黒い瞳が邪魔をする 第四幕 25話
Y side
『韓国の人に会うなんて思ってなかったです』
”私たちもよ なんか嬉しい”
ここの学生かと聞かれたので
旅行中だと答えた
『”一緒に来た友人が具合が悪くなっちゃってホテルで寝てるんだ
この大学に知り合いがいるとかで会う予定だったんだけど
延期になって・・・
だから 1人でブラブラと散歩気分で見物にきたってわけ』
”そうなのね
良かったら案内しますよ”
韓国人に比較的多いタイプの顔立ちをした目の細い女が言った
チャンミンと別れたと言ったのは
どう見ても もう一人の方だろう・・・
いくら同じ国の出身だと知っても
外国で突然話しかけられた相手に
ホイホイ着いていくようなことは普段なら決してない
でも今は
チャンミンに繋がる手がかりなら
何でも欲しいと思ってしまう自分がいた
『でも お忙しいでしょう?』
本当の気持ちを隠して一度は断った
”いえ 私は今日はもう講義も終わったし
これから 何か食べようかなって思っていたんです
韓国の人に会えるなんて嬉しくて・・・
私の回りには あまりいないんです
英語ばかりで たまには母国語を話したいし”
目の細い女がまくし立てる
食い気味に誘ってくるということは
俺は好印象なんだろうな
”もし お嫌じゃなければピザ食べませんか?“
“ちょっと サラ 失礼よ いきなり”
”ハヌルはモテるから わからないのよ
こんな素敵な人 滅多に会えないもの
ランチくらい誘ったってバチは当たらないでしょ?
“あ 友人はサラ 私はハヌルです”
”サラといいます”
『はじめまして ユンホです』
”ユンホさん 名前までカッコいい”
“ちょっと サラ“
『ありがとうございます』
“無理にとは言いません
ユンホさんが 良ければですけど
ランチ どうですか?”
『いいですよ ご迷惑じゃなければ
ピザのお店 ご一緒してもらえますか?
一人で どうしようかと思ってたんです
丁度 腹減ってきたところだし』
“すみません
では ご一緒させていただきます“
遠慮がちに言うのはハヌルだ
サラとハヌルは2人で示し合わせたように
何か話してうなずき合い
店を決めたようだ
“この先に サラが教えてくれた
美味しいピザのお店があるんです
そこでいいですか?“
『本当に右も左もわからないので
連れて行ってください』
”じゃあ 行きましょう”
チャンミンのことが知りたい一心で
俺は会ったばかりの女のコ2人と
ピザを食べに行くことにした
こんな偶然 なかなかないよな・・・
やたら広い大学を出て少し歩くと
ガラス張りで中の良く見えるピザの店があった
日差しが差し込む店内は結構にぎわっている
『アメリカ映画で見る光景だな』
”確かに アメリカっぽいですよね
あ ここはアメリカですよね あはは”
明るく笑う ハヌルさん
ピザと やたら大きなグラスのコーラを目の前に置き
俺たちは ゆっくりと食べだした
『誘ってくれて ありがたかったけれど
ハヌルさんもサラさんも 彼氏との約束とか なかったの?』
それとなく恋愛話に持って行く
”私は彼氏なんて いないですよ~
アメリカで カッコいい金髪の彼を作ろうと狙っているんですけどね”
”もう サラったら・・・”
”あ ハヌルはね
ボブっていう優しい彼がいるんです”
”サラ”
”いいじゃない 本当のことなんだし
私はフリーですから”
明るく笑うサラさん
”ユンホさんは? 彼女はいます?”
『あ・・・えっと 今はいないんですよ』
”へー マジですか?
でも その言い方だと別れたばかりとか?”
ぐいぐい来るサラさんだけど
明るいから嫌ではない
楽しく話せそうな感じのいいコだ
『まぁ そんなところかな
数か月前に別れたんだ』
”まだ 未練ありそうですね
フラれちゃったんですか?”
『まぁね』
サラさんの話に合わせて
それとなく調子を合わせて嘘をついた
”本当に サラってば
初対面なのにちょっと聞き過ぎじゃない?”
”ハヌルに言われたくないな~
このコね 同じ韓国人の彼ができたのに
3ヶ月足らずで ついこの間 別れたんです
なのに もうボブっていう新しい恋人を作ったの
モテる女はいいですよね”
『へぇ ハヌルさん モテるんだね
サラさんも絶対に彼がいると思ったんだけどな~』
”もう ユンホさんて優しいんですね
好きになりそうだから それ以上言わないで”
ほんのりと赤くなってる・・・
”連絡先 交換しませんか?
私 ユンホさんと韓国でまた会いたいです”
『え・・・』
”サラ 本当に失礼よ
ユンホさん 困ってるじゃない”
”別れた彼女が忘れられないっていうところでしょうか・・・
だとしたら ハヌルと同じね”
”サラ・・・”
”チャンミンのこと 忘れられないんでしょ?”
『・・・』
”だから忘れようとしてるんじゃない
それに ボブのことが好きよ”
チャンミンという名前を聞いただけで
胸の鼓動が早くなり脇に汗をかいた
『韓国人は多いの?』
”それが少ないんですよ
たまたま 去年同じ学科に留学してきたのがチャンミンていう
ハヌルの別れた彼氏で・・・
ユンホさんもハヌルも 別れた恋人にまだ未練ありって感じ”
”チャンミンだって そうだったわよ・・・
前の恋人が忘れられないんだろうなって凄くよくわかったもの”
『・・・』
”あ ごめんなさい
こんな話ばかり 止めましょうよ ね?サラ”
間違いない
チャンミンは ハヌルとつきあって別れたんだ・・・
”はいはい ごめん もうしない
ハヌルも ちゃんと吹っ切って
チャンミンが一時帰国から戻ったらまた同じクラスなんだから”
一時帰国・・・?
もしかして あの時
仁川空港のエスカレーターですれ違ったのは
チャンミン
お前 本人だったのか・・・?
激しく波打つ心臓に
チャンミンへの想いが
これっぽっちも薄れていないことを
嫌と言う程 思い知らされたのだった
ドンへ・・・
助けてくれよ・・・
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