癒しの T-Garden 赤い海の旅人

紫色の誘惑 94

紫色の誘惑 91〜100





2人で海に行って以来
こうして じっくりと話す機会はなかった


まあ俺が避けてたってことになるんだけど
こんな非日常のシチュエーションで
大好きな人と一緒にお酒を飲んでいるのに
せっかくの夜景もあまり印象に残らないくらい
俺は落ちつかなかった





『俺 好きな人がいるって前に話したと思うけど
ダメもとで告白することにしたよ』


「そう ですか・・・」


『それで チャンミンにお願いがあるんだ
俺が 好きな人にしっかりと思いを伝えられるように
俺の背中を押してほしいんだ』





俺が ユノさんの背中を?


キューピットになれと?





ユノさんは もしかしたら俺のことを
少しは大切に思ってくれてるんじゃないかって


”チャンミンのこと好きだよ” って言ってくれたから
少なくとも ”特別な友達” だと


皆にひやかされて ”そうなのかも” なんて
少しだけ期待してた





大阪まで会いに来てくれて
実はさっきまで期待してたんだ


心のどこかでユノさんと繋がっているような
そんな気がしていたのに・・・


そう感じていたのは 自分だけだったのか・・・





また 強く胸が痛む


ズキンと 痛む


なんか 俺 泣きそうだ





ユノさんは心に決めた人がいて
想いを打ち明けたくて
その相談を急いでいたのに


淡い期待に胸を踊らせて
のこのこと ここまで着いて来るなんて


とんだ ピエロだ・・・





さっきまでの胸の高鳴りは完全に影を潜め
身体中が冷えて行くのを感じる


また 笑えなくなってしまう


笑顔がいいと言ってくれたユノさんに
笑顔が見せられなくなってしまう





『俺の気持ちが受け入れてもらえなければ
その人とはもう会えなくなるかもしれない・・・
それでも この想いを伝えずにいるよりは
気持ちを伝えて すっきりさせたいとおもったんだ』


随分悩んだ末 
その人に告白することを決めたという





俺に それを言うの?





『今すぐにでも想いを伝えたくて
勢いに任せて 大阪まで来たんだ』


「その人は大阪にいるんですか?」


『ああ 今大阪にいる』





そっか・・・
だから 来たんだ


俺に会いに来たわけじゃなくて
意中の人に会うために
わざわざ大阪まで来たんだ


それで?


たまたま大阪にいる俺に決意表明?


俺 バカみたいだな・・・


一人で期待して 舞い上がって・・・


”がんばって” と
”ユノさんなら大丈夫” と
そう言ってあげたほうがいいんだよね?





言葉が出ないよ・・・


何か言わなくちゃって思うのに


なんか クラクラする


眩暈かな・・・
胸が音を立てて
めりめりと凹んでいくような
乱暴に潰されるような そんな痛みが俺を襲う





『チャンミン・・・?』


「あ すみません」


『大丈夫?』


「大丈夫です」


『もし良かったら・・・
背中 押してくれるかな』
”男ならはっきりしろ” って言ってくれる?』


「そうですね
決めたなら早い方がいいと思います
決心が鈍らないうちに はっきりと伝えたほうがいいと思います」


ユノさんの顔が見れない


カクテルグラスの表面に水滴が目立つようになった


『今も ドキドキしてるんだ
本当にいいのか
これで一生会えなくなっても後悔しないだろうか?って』


「どうして一生会えなくなるんですか?」


やっぱり人妻なのだろうか・・・


ユノさんをこんなに悩ませる相手って
いったいどんな人なのだろう?


「その人が どういう人なのか
俺は知りませんけれど
ユノさんがそこまで決めたのなら 
思い切って 言ってみたらいいんじゃないですか?」


うまく言えただろうか?


怪しまれなかっただろうか?


心の動揺を悟られないように
ユノさんを見ないで話すのが精いっぱいだった


目の前のグラスを一気にあおる


何杯でも飲める気がした


味なんて全く感じないから・・・





『もしかしたら その人をとても傷つけてしまうかもしれない
本当に後悔しないかどうか
確かめるためにチャンミンに会いたかったんだ』


「ウジウジ悩んでるなんて男らしくないですよ
というか ユノさんらしくないです
この先 その人と会えなくなっても それでも気持ちを伝えたいんですよね?」


『ああ』


男らしくないなんて
そっくりそのまま自分に向けた言葉みたいだ


下を向いていても
真剣な眼差しを向けられているのがわかる・・・


「なら 頑張ってください」


顔を上げて きりっと言ったつもり


『ありがとう』


ユノさんは 俺の目を見て にっこりと笑った





もう ここから立ち去りたい


好きな人に 自分じゃない誰かへの愛を語られて
打ちのめされても
泣くことも許されない


『賭けなんだ』


「賭け?」


『YES 俺 頑張るからチャンミンも
その好きな人に・・・』


「できません!」


『えっ?』


大きな声ではっきりと言った俺に
ユノさんは少し驚いた風だ


もう これ以上聞きたくない


”チャンミンも好きな人にちゃんと気持ちを伝えろ”
そう言うつもりなんでしょう?





そんなことしたら本当に 
もう2度とあなたに会えなくなるんですよ?


知らないくせに そんなこと言わないでほしい


「俺は できないんです」


『どうして?』


「その人が俺じゃない誰かを好きだってわかったからです」


だから 言えないって言ってるじゃないか


女々しいヤツだって思われたかもしれないけど
もう これ以上その話は聞いていられないと思った





キツイよ・・・


キツ過ぎます ユノさん


「もう 行ったほうがいいですよ」


俺が椅子から勢い良く立ち上がると
ユノさんが驚いたように俺の顔を見た


『チャンミン?』


「じゃあ 上手くいくことを祈ってます
俺はこれで失礼します お休みなさい」


そう言うとユノさんの目も見ずに
そのBARを飛び出した


お店を出るときに何か音がしたけれど
振り向きもせずに 
スタスタとエレベーターホールに 向かった


『チャンミン!』


俺の名前を呼ぶ ユノさんの声が遠く響いた





読んでくださりありがとうございます♪
応援よろしくお願いいたします♪



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村



スポンサーサイト



Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する