黒い瞳が邪魔をする 第四幕 27話
Y side
チャンミンと知り合いだということは
自分の口からは言わなかった
言えなかったと言う方が正しいかもしれない
言ったところで どう説明すればいいのか?
高校時代の後輩でね とか言ったって
普通に連絡を取れるような間柄ではなくなった今
チャンミンの名前は出さない方がいいような気がしたんだ
チャンミンが俺と別れた後
普通に女のコとつき合っていたことを知り安心する反面
これでもう俺とは全く違う道を歩いて行ってしまったんだと
寂しい気持ちになった自分を
本当に身勝手だと思う
連れて行ってもらったピザの店でランチした後
チャンミンの元カノ達と別れて
俺は ドンへの待つホテルまで ゆっくりと歩いた
チャンミンのことを思い浮かべながら・・・
勝手に好きになり
両想いとわかり有頂天になった
幸せな日々は確かに存在したのに
俺から別れを告げることになってしまった
忘れなくてはいけないのに
いつまでも 胸の何処かにチャンミンがいる
連絡先も消してしまったのだから
連絡なんて取りようもないのに・・・
きっと これからの人生も
チャンミンの親友キュヒョンと繋がっている俺の親友ドンへから
たまにチャンミンの噂を聞くくらいになるのだろう
今頃 ソウルで実家の美味しい料理でも食べて
栄養をつけている頃なのかもしれない
食べることが大好きだったアイツの
嬉しそうな顔を思い出しては苦笑いをする
『ただいま ドンへ
どうだ? 具合は』
ホテルの部屋に入ると
ドンへが目を開けていた
”お帰り だいぶ良くなったよ・・・
なんだよ?ユノ
お前らしくない辛気臭いツラしやがって”
『俺が?』
”そうだよ お前だよ
チャンミンを探せなかったからってそんな顔するなよな
明日は元気になったこのドンへ様が
一緒に大学周辺をウロウロしてやるからな”
『気持ちだけで十分だよ』
”どうした? 何か変だぞ”
『探してもいないから』
”ん? 探さなかったのか?”
『ん まあ・・・』
少し具合の良くなったドンへが
不可解な表情を見せた
朝からずっとホテルの部屋の中にいたドンへが
外の空気を吸いたいと言うので
夕方になってから軽い食事をしに外へ出た
今日の昼間の出来事をそのまま話すと
ドンへは とても驚いた
”マジか? すげー”
『何が?』
”いや 正直に言うとさ この広いアメリカの大学で
チャンミンを見つけるなんて不可能だと思ってたんだ”
『じゃあ 何で誘ったんだよ』
”お前が あまりにも笑わないからさ・・・”
『・・・』
高校生のときのように
毎日顔を合わせるわけでもないのに
いつも俺を気遣ってくれるドンへの優しさに
俺は幸せ者だと思う
”やっぱりさ お前たち 繋がってるな”
『どこが』
”偶然にも程があるだろ?
韓国人に会うだけでも凄い偶然なのに
あろうことか チャンミンの元カノだなんてさ
なんかこう 運命の赤い糸って言うの?
感じるなぁ~”
『茶化すなよ』
結局 無理矢理連絡先を交換させられた
ハヌルの連れに連絡を取り
また翌日会うことになった
ドンへが
どうしても会いたいと言ってきかなかったからだ
俺は全くもって気乗りしないんだけど・・・
ちゃっかり者のドンへは
持ち前の明るさで彼女と意気投合し
ソウルで会う約束まで取りつけてしまった
『知らないぞ 俺は会わないからな』
”お前が来ない方が何かと都合がいい
お前 モテすぎるから迷惑だしな
ユノがいなければ別な奴を呼んで合コンも可能
チャンミンも呼べるし”
『やめろ』
”なんで?”
『チャンミンは呼ぶな』
”関係ないんじゃなかったの?
別れたんだろ?”
『・・・』
”そんなに未練があるなら意地張ってないで
連絡取ればいい
よりを戻そうって言やあいいのに”
『チャンミンはチャンミンの人生を歩くんだよ』
”わけわかんねぇ
いつまでも そんなシケた面見せるんじゃねぇよ"
それ以来 チャンミンの話はせず
残された2日間は観光客向けの1泊ツアーに参加し
ハリウッドやラスベガスを見物して韓国に戻った
家族には大した土産も買わず
母さんには悪いことをした
”せめて 口紅とか小さなものでも買ってきてくれればよかったのに
ビーフジャーキーだけだなんて 何考えてるのかしらね?
こんなに気が利かないんじゃ彼女なんてできないわよ”
『余計なお世話だよ』
”あ そういえばね
ユンホがアメリカに行った翌日だったかしら?
チャンミン君に会ったのよ
ほら あなたと仲が良かった あの可愛い”
『え? チャンミン?』
静かだった俺の心臓が 突然 激しく波打った
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