黒い瞳が邪魔をする 第四幕 19話
Y side
楽しいスノボ旅行を終えて
いよいよ 俺は就職を間近に控えることとなった
新しい出会いはあったものの
ヨニともユンアとも
それ以上の特別な進展はなく
俺は最後のアルバイトをしたり
趣味の発明をしたりしていた
そんなある日 ドンへから電話があった
どうしても
アメリカへ一緒に行ける人がいないというので
付き合ってくれないかというものだった
俺は気乗りはしなかったけれど
チャンミンのことを完全に吹っ切るために
アメリカでチャンミンが頑張る姿を一目
遠くから見て
自分の気持ちと向き合おうと思った
『仕方ねえな 行ってやるよ』
”おー マジか?
それでこそチョン・ユンホだよー”
ドンへのように能天気に浮かれた気持ちにはなれないけれど
決めた瞬間にドキドキした
”就職を控えているんだから
あまりハメをはずさないようにしなさいよ”
『わかってるよ』
実家を出たのは少し肌寒い春の朝
桜のつぼみも
咲きたくてもまだ咲けないような朝だった
出発は午後だけど
国際線は何時間も早めに行かなくてはならないから面倒くさい
それでも 初めての海外行きに
ドンへと2人 気持ちのいい緊張感に包まれていた
”仁川空港ってデカいな”
『ああ 思ったよりもでかいな スゲーな
インターナショナルって感じ』
俺たちはキョロキョロと回りを見渡しながら
出発を楽しんでいた
時間に余裕があったので
上の階にあるショッピングアーケードを見て回ることにした
長いエスカレーター
半分くらい上ったとき
隣りを動く下りエスカレーターに乗っていた男が気になり
何の気なしに振り返ってみた
チャンミナ・・・?
隣りをすれ違ったときに
懐かしい空気が漂ったような気がして
思わず一人 振り返ったのだ
どんどん下っていく頭が
後ろの大柄の男の影になり よく見えない
錯覚かな・・・
チャンミナがいるわけ ないか・・・
チャンミナによく似た頭のカタチ
いや アイツは今 アメリカにいるはずだ
きっと アイツのことばかり考えていたから
幻が見えたんだ
下を向いて ふっと苦笑いをした
ドンへは相変らずキョロキョロしているから
俺の様子には全く気付いてないようで
内心 ホッとした
向こうでチャンミンに逢えるという保障もないけれど
ドンへがキュヒョンから以前聞き出した大学と学部
住んでいる地域を頼りに
俺は一か八かの行動に出てみようと決めていた
後から考えれば
こんな無謀な計画
成功するはずなんて なかったのに・・・
エスカレーターに乗っていたのが
本物のチャンミンだとも知らず
ロサンゼルス行きの大韓航空機に乗り込んだ
ポチっと応援お願いします♪
↓
にほんブログ村