癒しの T-Garden 赤い海の旅人

黒い瞳が邪魔をする 第四幕 27話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





チャンミンと知り合いだということは
自分の口からは言わなかった


言えなかったと言う方が正しいかもしれない


言ったところで どう説明すればいいのか?


高校時代の後輩でね とか言ったって
普通に連絡を取れるような間柄ではなくなった今


チャンミンの名前は出さない方がいいような気がしたんだ





チャンミンが俺と別れた後
普通に女のコとつき合っていたことを知り安心する反面


これでもう俺とは全く違う道を歩いて行ってしまったんだと
寂しい気持ちになった自分を
本当に身勝手だと思う





連れて行ってもらったピザの店でランチした後
チャンミンの元カノ達と別れて
俺は ドンへの待つホテルまで ゆっくりと歩いた


チャンミンのことを思い浮かべながら・・・





勝手に好きになり
両想いとわかり有頂天になった


幸せな日々は確かに存在したのに
俺から別れを告げることになってしまった


忘れなくてはいけないのに
いつまでも 胸の何処かにチャンミンがいる


連絡先も消してしまったのだから
連絡なんて取りようもないのに・・・





きっと これからの人生も
チャンミンの親友キュヒョンと繋がっている俺の親友ドンへから
たまにチャンミンの噂を聞くくらいになるのだろう


今頃 ソウルで実家の美味しい料理でも食べて
栄養をつけている頃なのかもしれない


食べることが大好きだったアイツの
嬉しそうな顔を思い出しては苦笑いをする





『ただいま ドンへ
どうだ? 具合は』


ホテルの部屋に入ると
ドンへが目を開けていた


”お帰り だいぶ良くなったよ・・・
なんだよ?ユノ
お前らしくない辛気臭いツラしやがって”


『俺が?』


”そうだよ お前だよ
チャンミンを探せなかったからってそんな顔するなよな
明日は元気になったこのドンへ様が
一緒に大学周辺をウロウロしてやるからな”


『気持ちだけで十分だよ』


”どうした? 何か変だぞ”


『探してもいないから』


”ん? 探さなかったのか?”


『ん まあ・・・』


少し具合の良くなったドンへが
不可解な表情を見せた





朝からずっとホテルの部屋の中にいたドンへが
外の空気を吸いたいと言うので
夕方になってから軽い食事をしに外へ出た


今日の昼間の出来事をそのまま話すと
ドンへは とても驚いた


”マジか? すげー”


『何が?』


”いや 正直に言うとさ この広いアメリカの大学で
チャンミンを見つけるなんて不可能だと思ってたんだ”


『じゃあ 何で誘ったんだよ』


”お前が あまりにも笑わないからさ・・・”


『・・・』


高校生のときのように
毎日顔を合わせるわけでもないのに
いつも俺を気遣ってくれるドンへの優しさに
俺は幸せ者だと思う


”やっぱりさ お前たち 繋がってるな”


『どこが』


”偶然にも程があるだろ?
韓国人に会うだけでも凄い偶然なのに
あろうことか チャンミンの元カノだなんてさ
なんかこう 運命の赤い糸って言うの?
感じるなぁ~”


『茶化すなよ』





結局 無理矢理連絡先を交換させられた
ハヌルの連れに連絡を取り
また翌日会うことになった


ドンへが
どうしても会いたいと言ってきかなかったからだ


俺は全くもって気乗りしないんだけど・・・





ちゃっかり者のドンへは
持ち前の明るさで彼女と意気投合し
ソウルで会う約束まで取りつけてしまった


『知らないぞ 俺は会わないからな』


”お前が来ない方が何かと都合がいい
お前 モテすぎるから迷惑だしな
ユノがいなければ別な奴を呼んで合コンも可能
チャンミンも呼べるし”


『やめろ』


”なんで?”


『チャンミンは呼ぶな』


”関係ないんじゃなかったの?
別れたんだろ?”


『・・・』


”そんなに未練があるなら意地張ってないで
連絡取ればいい
よりを戻そうって言やあいいのに”


『チャンミンはチャンミンの人生を歩くんだよ』


”わけわかんねぇ
いつまでも そんなシケた面見せるんじゃねぇよ"





それ以来 チャンミンの話はせず
残された2日間は観光客向けの1泊ツアーに参加し


ハリウッドやラスベガスを見物して韓国に戻った


家族には大した土産も買わず
母さんには悪いことをした


”せめて 口紅とか小さなものでも買ってきてくれればよかったのに
ビーフジャーキーだけだなんて 何考えてるのかしらね?
こんなに気が利かないんじゃ彼女なんてできないわよ”


『余計なお世話だよ』


”あ そういえばね
ユンホがアメリカに行った翌日だったかしら?
チャンミン君に会ったのよ
ほら あなたと仲が良かった あの可愛い”


『え? チャンミン?』


静かだった俺の心臓が 突然 激しく波打った





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 26話

黒い瞳 四幕 1~





C side





目が覚めたら 朝だった


風呂にも入らず 歯も磨かず
服のままベッドで寝てしまったみたいだ





「母さん どうして起こしてくれないんだよ
貴重な一時帰国だっていうのにさ・・・
午前中が無駄になっちゃうじゃないか」


”何言ってるのよ
散々起こしてあげたっていうのに ちっとも起きなかったじゃない”


「起こしてない」


”起こしたわよ”


記憶にない・・・


”あんなにべろんべろんに酔って帰って来るなんて
まだ お酒が飲めるようになったばかりだというのに
無茶な飲み方はしないでね
アメリカでも あんな飲み方をするのかと思ったら心配になるわ”


「風呂くらい入りたかった・・・」


”無茶言わないの
記憶もないくせに
入ったとしてもお風呂場ですっころんで
頭を打つのがオチよ
具合は悪くない?”


「ん・・・大丈夫」


”で? 今日はどうするの?
予定は特にないんでしょ?”


「うん 今日は特にないよ」


”そう じゃ 後で買い物でも行く?
服とか 少し持って行った方がいいんじゃないの?
あと他には何かいるものとかない?”


有難いけど 立て続けの質問攻めとお小言に
うるさいなぁと思う


けど こんな風に心配してくれる親を
ありがたいとも思えるようになったのだから
僕も大人になったのかな





一時帰国の間には 父の建築事務所へも行き
父が今手掛けている物件なども見せてもらう予定だ


あと 祖父母のお墓参りにも行かないと・・・


食べたかったものを沢山食べ
アメリカでは手に入らないハングルの本なども買いたい


ブラウン夫妻へのお土産も忘れてはいけないなど
意外と忙しいんだって 今気づいた





僕は 物心ついてからの殆どを過ごした自分の部屋で
懐かしい椅子に座って
高校の時に読んでいた漫画を手に取ったり
高校の卒業アルバムを開いたりした


ユノヒョンは載ってないのに・・・


別に何年も不在にしていたわけでもないけど
もう懐かしさを超えて
この部屋ごと飛行機に乗りたい気分だった





その晩は割と早めに帰宅した父と 
初めてサシで飲んだ


飲んだと言うほどではないけれど
父が僕とお酒を飲めるようになる日を 
心待ちにしていたと言うから


僕も大人になった気がして
一緒にマッコリを飲んだのだ


”これくらいなら大丈夫だろう?
お酒と言うヤツはやっかいでな
なんともないと思っても 急に身体がふらついたり
記憶が飛んだりするから 気をつけろ”


「はい まだ あまりおいしいとは思えないから
必要な時以外は飲まないようにするね」


”つき合いなんかで口にすることもあるんだろうけど
ほどほどにな”


父は目じりの皺を一層深くさせて
嬉しそうにマッコリを飲んだ





そして 僕に建築関係の本を1冊くれた


ここに載っている建物は見ておいた方がいいと
その世界では相当有名な建築家のものや
珍しい建築法の建物が沢山掲載されているらしかった


パラパラとめくると
一般住宅からオフィス ホテル 教会 コンサートホールなど
バラエティに富んだ建物が綺麗に撮られていて
じっくりと眺めたくなる素敵な本というよりも写真集のようだった 


飛行機の中でゆっくり見よう
いつか 自分の創る建物が雑誌に載ったら
ユノヒョンも目にしてくれるだろうか・・・





僕は いつか
ユノヒョンが働くオフィスを手掛けたい


ユノヒョンが働きやすい素敵なオフィスを届けたい


その夢は 未だ捨てられないんだ





本当は
ユノヒョンと僕が2人で住むための
オフィス兼住宅を創りたかった


でも その夢は
もう叶いそうにないから
職場になる事務所だけ作ってあげたいなと思っている


他の誰かと住む家は
悪いけど 違う建築家に頼んでよ


僕のそんな夢


いいよね 大切に持っていても・・・





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 25話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





『韓国の人に会うなんて思ってなかったです』


”私たちもよ なんか嬉しい”





ここの学生かと聞かれたので
旅行中だと答えた


『”一緒に来た友人が具合が悪くなっちゃってホテルで寝てるんだ
この大学に知り合いがいるとかで会う予定だったんだけど
延期になって・・・
だから 1人でブラブラと散歩気分で見物にきたってわけ』


”そうなのね 
良かったら案内しますよ”


韓国人に比較的多いタイプの顔立ちをした目の細い女が言った


チャンミンと別れたと言ったのは
どう見ても もう一人の方だろう・・・


いくら同じ国の出身だと知っても
外国で突然話しかけられた相手に
ホイホイ着いていくようなことは普段なら決してない


でも今は
チャンミンに繋がる手がかりなら
何でも欲しいと思ってしまう自分がいた


『でも お忙しいでしょう?』


本当の気持ちを隠して一度は断った


”いえ 私は今日はもう講義も終わったし
これから 何か食べようかなって思っていたんです
韓国の人に会えるなんて嬉しくて・・・
私の回りには あまりいないんです
英語ばかりで たまには母国語を話したいし”


目の細い女がまくし立てる


食い気味に誘ってくるということは
俺は好印象なんだろうな


”もし お嫌じゃなければピザ食べませんか?“


“ちょっと サラ 失礼よ いきなり”


”ハヌルはモテるから わからないのよ
こんな素敵な人 滅多に会えないもの
ランチくらい誘ったってバチは当たらないでしょ?


“あ 友人はサラ 私はハヌルです”


”サラといいます”


『はじめまして ユンホです』


”ユンホさん 名前までカッコいい”


“ちょっと サラ“


『ありがとうございます』


“無理にとは言いません
ユンホさんが 良ければですけど
ランチ どうですか?”


『いいですよ ご迷惑じゃなければ
ピザのお店 ご一緒してもらえますか?
一人で どうしようかと思ってたんです
丁度 腹減ってきたところだし』


“すみません
では ご一緒させていただきます“


遠慮がちに言うのはハヌルだ


サラとハヌルは2人で示し合わせたように
何か話してうなずき合い
店を決めたようだ


“この先に サラが教えてくれた
美味しいピザのお店があるんです
そこでいいですか?“


『本当に右も左もわからないので
連れて行ってください』


”じゃあ 行きましょう”


チャンミンのことが知りたい一心で
俺は会ったばかりの女のコ2人と
ピザを食べに行くことにした


こんな偶然 なかなかないよな・・・





やたら広い大学を出て少し歩くと
ガラス張りで中の良く見えるピザの店があった


日差しが差し込む店内は結構にぎわっている


『アメリカ映画で見る光景だな』


”確かに アメリカっぽいですよね
あ ここはアメリカですよね あはは”


明るく笑う ハヌルさん


ピザと やたら大きなグラスのコーラを目の前に置き
俺たちは ゆっくりと食べだした





『誘ってくれて ありがたかったけれど
ハヌルさんもサラさんも 彼氏との約束とか なかったの?』


それとなく恋愛話に持って行く


”私は彼氏なんて いないですよ~
アメリカで カッコいい金髪の彼を作ろうと狙っているんですけどね”


”もう サラったら・・・”


”あ ハヌルはね
ボブっていう優しい彼がいるんです”


”サラ”


”いいじゃない 本当のことなんだし
私はフリーですから”


明るく笑うサラさん


”ユンホさんは? 彼女はいます?”


『あ・・・えっと 今はいないんですよ』


”へー マジですか?
でも その言い方だと別れたばかりとか?”


ぐいぐい来るサラさんだけど
明るいから嫌ではない


楽しく話せそうな感じのいいコだ


『まぁ そんなところかな 
数か月前に別れたんだ』


”まだ 未練ありそうですね
フラれちゃったんですか?”


『まぁね』


サラさんの話に合わせて
それとなく調子を合わせて嘘をついた


”本当に サラってば
初対面なのにちょっと聞き過ぎじゃない?”


”ハヌルに言われたくないな~
このコね 同じ韓国人の彼ができたのに
3ヶ月足らずで ついこの間 別れたんです
なのに もうボブっていう新しい恋人を作ったの
モテる女はいいですよね”


『へぇ ハヌルさん モテるんだね
サラさんも絶対に彼がいると思ったんだけどな~』


”もう ユンホさんて優しいんですね
好きになりそうだから それ以上言わないで”


ほんのりと赤くなってる・・・


”連絡先 交換しませんか?
私 ユンホさんと韓国でまた会いたいです”


『え・・・』


”サラ 本当に失礼よ
ユンホさん 困ってるじゃない”


”別れた彼女が忘れられないっていうところでしょうか・・・
だとしたら ハヌルと同じね”


”サラ・・・”


”チャンミンのこと 忘れられないんでしょ?”


『・・・』


”だから忘れようとしてるんじゃない
それに ボブのことが好きよ”


チャンミンという名前を聞いただけで
胸の鼓動が早くなり脇に汗をかいた





『韓国人は多いの?』


”それが少ないんですよ
たまたま 去年同じ学科に留学してきたのがチャンミンていう
ハヌルの別れた彼氏で・・・
ユンホさんもハヌルも 別れた恋人にまだ未練ありって感じ”


”チャンミンだって そうだったわよ・・・
前の恋人が忘れられないんだろうなって凄くよくわかったもの”


『・・・』


”あ ごめんなさい
こんな話ばかり 止めましょうよ ね?サラ”





間違いない


チャンミンは ハヌルとつきあって別れたんだ・・・





”はいはい ごめん もうしない
ハヌルも ちゃんと吹っ切って
チャンミンが一時帰国から戻ったらまた同じクラスなんだから”


一時帰国・・・?





もしかして あの時
仁川空港のエスカレーターですれ違ったのは


チャンミン 


お前 本人だったのか・・・?





激しく波打つ心臓に
チャンミンへの想いが
これっぽっちも薄れていないことを
嫌と言う程 思い知らされたのだった





ドンへ・・・


助けてくれよ・・・





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 24話

黒い瞳 四幕 1~





C side





”久しぶりだなー
チャンミンだ チャンミンだ チャンミンだ”


ガシガシと俺を揺さぶり ハグしてくるキュヒョン


「キュヒョナ〜 久しぶり」


”お前 痩せたんじゃない?”


「そうかな・・・?」


”カリフォルニアの明るいキャンパスライフ 送ってないのかよ?
暗い顔しちゃって”


「そんなに暗い?」


”ああ めっちゃ暗い”


キュヒョンが予約してくれたお店は
キュヒョンの家と大学の間にある
学生たちに人気の居酒屋だった


とはいえ
僕たちはまだ20歳になったばかり


僕は まだお酒をそんなに美味しいとは思えなかったけれど
キュヒョンは大学のコンパとやらで
結構飲む機会があったらしく
意外と平気で飲んでいて驚いた





”焼酎は そんなに後に残らないからさ”


「楽しそうだな」


”ああ めっちゃ楽しい
結構大学に可愛いコが多くてさ”


「彼女の写真見せて」


”んー いきなり見せるのはちょっと癪だな~
まずは チャンミンの近況を包み隠さず
俺に話してくれたら かな?”


「何だよ 偉そうに」


”ただで見せるには勿体なさ過ぎてね
で? お前 つきあってるコいるって
この間言ってなかったっけ?”


キュヒョンとはカカオでたまに連絡を取っていた


「もう 別れた」


”えーっ?”


「そんなに驚くこと?
合わなきゃ別れるだろ?」


”その相手って 女だよな?”


「決まってるだろ
別に僕はゲイじゃないし・・・」


”ふ~ん”


「なんだよ だからもう話すことないの
写真 見せて」


”おーっと その手には乗れないな
まだまだですよ~ シム・チャンミンくん”


相変らず 探りを入れてくるのが上手い
キュヒョンの口車に乗せられて
僕はハヌルのことをざっと話して聞かせた


「まぁ そんなとこ
彼女には申し訳ないことをしたなぁって思ってるよ」


”寝たんだろ? そのコと”


「まあね 何度か・・・」


”お互い 童貞卒業ってとこだね”


「お前も?」


”もちのロンロンよ
ほれ 見る?”


キュヒョンがやっと見せてくれたのは
意外にもはっきりとした顔立ちの
気の強そうな女のコだった


「お前の趣味って こういうタイプだった?」


”大人しくて 俺の言うことをなんでも聞いてくれるコなんて
勝手に思っていた時期もあったけど
彼女 大学の先輩なんだ
お酒も強くて結構頼りになるんだ ハハハ”


「何だ?それ 今までと全く逆だし」


”チャンミン君 君もそのうちわかるようになるよ
人生は長いようで短いからね
色々なタイプの女とつき合ってみたらいいいよ”


「ぷっ!」


ますます偉そうに
知ったかぶりをするキュヒョンが可笑しくて
思わず噴き出した





”やっと笑った・・・”


「え・・・」


”チャンミン 笑っていたほうがいいよ
高校の頃は いつも笑ってたよ?
お前さ 顔がいいんだから
笑っていたら絶対にモテるって”


僕のことを気にかけてくれるキュヒョンが本当にありがたかった


「サンキュ・・・」


”その ハヌルってコよりも
もっと巨乳を探してさ
ふかふかなおっぱいに癒されてみろよ な?”


こそっと耳打ちしてくるけど


その声 結構大きいんだよ


近くのテーブルの人に聞こえやしないかと
ひやひやしたけれど
どの人も
自分たちが喋ることに夢中のようで
僕たちの声は 全くと言っていいほど聞こえてなさそうだった





”ユノヒョンもさ 就職 決まったらしいよ”


「そうみたいだね・・・」


”え? まさか 連絡取ってたりするの?”


「まさか」


”じゃあ 何で知ってるのさ”


「さっき ブラブラ歩いていて
偶然ユノヒョンのお母さんに会っちゃったんだ」


”マジか? そりゃあ 思い出しちゃうよな
てか 毎日ユノヒョンが忘れられなくて泣いてるんじゃないの?”


「なんで わかるの?」


”げほっ!”


今度はキュヒョンが噴き出した


「きったね 勘弁してくれよ」


”マジ? やっぱり ユノヒョンがいいの?”


「ユノヒョン以上の人なんて いないよ
後にも先にもね・・・
でも 僕はフラれたんだ
ユノヒョンも女のコのほうが良かったんだよ・・・結局」


”・・・”


「何だったんだろうな・・・
あの数年間は・・・」


”コレ 美味いぞ 食えよ”


キュヒョンが
甘辛く味付けされている蛸を皿に取り分けてくれた


”ドンへさんに聞いたらさ
ユノヒョン めちゃくちゃモテるって言ってた”


「・・・」


キュヒョンは なんだかんだ言っても
ドンへさんと連絡を取り合って仲良くしてるみたい


この先も ドンへさんからのユノヒョン情報を
キュヒョンから聞くことになるのかもしれないな・・・


知りたくないことまで・・・


”時間はかかるかもしれないけどさ
ユノヒョンのことは忘れろよ
チャンミンだって本当はモテるだろ?
俺 知ってるんだからな
高校のときも お前に惚れてる女子 結構いたもんな~”


「そうだよな 忘れなくちゃな・・・
よしっ! キュヒョンの彼女よりも巨乳で美人を探すよ」


”シム・チャンミン そう来なくっちゃ“





その後 僕たちは 2人で焼酎の瓶を何本も開けた


僕はヘロヘロになって実家に帰った





月の綺麗な夜だった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 23話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





時差ボケに惑わされることもなく
翌朝は すっきりと目が覚めた


時差ボケは遅れてやって来るって
そういえば誰かが言ってたな





今日はチャンミンの大学に行ってみようと決めていた


アメリカの大学は広い


そんな中でチャンミンを見かけることすらできないかもしれないけれど
普段 チャンミンがいるであろう場所に行ってみたかった





『ドンへ 9時には出られるようにしろよ』


8時に起きて のんびりと髭を剃る


朝食は昨日買っておいた簡単なパンとジュース


俺が髭を剃り終えても
ドンへは起きてこなかった


ツインルームのもう一つのベッドで
ぐっすり眠っているドンへを無理矢理起こす


『ドンへ 起きろよ
お前が誘ったんだからな
ほらっ 早くしろよ』


”・・・ダメ”


『はっ? どうした?』


ブランケットを勢いよく剥いだ俺の目に飛び込んできたのは
うずくまるドンへの姿


『どうしたんだよ?』


”痛い・・・腹・・・痛い”


マジか?!


きっと 昨日調子に乗って食べた
付け合わせのフライドポテトだ


あれが胃にもたれてるんじゃないだろうか?


『お前 食い過ぎなんだよ・・・』


”ん・・・わかってる ユノ 悪い
今日 俺 動けそうもない”


『あ? マジかよ・・・』


"埋め合わせ するから"


この期に及んで俺のことを気にするなんて
ドンへらしい


『そんなこと いいよ 気にするな
わかったから 薬飲んだ方がいいな』


外国は勝手が違うし
言葉も満足にはわからないからと
母親から薬をたくさん持たされたのはドンへ


”ユノ そこのカバン取って・・・
中に薬が入ってるから出して・・・”


外国では言葉が通じないと
薬を買うのは怖い


法外な診療費を払うことになるから
医者には とても行く気になれないと俺の親も言っていた


素直にドンへの鞄から薬を出してやり
買っておいたミネラルウォーターと一緒に渡した


『これ飲んで寝てろよ・・・』


”ああ 悪い ごめん ほんと・・・”


『まさか2日目から薬の世話になるとは思わなかっったけどな』


本当に辛そうなドンへの様子が心配だったけれど
何かあれば すぐに電話をするよう言い残し
俺はホテルの部屋を後にした





せっかくアメリカくんだりまで来たんだ


俺1人でも今日は行動を
起こさなければ・・・


ドンへから受け取ったメモを頼りに
チャンミンの通う大学を目指す


自分の通う大学とは比べ物にならないくらいの広大な敷地


大学名を聞いて
ある程度はネットで調べてきたが
ここまで広いとは・・・


こんなところでチャンミンに偶然逢えるなんて保証は全くない


さて 困った・・・





俺は チャンミンの留学している学部の建物を探し
周辺を歩いた


チャンミンの行きそうな場所
好きそうな場所を探して・・・


図書館や大きな木が目印の小高い丘


そして売店のような店


これ 至難の業だな・・・





手ぶらで歩いているのが珍しかったのか
それとも いかにも
ここの学生ではない雰囲気が伝わったのか
すれ違う学生たちにチラリと視線を送られる


一日中歩いても これではチャンミンの姿はおろか
何の手がかりも掴めそうにない





少し休んで ドンへに電話をしようと思い
大きな木の太い幹に凭れた


スマホを手にしたとき
聞こえてきた言葉


”ビジュアルは チャンミンには到底 敵わないけどね”


ハングルだった・・・


”未練あるの?”


”そりゃあ チャンミンは素敵だったもの・・・”


その声は幹の反対側から聞こえてきた


きっと座って話し込んでいたのだろう


”じゃあ なんで 別れたのよ”


”彼には想い人がいるのよ・・・
私が いくら頑張っても敵わない人
どんな人か知らないけど・・・”


”ふーん じゃあ何でハヌルとつきあったのよ”


”いいの わかるから・・・
きっとね 彼は忘れたかったのよ その人のこと”


"気になるわね
こんなに美人で気立てのいいハヌルを振るなんて
チャンミンの忘れられない人ってどんな人なのかしらね?"


"彼は聞いても何も言わなかったわ
いつも遠い目をしてた
ただの恋人ではない感じで
あまり聞いてはいけないような気がしたの"


”ふーん 何だかドラマみたいね
でもさ ハヌルもチャンミンを忘れるためなのかどうか知らないけどさ
新しい彼氏をさっさと捕まえちゃったんだもんね
ああ 羨ましい~”


”チャンミンと結婚したかったな・・・
身体の相性も悪くなかったのに
ここで同じソウル出身の恋人ができて有頂天だったのにね”


”人生 上手くいかないこともあるわよね”


”チャンミンのことはずっと好き
でも 今はボブの優しさに救われてる"


”さ 行きましょ
チャンミンが忘れられないハヌルさん”





ハングルを話す2人連れが俺の横を通りすぎる時


その女性を ちらりと見た


同じように俺を見た女と目が合った





”こんにちは
見かけたことないけど韓国の方?
ここの学生?”


彼女から声をかけてきた


話をしたら やはり
チャンミンの元カノだった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 22話

黒い瞳 四幕 1~





C side





キュヒョンとの約束は 午後6時


数か月ぶりに実家で昼ごはんを食べた後
一人で ソウルの街をブラブラするために早めに家を出たのが運のツキだった


まだ 時間は たっぷり過ぎるほどある
そんな気持ちが僕を油断させたのかもしれない





若者が沢山集まる街へ出る前に
ユノヒョンの家の近くに行ってみようかな


思ったと同時に僕の足は動いていた


そのせいで 
ユノヒョンのお母さんに見つけられ
ユノヒョンの今を知ることになってしまったのだった





ユノヒョンの家の場所は
はっきりと覚えていた


忘れることなど できない


時が経ち 年を取り
周りの建物が変わっても
ユノヒョンの家に辿り着く自信があった


僕たちが初めて結ばれた場所なんだから・・・





2人で話をした公園


あの頃とちっとも変わってなくて


あ・・・


ふわりと吹いた風が運んできたのは桜の花びら


あのときも 桜の季節だったっけ


思えば 初めてユノヒョンと一つになった季節と
今は全く同じ


桜吹雪が少し肌寒い風に乗って僕のところに遊びにくる


止めてよ 思い出すから・・・





女々しい気持ちを抱いたまま
僕の足は自然と目的の場所に向かい 
あっという間にユノヒョンの家のすぐ近くに来ていたのだ


ユノヒョン・・・


いるのかな・・・


突然 身体中が発火したように熱くなり
容赦なく額に汗が噴き出て来た


もしかしたら そこに
20メートルも離れていない場所に
ユノヒョンがいるのかもしれない


心臓が激しく跳ねるように動いて
僕は動けなくなった


ユノヒョンが家にいるなんて保障は
これっぽっちもないのに・・・


通り過ぎるだけ


そう 僕は1人で歩いているだけ・・・





ユノヒョンの家のすぐ近くに差し掛かった時
ガチャンと音を立てて玄関扉が開いた


「・・・!」


思わず見てしまった僕の目に映ったのは
ユノヒョンのお母さんだった


そして
ユノヒョンが昨日からアメリカに行っていることを
知ってしまったのだった・・・





ユノヒョンの現在を知ってしまった僕は
複雑な思いを抱え
その場を後にした


僕たちは別れたんだ


ユノヒョンの行動なんて知らなくて当たり前


なのに アメリカに行っていると聞いて
わけもなく悲しくなってしまった自分がいた





キュヒョンに会う前に
少しでも 落ち着いておきたくて
街へ向かった


久しぶりのソウルの繁華街
たった数か月しか経っていないのに
随分変わったみたいだ


もともと おしゃれな場所に繰り出して
遊んでいたわけではなかったけれど
それでも 新しいカフェや飲食店が
物凄く増えているように感じる


ユノヒョンは こういうところで
恋人とデートをしているのかな?


キュヒョンも してたりして・・・


自分には一生縁がないような気もする


僕も いつかは女性と結婚したりするんだろうか?


想像できないな・・・





ブラブラと洋服を見たり
大きな本屋を覗いたりして
アメリカでは買うことのできない本を数冊
見繕って買った


カフェでコーヒーでも飲もうかと思ったけれど
カップルばかりが目について
店内に入るのを躊躇ってしまう





ユノヒョン・・・


僕がいるはずのアメリカに行ったの?


もしかして
僕に逢いに?


都合のいいことを考えてしまう自分が滑稽に思えて
頭をぶるぶる振った


こんな時はキュヒョンと楽しく飲んだ方がいい


ユノヒョンのことを考えなくて済むように


少し早いけど 僕は
キュヒョンに指定されたお店に向かった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 21話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





『あー 気持ちいいーっ』


高く青空に向かって 思い切り伸びをする


”本当に気持ちいいな” ドンへも同調する


目を閉じて 息を大きく吸い込めば
身体の中に染み入るカリフォルニアの乾いた空気


初めてアメリカ大陸に足を踏み入れた瞬間だった





親友ドンへの半ば無理矢理の誘いで訪れた大地


ここは愛するチャンミナが居るところだ


ソウルに比べると
遥かに高い空 乾いた空気 


濃い青に彩られた広い空は
なるほど開放的なところだ


この明るい土地で
真面目なチャンミナは毎日何をしているのだろうか・・・





”ユノ すんげー 気持ちいいだろ?”


長いつき合いになるドンへの顔を
まじまじと眺めて頷いた


ドンへに言わせると
俺はチャンミナと別れてから
あまり笑わなくなったそうだ


行きの機内でも上映されている映画を観ながら
能天気に笑う一方で
チラチラと俺の様子を気にするドンへに
気づいてないわけではない


本来ならば
人の心配をする前に 自分のことを心配しろよと
悪態の一つでも ついてやりたいところだけれど


俺のことを案じて
この旅行に誘ってくれたドンへに
今回ばかりは素直に感謝しようと決めた


何も言わずに
ドンへの存在を ただただ有り難く思った





俺たちの一番の目的は チャンミナを探すこと


その姿を遠くから一目見て
元気でいることを確認したい


楽しそうなら それでいいんだ


冷たく別れを告げた俺のことを忘れて
新しい世界で いい人を見つけてくれていたら
それでいいんだ


お前の幸せだけが俺の願いなんだから・・・





”おいっ ユノ 
湿っぽい顔してんじゃねーよ
ここ 何処だか知ってるか?”


『何言ってんだよ アメリカだろ』


”そうそう チャンミンのいるアメリカ な?
そこんとこ間違えるなよ”


『・・・何だよ・・・』





”さ 早速行くぞ”


ドンへにしては珍しく
事前の下調べが万端で
スケジュールが ちゃんと決められていた


全て俺のことを思ってのことだと思うと泣けてくるじゃないか


ドンへの言う通りにするよ





ホテルにチェックインを済ませ
ハンバーガーで腹ごしらえを兼ねて
作戦会議に乗り出した


”スゲーな ユノ みんな胸でかくね?”


『それが目的かよ?』


”いや だってさ ほらっ あっ わっ すげー”


ハンバーガーのチーズを唇の端につけたまま
ポカンと口を開けるドンへがなんともマヌケだ


白人女の大きな胸や露出の多い服から見える胸の谷間や
ミニスカートからのぞく太ももには
全く興味が湧かない俺からしてみれば
ドンへの行動が ただオカシイだけだ


一般的には ドンへが正常なんだろうな・・・


歩く度に ゆっさゆっさと揺れる大きな胸や
ブロンドの長髪よりも
俺は今 目の前にある巨大なフライドポテトの山に目を丸くしている


何だって アメリカはこうも巨大なんだ?


ハンバーガーの大きさもさることながら
ドリンクのカップの大きさ


これでM? 


世界中にある有名ハンバーガーチェーンだというのに
ソウルで飲むようなSサイズは存在していない上


付け合わせについてくるポテトが
可愛い紙袋に入っているわけではない
トレイの上に トングで山盛りポテトをバーンと乗せられたのだ


『マジかよ・・・』


まだ その衝撃から抜け出せないでいるのに


ドンへの奴と来たら 女の胸に釘づけだ





チャンミナ・・・


チャンミナもソウルでは見ない女たちに囲まれて
楽しく過ごしているだろうか・・・


恋人は できただろうか?


彼女ができたって そう言えば聞いたっけ・・・


でも自分の目で確かめるまでは
どうしても チャンミンと女のコが一緒にいる様子を
想像することができなかった


ボリューミーなナイスバディに
デレデレが止まらないドンへの姿に
救われている自分がいた





”ユノ お前 そんな湿っぽい顔してると
天気まで悪くなりそうだから やめてくれよ”


『悪かったな 俺はもともとそういう顔だよ』


”早く食えよ こんな景色のいいハンバーガー屋 
ソウルにはねぇぞ”


ドンへの言う景色とは 
ブロンドの女たちのことだ


カップルで来ているものもいるが
なるほど スキンシップの激しさも
韓国人の更に上を行く


人前でも普通に抱き合ってキスをする


腰に手回したまま 見つめあって またキスをする


しかも濃厚だ


見ているこっちが照れるじゃないか・・・





一向に減る気配のないポテトの山に 


ドンへの手が伸びる


”うめーな コレ ユノが食わないなら俺もらうよ”


『いいよ 全部食っても
俺 飛行機酔いと アメリカサイズのボリューム酔い』


”ユノくん 繊細なのね~
じゃあ あたしがもらってあげる”


『ぷっ 気持ち悪いな』


少しでも 俺を和ませようとしてくれるドンへ


俺 お前のこと 大好きだよ


たわいない話をしながら
ハンバーガーとコーラだけは
何とか腹に収めた





”今日は もう疲れたから 明日朝から行動開始な?”


『ああ・・・お休み』


作戦会議と言う名目の
ドンへの巨乳鑑賞会につき合っただけで
初日の夜は すぐさま眠りについた





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 20話

黒い瞳 四幕 1~





C side





久しぶりに口にする母さんのご飯は やっぱり美味しくて


”チャンミン 少し痩せたんじゃない?”


「そうかな・・・
ブラウンさんの作るものを全部食べてたら大変なことになりそうだから
もともとそんなに食べないんだって言ってみたんだけど
夕飯は かなりの量・・・
アメリカ人て 食べる量が尋常じゃないんだよね
いくら僕が大食漢でも あれは危ないよ」


”そうなの?”


「母さんが見たらビックリするよ」


”じゃあ チャンミンは自分で気をつけて食べ過ぎないようにしているってことね”


「うん まぁ そんなとこ」


ユノヒョンのことを考えていると
食べられないってときも あるんだけど・・・





翌日 夕方からキュヒョンと会う約束をしていた


待ち合わせの前に 僕はユノヒョンの家の近くに行ってみた


もうすぐ就職だろうから
大学の近くの部屋は絶対に引き払っているだろうと踏んでいた


きっと 実家に戻っているはずだ


逢いに行くんじゃない


自分の気持ちを確かめに行くんだ


ユノヒョンを 一目だけでもいい
遠くから見ることができたならば
自分の気持ちがハッキリわかるに違いないと思ったのだ





僕と別れるきっかけにも なったであろう彼女と
今もまだ 続いているのかな?


どんな人なのか想像すらつかないけれど
好きな人がいると告げられた時のユノヒョンの表情


僕は覚えているよ


辛そうだった


本当に 僕に申し訳ないと思ってくれたんだよね


だからさ
彼女と幸せそうにしているところでも見たら
僕は本当に諦めが つくんじゃないかと思うんだ


ううん


諦めなくちゃいけないんだって
自分に言い聞かせることができると思ってる


だから


ほんの一瞬でもいいんだ


ユノヒョンの今を 


今のユノヒョンを 


ちょっとだけ 覗きたいと思う





そんなことを考えながら
フラフラとユノヒョンの実家近くをうろうろしていた


一緒にベンチで座って話をした公園は 
子供たちで 賑わっていた





桜の季節に この公園を通って
ユノヒョンの家に行ったっけ


そして あの部屋で
僕は初めて 
ユノヒョンに抱かれた





あの日から2年経つ


そして 別れてからは半年


僕はね ヒョン


今でも
ヒョンの手が触れたときの痺れるような感覚を
忘れてないよ


優しい眼差しも 温かい胸も
僕を呼ぶ 大好きな低い声も・・・





ぼんやりと歩いていたんだろう


気づけば
ユノヒョンの実家の前に立っていた





”あら? もしかして チャンミン君?”


「・・・あ・・・おばさん・・・」


声をかけてきたのは
他でもない
ユノヒョンのお母さんだった


何度か遊びに行ったときに会ったことがある


”やっぱりそうだわ チャンミン君よね?
暫くぶりね”


「ご無沙汰しています」


”元気だった? ここのところ全然話を聞かないから
どうしたのかしら?って思っていたのよ?
ユノとは連絡取ってないのね?”


「あ はい・・・」


”そりゃあそうよね
同じ年のお友達と居る方が楽しいわよね”


「あ そういうわけじゃ・・・」


僕は何と答えたらいいのかわからなくて
口ごもってしまった


“今日はどうしたの?
まさか ユンホに会いに?”


「いえ たまたま この先に友達の家があって
通りかかっただけなんです」


咄嗟に嘘をついた


きっと変に思われているね


”そうなの・・・
ユンホがいれば呼ぶんだけど
今ね いないのよ”


「え? そうですか」


何処に 誰と何をしに行っているのか


知りたくて 聞きたくて 堪らなくなった


僕のそんな気持ちを救うように
おばさんから話してくれたおかげで
ユノヒョンの今を知ることになった





”あの子ね 今 旅行中なのよ
もうすぐ就職だって言うのにね
ドンへ君 知ってる?”


「はい 知ってます」


”ドンへ君と二人でアメリカに行っているのよ?”


アメリカ・・・?


ああ そうか


おばさんは僕がアメリカに留学したことを知らないんだ


”残念ね 昨日出発したばかりだから
来週まで帰って来ないわ”


昨日・・・


僕とは完全なすれ違い


まるで 神様から
逢うなと言われているような気がした


”家もそんなに遠くないんだし
就職したら いくら忙しいと言っても少しすれば落ち着くでしょうから
また 遊びに来てね”


「はい ありがとうございます」


それだけ言うのが精一杯だった・・・





ユノヒョン 


就職 決まったんだね


おめでとう


きっと いいところなんだろうね


イキイキと仕事をするユノヒョンを想像して


僕は目頭が熱くなった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 19話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





楽しいスノボ旅行を終えて
いよいよ 俺は就職を間近に控えることとなった


新しい出会いはあったものの
ヨニともユンアとも
それ以上の特別な進展はなく
俺は最後のアルバイトをしたり
趣味の発明をしたりしていた





そんなある日 ドンへから電話があった


どうしても
アメリカへ一緒に行ける人がいないというので
付き合ってくれないかというものだった


俺は気乗りはしなかったけれど
チャンミンのことを完全に吹っ切るために
アメリカでチャンミンが頑張る姿を一目
遠くから見て
自分の気持ちと向き合おうと思った


『仕方ねえな 行ってやるよ』


”おー マジか?
それでこそチョン・ユンホだよー”


ドンへのように能天気に浮かれた気持ちにはなれないけれど
決めた瞬間にドキドキした





”就職を控えているんだから
あまりハメをはずさないようにしなさいよ”


『わかってるよ』


実家を出たのは少し肌寒い春の朝


桜のつぼみも
咲きたくてもまだ咲けないような朝だった


出発は午後だけど
国際線は何時間も早めに行かなくてはならないから面倒くさい


それでも 初めての海外行きに
ドンへと2人 気持ちのいい緊張感に包まれていた


”仁川空港ってデカいな”


『ああ 思ったよりもでかいな スゲーな
インターナショナルって感じ』


俺たちはキョロキョロと回りを見渡しながら
出発を楽しんでいた


時間に余裕があったので
上の階にあるショッピングアーケードを見て回ることにした





長いエスカレーター


半分くらい上ったとき
隣りを動く下りエスカレーターに乗っていた男が気になり
何の気なしに振り返ってみた


チャンミナ・・・?


隣りをすれ違ったときに
懐かしい空気が漂ったような気がして
思わず一人 振り返ったのだ


どんどん下っていく頭が
後ろの大柄の男の影になり よく見えない


錯覚かな・・・


チャンミナがいるわけ ないか・・・





チャンミナによく似た頭のカタチ


いや アイツは今 アメリカにいるはずだ


きっと アイツのことばかり考えていたから
幻が見えたんだ





下を向いて ふっと苦笑いをした


ドンへは相変らずキョロキョロしているから
俺の様子には全く気付いてないようで 
内心 ホッとした





向こうでチャンミンに逢えるという保障もないけれど
ドンへがキュヒョンから以前聞き出した大学と学部


住んでいる地域を頼りに
俺は一か八かの行動に出てみようと決めていた


後から考えれば
こんな無謀な計画


成功するはずなんて なかったのに・・・





エスカレーターに乗っていたのが
本物のチャンミンだとも知らず
ロサンゼルス行きの大韓航空機に乗り込んだ





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 18話

黒い瞳 四幕 1~





C side





もしかして 僕は少し大人になった?


それとも たかだか缶のビールを2本飲んだくらいで
大人になったと思うなんて
やっぱりまだ子供なのかな





ちょっと気持ちよくなったこと
ハヌルと別れて気持ちが軽くなったこと
仲間たちと騒ぐのが楽しかったことで
僕もマークも調子に乗ってしまった





外国人の友達と対等に話せるようになったことも
嬉しかったせいか
女の子たちとダンスのマネごとをして
ノリで キスをしたり抱き合ったりしてしまった


その場にいる友人たちにとっては
大したことではないようで
いつものスキンシップみたいなものなんだろうと思った


事実 後腐れもなく 僕は気が楽だった


相手に何の感情もないと
身体に触れても何も感じないものなんだな・・・


でも相手が女のコだと
変に誤解されないように気をつけなくちゃね


楽しい日々を過ごして
半年ほどが過ぎて行った





桜の咲く季節を前に
僕は韓国に一度帰ることになっていたので
ブラウンさんに挨拶をして1週間の予定で旅立った





ソウルは変わっていないかな・・・


小うるさい妹は少しはダイエットに成功しただろうか


父さんや母さんは元気かな?


Face Time や Skype で姿は見ていても
実際会ってみるまでは心配でもあった





久しぶりの仁川国際空港は
少し緊張する


到着ロビーから
エスカレーターで出発フロアへ下りていく


出発フロアからバスで帰ろうと思ったのだ


長いエスカレーターを下る僕


これから出発する人たちは隣のエスカレーターで
出発ロビーに上がっていく


僕も数か月前は このエスカレーターを上ったんだ


数か月って早いな・・・


そんなことを思いながら空港の中を見回した


さすが アジアのハブ空港と言われるだけあって
大きく進んだ設備だ


このざわめきも懐かしい


いつも のんびりとした
カリフォルニアの空気を吸っていたから
妙に都会に来た気分だ





バスでソウルに向かう間に
アメリカで購入したスマホを
韓国で使えるように設定を変更する


早速 親友のキュヒョンから連絡が入っていた


今週末にでも会おうと・・・


僕も早くキュヒョンに会いたかった





久しぶりに会う家族は
ちっとも変わってなくて
僕のアメリカ話や妹の学校の話で盛り上がり
家族の団欒は あっという間に時間が経った


”ねぇねぇ お兄ちゃんたらさ 
金髪のボンキュッボンの彼女できた?”


「いたよ」


”えーいたの?”


「でも別れた」


”えーっ? 何でー? てか早くない?別れるの”


「いいだろ 合わなかったんだよ」


”ふーん”


ハヌルの顔を思い浮かべながら
ボンキュッボンの金髪ではないけれど
僕はウソをついた


何か 意味ありげに僕の顔を覗き込む妹が憎らしい


「なんだよ?」


”あ~あ~ お兄ちゃんて本当に残念
結構いいセン行ってると思うのになぁ~
ちょっとキモイオタク気質ではあるけれどさ
お兄ちゃんが アメリカ行っちゃったから ユンホさんの話 聞けなくて更に残念”





ユノヒョン・・・





何も知らない妹の何気ない一言で
胸の奥がズキンと音を立てる


ユノヒョン 元気にしてるのかな?


もうすぐ きっと就職だね・・・





目頭が熱くなる


家族に気づかれないように
そっとトイレに立った





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