絶景湯 23℃
その日のユノさんの来訪は
遅い時間だったせいもあり
風呂場から上がる頃には
脱衣所には殆ど人がいなかった
ユノさんが ゆっくりとセクシーに
身体を拭いている間に
他のお客さんは帰って行き
脱衣所にはユノさん一人となった
女湯はもう30分ほど前から
誰もいなかったから
この銭湯内には
人間は僕とユノさんの2人だけとなった
『チャンミン これ飲む?』
ユノさんは 脱衣所に誰もいないことを確認すると
僕に飲み物を勧めた
いちご牛乳・・・
飲めなくはないけれど
どちらかと言うと
コーヒー牛乳の方が好きだ
『ずっとそこにいると
喉 乾くだろ?
もう誰もいないし俺の奢り』
「ありがとうございます
我儘言っていいですか?」
『あ わかった
もしかして これ 苦手?』
「バレました?へへ
苦手っていうか コーヒー牛乳の方が好きです」
『OK じゃあ チャンミンはコーヒー牛乳ね』
「自分で払いますよ」
『今日は奢らせて?
そういう気分なの』
「じゃあ ゴチになります」
営業時間の終了間近の時間帯は
あの大雨の日と同じで
ユノさんと僕の2人きり
腰にバスタオルを巻いただけのユノさんに
一緒に飲もうと呼ばれ
僕は番台から降りた
とその時
バサッ!
僕が番台から降りると同時に何かが落ちた
『あ 何か落ちたよ』
慌てて拾おうとした僕よりも
ユノさんが拾い上げるほうが
間一髪 早かった
ユノさんが拾ったもの
それは
僕が毎日のように書き殴っている
例の日記だった
しかも
さっきまで書いていたページに
強くクセがついていたようで
開いたままの状態で落ちた
「あ ユノさん
すみません」
僕は焦って
そのノートを取ろうとした
でもユノさんは
真剣な顔になり
そのノートを僕から遠ざけたのだ
「ユノさんっ」
手を伸ばして取ろうとしても
ユノさんは開いたノートを凝視したまま
僕から離れた
「お願いです ユノさん」
どうしよう・・・
僕の日記みたいなものを
読まれている
変態だと思われる
気持ち悪いと思われたら僕は
ユノさんに嫌われたら僕は・・・
ユノさんを追いかけた
「お願いです
読まないで返して お願いっ」
僕は泣きそうになりながら
懇願した
それでもユノさんに真顔で制止され
僕は その場に立ち尽くした
もう顔が上げられない
お願いです
ユノさん そのノートを返して・・・
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