黒い瞳が邪魔をする 第四幕 23話
Y side
時差ボケに惑わされることもなく
翌朝は すっきりと目が覚めた
時差ボケは遅れてやって来るって
そういえば誰かが言ってたな
今日はチャンミンの大学に行ってみようと決めていた
アメリカの大学は広い
そんな中でチャンミンを見かけることすらできないかもしれないけれど
普段 チャンミンがいるであろう場所に行ってみたかった
『ドンへ 9時には出られるようにしろよ』
8時に起きて のんびりと髭を剃る
朝食は昨日買っておいた簡単なパンとジュース
俺が髭を剃り終えても
ドンへは起きてこなかった
ツインルームのもう一つのベッドで
ぐっすり眠っているドンへを無理矢理起こす
『ドンへ 起きろよ
お前が誘ったんだからな
ほらっ 早くしろよ』
”・・・ダメ”
『はっ? どうした?』
ブランケットを勢いよく剥いだ俺の目に飛び込んできたのは
うずくまるドンへの姿
『どうしたんだよ?』
”痛い・・・腹・・・痛い”
マジか?!
きっと 昨日調子に乗って食べた
付け合わせのフライドポテトだ
あれが胃にもたれてるんじゃないだろうか?
『お前 食い過ぎなんだよ・・・』
”ん・・・わかってる ユノ 悪い
今日 俺 動けそうもない”
『あ? マジかよ・・・』
"埋め合わせ するから"
この期に及んで俺のことを気にするなんて
ドンへらしい
『そんなこと いいよ 気にするな
わかったから 薬飲んだ方がいいな』
外国は勝手が違うし
言葉も満足にはわからないからと
母親から薬をたくさん持たされたのはドンへ
”ユノ そこのカバン取って・・・
中に薬が入ってるから出して・・・”
外国では言葉が通じないと
薬を買うのは怖い
法外な診療費を払うことになるから
医者には とても行く気になれないと俺の親も言っていた
素直にドンへの鞄から薬を出してやり
買っておいたミネラルウォーターと一緒に渡した
『これ飲んで寝てろよ・・・』
”ああ 悪い ごめん ほんと・・・”
『まさか2日目から薬の世話になるとは思わなかっったけどな』
本当に辛そうなドンへの様子が心配だったけれど
何かあれば すぐに電話をするよう言い残し
俺はホテルの部屋を後にした
せっかくアメリカくんだりまで来たんだ
俺1人でも今日は行動を
起こさなければ・・・
ドンへから受け取ったメモを頼りに
チャンミンの通う大学を目指す
自分の通う大学とは比べ物にならないくらいの広大な敷地
大学名を聞いて
ある程度はネットで調べてきたが
ここまで広いとは・・・
こんなところでチャンミンに偶然逢えるなんて保証は全くない
さて 困った・・・
俺は チャンミンの留学している学部の建物を探し
周辺を歩いた
チャンミンの行きそうな場所
好きそうな場所を探して・・・
図書館や大きな木が目印の小高い丘
そして売店のような店
これ 至難の業だな・・・
手ぶらで歩いているのが珍しかったのか
それとも いかにも
ここの学生ではない雰囲気が伝わったのか
すれ違う学生たちにチラリと視線を送られる
一日中歩いても これではチャンミンの姿はおろか
何の手がかりも掴めそうにない
少し休んで ドンへに電話をしようと思い
大きな木の太い幹に凭れた
スマホを手にしたとき
聞こえてきた言葉
”ビジュアルは チャンミンには到底 敵わないけどね”
ハングルだった・・・
”未練あるの?”
”そりゃあ チャンミンは素敵だったもの・・・”
その声は幹の反対側から聞こえてきた
きっと座って話し込んでいたのだろう
”じゃあ なんで 別れたのよ”
”彼には想い人がいるのよ・・・
私が いくら頑張っても敵わない人
どんな人か知らないけど・・・”
”ふーん じゃあ何でハヌルとつきあったのよ”
”いいの わかるから・・・
きっとね 彼は忘れたかったのよ その人のこと”
"気になるわね
こんなに美人で気立てのいいハヌルを振るなんて
チャンミンの忘れられない人ってどんな人なのかしらね?"
"彼は聞いても何も言わなかったわ
いつも遠い目をしてた
ただの恋人ではない感じで
あまり聞いてはいけないような気がしたの"
”ふーん 何だかドラマみたいね
でもさ ハヌルもチャンミンを忘れるためなのかどうか知らないけどさ
新しい彼氏をさっさと捕まえちゃったんだもんね
ああ 羨ましい~”
”チャンミンと結婚したかったな・・・
身体の相性も悪くなかったのに
ここで同じソウル出身の恋人ができて有頂天だったのにね”
”人生 上手くいかないこともあるわよね”
”チャンミンのことはずっと好き
でも 今はボブの優しさに救われてる"
”さ 行きましょ
チャンミンが忘れられないハヌルさん”
ハングルを話す2人連れが俺の横を通りすぎる時
その女性を ちらりと見た
同じように俺を見た女と目が合った
”こんにちは
見かけたことないけど韓国の方?
ここの学生?”
彼女から声をかけてきた
話をしたら やはり
チャンミンの元カノだった
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