようと思って」
ユノと会話をしていると
何やら女子数人が口を押えてヒソヒソと話している
『はい この人がチャンミン
俺の親戚のお兄ちゃん』
”わぁ~ イケメン”
”マジ? えーカッコいい~”
”ユノもカッコいいけど2人並ぶとスゲーイケメンズ”
何が何やら わからないけれど
どうやら ユノの親戚のお兄ちゃんを
わざわざ見に来たってことらしい
ユノのクラスメイトやサッカー部の友達が
代わる代わる僕に挨拶をする
僕も いつもユノがお世話になっている友達たちにお礼を言い
体育祭頑張ってと伝えたら
3、4人の女子たちは
”キャー話しちゃった”
”彼女いるんですか? キャー聞いちゃった”
”ちょっと失礼だよーすみません”
キャッキャと飛び跳ねて盛り上がっていた
これが いわゆるJKという生き物か・・・
可愛いというか賑やかと言うか・・・
僕の高校時代に比べると
皆 スラリとスタイルも良く
少しメイクしているような綺麗な娘が多かった
『ハイハイ もう終わり
わかった?嘘じゃないだろ?』
”うん 噂通り!”
ユノは どうやら僕に会わせろと言われていたようだ
『じゃあ チャンミン 俺たち
もう戻るね
午後もちゃんと見ててよ
リレーと騎馬戦もあるから』
「うん 楽しみにしてるよ」
ユノは 何度も振り返り
僕に向かって大きく手を振って
競技場に戻って行った
ユノは ああいう仲間たちに囲まれて
日々の学校生活を送っているんだ
全く世代の違う若者たちを
微笑ましく思う反面
羨ましくも感じた
キラキラと輝く
未来ある若者たち
「若いっていいなぁ・・・」
僕は ゆっくりと歩きながら
ひとりごとのように呟いた
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