黒い瞳が邪魔をする 第四幕 22話
C side
キュヒョンとの約束は 午後6時
数か月ぶりに実家で昼ごはんを食べた後
一人で ソウルの街をブラブラするために早めに家を出たのが運のツキだった
まだ 時間は たっぷり過ぎるほどある
そんな気持ちが僕を油断させたのかもしれない
若者が沢山集まる街へ出る前に
ユノヒョンの家の近くに行ってみようかな
思ったと同時に僕の足は動いていた
そのせいで
ユノヒョンのお母さんに見つけられ
ユノヒョンの今を知ることになってしまったのだった
ユノヒョンの家の場所は
はっきりと覚えていた
忘れることなど できない
時が経ち 年を取り
周りの建物が変わっても
ユノヒョンの家に辿り着く自信があった
僕たちが初めて結ばれた場所なんだから・・・
2人で話をした公園
あの頃とちっとも変わってなくて
あ・・・
ふわりと吹いた風が運んできたのは桜の花びら
あのときも 桜の季節だったっけ
思えば 初めてユノヒョンと一つになった季節と
今は全く同じ
桜吹雪が少し肌寒い風に乗って僕のところに遊びにくる
止めてよ 思い出すから・・・
女々しい気持ちを抱いたまま
僕の足は自然と目的の場所に向かい
あっという間にユノヒョンの家のすぐ近くに来ていたのだ
ユノヒョン・・・
いるのかな・・・
突然 身体中が発火したように熱くなり
容赦なく額に汗が噴き出て来た
もしかしたら そこに
20メートルも離れていない場所に
ユノヒョンがいるのかもしれない
心臓が激しく跳ねるように動いて
僕は動けなくなった
ユノヒョンが家にいるなんて保障は
これっぽっちもないのに・・・
通り過ぎるだけ
そう 僕は1人で歩いているだけ・・・
ユノヒョンの家のすぐ近くに差し掛かった時
ガチャンと音を立てて玄関扉が開いた
「・・・!」
思わず見てしまった僕の目に映ったのは
ユノヒョンのお母さんだった
そして
ユノヒョンが昨日からアメリカに行っていることを
知ってしまったのだった・・・
ユノヒョンの現在を知ってしまった僕は
複雑な思いを抱え
その場を後にした
僕たちは別れたんだ
ユノヒョンの行動なんて知らなくて当たり前
なのに アメリカに行っていると聞いて
わけもなく悲しくなってしまった自分がいた
キュヒョンに会う前に
少しでも 落ち着いておきたくて
街へ向かった
久しぶりのソウルの繁華街
たった数か月しか経っていないのに
随分変わったみたいだ
もともと おしゃれな場所に繰り出して
遊んでいたわけではなかったけれど
それでも 新しいカフェや飲食店が
物凄く増えているように感じる
ユノヒョンは こういうところで
恋人とデートをしているのかな?
キュヒョンも してたりして・・・
自分には一生縁がないような気もする
僕も いつかは女性と結婚したりするんだろうか?
想像できないな・・・
ブラブラと洋服を見たり
大きな本屋を覗いたりして
アメリカでは買うことのできない本を数冊
見繕って買った
カフェでコーヒーでも飲もうかと思ったけれど
カップルばかりが目について
店内に入るのを躊躇ってしまう
ユノヒョン・・・
僕がいるはずのアメリカに行ったの?
もしかして
僕に逢いに?
都合のいいことを考えてしまう自分が滑稽に思えて
頭をぶるぶる振った
こんな時はキュヒョンと楽しく飲んだ方がいい
ユノヒョンのことを考えなくて済むように
少し早いけど 僕は
キュヒョンに指定されたお店に向かった
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