黒い瞳が邪魔をする 第四幕 26話
C side
目が覚めたら 朝だった
風呂にも入らず 歯も磨かず
服のままベッドで寝てしまったみたいだ
「母さん どうして起こしてくれないんだよ
貴重な一時帰国だっていうのにさ・・・
午前中が無駄になっちゃうじゃないか」
”何言ってるのよ
散々起こしてあげたっていうのに ちっとも起きなかったじゃない”
「起こしてない」
”起こしたわよ”
記憶にない・・・
”あんなにべろんべろんに酔って帰って来るなんて
まだ お酒が飲めるようになったばかりだというのに
無茶な飲み方はしないでね
アメリカでも あんな飲み方をするのかと思ったら心配になるわ”
「風呂くらい入りたかった・・・」
”無茶言わないの
記憶もないくせに
入ったとしてもお風呂場ですっころんで
頭を打つのがオチよ
具合は悪くない?”
「ん・・・大丈夫」
”で? 今日はどうするの?
予定は特にないんでしょ?”
「うん 今日は特にないよ」
”そう じゃ 後で買い物でも行く?
服とか 少し持って行った方がいいんじゃないの?
あと他には何かいるものとかない?”
有難いけど 立て続けの質問攻めとお小言に
うるさいなぁと思う
けど こんな風に心配してくれる親を
ありがたいとも思えるようになったのだから
僕も大人になったのかな
一時帰国の間には 父の建築事務所へも行き
父が今手掛けている物件なども見せてもらう予定だ
あと 祖父母のお墓参りにも行かないと・・・
食べたかったものを沢山食べ
アメリカでは手に入らないハングルの本なども買いたい
ブラウン夫妻へのお土産も忘れてはいけないなど
意外と忙しいんだって 今気づいた
僕は 物心ついてからの殆どを過ごした自分の部屋で
懐かしい椅子に座って
高校の時に読んでいた漫画を手に取ったり
高校の卒業アルバムを開いたりした
ユノヒョンは載ってないのに・・・
別に何年も不在にしていたわけでもないけど
もう懐かしさを超えて
この部屋ごと飛行機に乗りたい気分だった
その晩は割と早めに帰宅した父と
初めてサシで飲んだ
飲んだと言うほどではないけれど
父が僕とお酒を飲めるようになる日を
心待ちにしていたと言うから
僕も大人になった気がして
一緒にマッコリを飲んだのだ
”これくらいなら大丈夫だろう?
お酒と言うヤツはやっかいでな
なんともないと思っても 急に身体がふらついたり
記憶が飛んだりするから 気をつけろ”
「はい まだ あまりおいしいとは思えないから
必要な時以外は飲まないようにするね」
”つき合いなんかで口にすることもあるんだろうけど
ほどほどにな”
父は目じりの皺を一層深くさせて
嬉しそうにマッコリを飲んだ
そして 僕に建築関係の本を1冊くれた
ここに載っている建物は見ておいた方がいいと
その世界では相当有名な建築家のものや
珍しい建築法の建物が沢山掲載されているらしかった
パラパラとめくると
一般住宅からオフィス ホテル 教会 コンサートホールなど
バラエティに富んだ建物が綺麗に撮られていて
じっくりと眺めたくなる素敵な本というよりも写真集のようだった
飛行機の中でゆっくり見よう
いつか 自分の創る建物が雑誌に載ったら
ユノヒョンも目にしてくれるだろうか・・・
僕は いつか
ユノヒョンが働くオフィスを手掛けたい
ユノヒョンが働きやすい素敵なオフィスを届けたい
その夢は 未だ捨てられないんだ
本当は
ユノヒョンと僕が2人で住むための
オフィス兼住宅を創りたかった
でも その夢は
もう叶いそうにないから
職場になる事務所だけ作ってあげたいなと思っている
他の誰かと住む家は
悪いけど 違う建築家に頼んでよ
僕のそんな夢
いいよね 大切に持っていても・・・
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