癒しの T-Garden 赤い海の旅人

黒い瞳が邪魔をする 第四幕 17話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





”あれ~? もしかして お2人さん 知り合いだった?”


”あは バレちゃった? 私 ユンホさんの大ファンなの”


”そーなの?”


”何で何で? 何処で知り合ったのよー こんなイケメン”


初めて会う俺に他の女のコ達も興味津々みたいだ





今回のスノボ旅行の発案者で
メンバー全員を知っているイェソンの仕切りで
とりあえず荷物を部屋に置いた後
ロビーに集合しようという話になった


俺とイエソン以外の男2人と女子2人は
イェソンの大学の同級生でサークルも同じだそうだ


そして さっき俺に声をかけてきたヨニと
一緒の車で現れた もう一人の女のコがサークルの後輩だそうだ


ヨニは 俺の大学のコではなかったのか・・・


たまたま俺の通う大学の学際に遊びに来て
俺を見つけたのかもしれない





今夜の宿になるロッジは全体的に山小屋風


思ったよりも大きくて立派だ


ソウルから2時間足らずで
こんなに雪深いスノーリゾートがあったなんて
すっかり忘れていたな





スノーボードができる格好に着替えると
荷物をおいて ロビーで全員と改めて顔を合わせる


そこで初めて簡単な自己紹介となった
俺たちは卒業を控えた4年生
ヨニと ヨニと一緒に来た女のコが2年生だった


”ユンホ このロッジの持ち主が この子のお父さんなんだ”


『へー そうなんだ
こんな立派なロッジを持ってるなんて凄いね』


スラリと背の高いヨニに比べると
かなり小柄だが とても聡明そうな女のコ


派手ではないが
顔立ちは はっきりとしていて
声の可愛いコだった





”はじめまして チェ・ユンアと言います”


後々 結婚の約束まですることになる
俺とユンアの出会いの瞬間だった





”ユンアのお父さんはね 建築家なの
ココだけじゃないのよ
ソウルのSHINE HOTELもユンアのお父さんの設計なんですって”


他の女子も色々説明をしてくれる


”お前たち何だよ?
いつもの集まりよりもずっと饒舌で楽しそうだな”


男子に茶化されるとヨニが言う


”だって ユンホさんとスノボできるなんて
一緒に旅行に行けるなんて
思ってもみなかったんですってば”


”みんな ユンホさん狙い?”


他の男子にも揶揄されて
ヨニ以外は静かに笑っていた


”私が最初に見つけたのよ
ユンホさん 一緒に滑ってね”


ヨニの かなり積極的な態度に
他の女子が引かなきゃいいけど・・・





”ヨニ 良かったわね
あ そうそう夜は食事の用意があるって
パパからの伝言があったみたい
みんなで食べましょう”


ユンアという女の子の言葉に
特に男性陣の目の色が変わる


”やったー”


思いがけない食事のプレゼントに皆も大喜びだった





全員がスノボ経験者というだけあって
特に手取り足取り教える必要もなさそうで
逆に久々に滑る自分の方が心配だった


まずは足慣らしってことで
全員で一本滑ろうということになった





別に合コンてわけでもないし
俺以外は気心の知れたメンバーだからか


気負うことなく
はじめのリフトは男同士女同士で乗った


一番上手だというドンホが先に滑り
少し先で待っている


皆がドンホを目指して滑っていく





”ユンホ 久しぶり?”


『ああ ヤバイな
俺が一番下手かも』


”はははは じゃあ お手並み拝見だな
無理はするなよ
就職を控えてるんだから”


『そうだな 気をつけるよ』


案の定 最初の一本は
感覚を取り戻すことで終わったけれど
すぐに以前のように滑れるようになった


そんな俺の様子を
14個の目がジーッと見つめていた


”やっぱりユンホさん カッコいい”


手を叩いて喜ぶヨニ
その横でニコニコと笑って見ていたユンアも


”ほんと 決まってますね”


感じのいいコだな・・・


ユンアの第一印象だった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 16話

黒い瞳 四幕 1~





C side





ハヌルと別れてからの僕は
取り立てて変わったこともなく
今まで通りに勉強に集中する生活を送った


英語も喋れるようになればなるほど
面白く感じるようになってきた


僕の英会話の上達ぶりは
ブラウンさんも舌を巻くほどで
今では TVもニュースも
専門用語でなければ何となくわかるまでになっていた


やはり 習うより慣れろ だな





ハヌルは 会えば普通に話はするけれど
以前のように ずっと一緒にいることはなく
授業は離れた場所で聞き


ハヌルも違う国籍の女のコ数人と
ランチに行ったりしているようだった


そんなハヌルを遠くで見つめ
早く僕を忘れて いい人と一緒になれるといいねと
心の中でエールを送った


他人が聞いたら
僕は とても無責任に感じるだろう


でも 仕方ないのだ


僕には これが精一杯


結果として
ハヌルに寂しい思いをさせてしまったかもしれないが
決して騙したわけでも嘘をついたわけでもない


それは ハヌル自身が
よくわかってくれたのだと信じている





アメリカは韓国に比べると
性に対しての考え方がオープンだ


街中でも男性同士のカップルをよく見かけるし
手を繋いで歩いたり
見つめあっている幸せそうな男性たちもいた


そんな光景を見るにつけ
僕は未だユノヒョンに囚われてる自分を
再認識せざるを得なかった





ある寒い冬の日


僕はユノヒョンが買ってくれた色違いの革ジャンを着て
映画を見に行った


前から見たかった恋愛ものだけど
セリフが多いと聞いていて
自分の英語力で全部理解できるかどうかが疑問で
敢えて 避けていた映画だった


観てみたら 意外にも
だいたいのセリフは理解できた


自分でも驚くくらいに
映画を楽しむことができたことで
教授が言っていた ”アメリカで仕事をすること” について
真剣に考えてみようと思った


アメリカでの生活は
僕の人生の中でも
とても有意義な時間になるだろうことは間違いない


そう考えると
ハヌルと別れて良かったのかもしれない


僕は この先も
かの愛しい人以外を愛せる自信なんて
全くないのだから・・・





ブラウン夫妻が息子のところに遊びに行くと言う週末


僕は クラスのマークたちとキャンプにいくことにした


キャンプと言えるほど立派なものではないけれど
キャビンがいくつも点在する大きな公園が
車で30分足らずのところにあるというのだ


女の子も含めると 10人くらいだろうか


たまには大勢でワイワイやるのも楽しい


せっかく自由の国にいるのだから
たくさんの友達と触れ合わないと・・・





久しぶりに大学の仲間でたくさんお喋りして
騒いでスッキリした


そして このキャンプで
僕は初めて缶ビールを飲んだ


どうしてだろう?


韓国で口にした時は
こんな不味い飲み物を美味いと言う大人が
信じられなかったのに
何と2本も飲んでしまった


アルコールとの相性は
実は悪くないのかもしれないと思った瞬間だった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 15話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





イェソンはスノボが趣味らしく
大学時代もたびたび行っていたようだ


俺が 高校時代の部活がスキー部で
主にスノボをしていたと言うと
縁があるねと大喜びだった


イエソンとは大学も違うし
互いの実家も離れてる


でも コイツが同期だと思うと安心できた


人当たりのとても柔らかい人物だったからだ


今後も 仕事のことで ちょっと飲みたいときや
休日の暇つぶしなんかで
きっと会う機会が多くなるに違いない


そう思わせる相手だった





スノボ旅行に向けて 
俺は 実家に荷物を取りに帰った


古い傷だらけのボードを自分の部屋から引っ張り出すと
妙に懐かしく感じた


大学時代は 高校時代に比べると
その半分も スキー場に足を運んでいなかった





待ち合わせは
ソウル市内のイェソンの通う大学の最寄り駅の近く


俺以外の参加者は全員イエソンの大学の同級生と後輩だそうだ


メンバーは男友達ばかりなんだと思い込んでいた俺は
紹介されたのが女のコだったことに面食らった


聞いてねぇよ・・・


女のコが一緒なら
それなりの心構えってもんがあったのにな





驚きながらもイェソンの運転する車の助手席に乗り
知り合ったばかりの後部座席の女のコ2人と
ぎこちない会話を交わす


俺たちの他にも男女2人ずつの車が1台
現地で合流するらしい


全部で8人


行先は ソウル市内から車で2時間ほどのリゾート地


スキー場の近くにロッヂを持つという
大学では有名な お嬢様も来るらしく
今夜は そのロッヂに全員で泊まる予定だ





季節は 春というだけあって
雪はまだあるけれど 天気がいいと
真剣に運動したら汗をかきそうだ


空の上では 太陽が元気よく地球を照らし
目の前の雪は汗をかいて 
一目でわかる状態で溶けていっていた





ロッヂ前に車を停めて待つこと10分ほど


もう1台の車が停まり 男女4人が降りてきた


”お待たせしましたー”


”おはよう 待った?”


俺以外は全員知り合いなんだから
こんな雰囲気も当たり前か・・・


ん? 


えっ?


車から降りてきた女のコ2人のうちの1人は
何処かで見たことがあるような・・・


そのコは心なしか
俺を見つけて微笑んだような・・・





”みんな~ 聞いて
スンホの代わりに誘った俺の同僚になる予定の男
チョン・ユンホ君ね”


『チョンです いきなりですが
明日までよろしくお願いします』


”はい よろしく!”


口々に よろしくの挨拶を終えると
イェソンが言った


”詳しい自己紹介は後にして
荷物 片づけちゃおうぜ”


”そうだな”


チェックインまでは まだ時間があるが
荷物はロッヂで預かってくれるという


荷物を運ぶ途中
さっきの女のコが話しかけてきた


”こんにちは ユンホさん”


『?』


見たことがあるような気はしたが
何処で会ったのか 誰なのか
申し訳ないことに全く思い出せなかった


”忘れられちゃったかぁ~ 残念”


『ごめん 何処かで会ってたんだよね?』


”モテる人はこれだから・・・
学園祭のときに声をかけた イ・ヨニです”


『あー あの時の』


ようやく思い出した


あまりに沢山の人に声をかけられて


誰が誰だか全く覚えていなかった


”思い出した?”


『うん ごめんな』


俺たちの様子を
周りの連中が不思議そうに眺めていた





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 14話

黒い瞳 四幕 1~





C side





僕とハヌルは毎日一緒にいて
前よりもスキンシップが増えた


それは 2人の間に新しい関係ができたことで
より恋人らしくなったから
ということに他ならなかった





あれから 何度か身体を重ねた僕たちだけど
僕から誘ったことは ただの一度もなく


何となく
ハヌルがもじもじと何か言いたげな感じを醸し出して
部屋に来ないかと言われては


流れで抱く・・・そんな感じだった





ハヌルのことは可愛いと思う


でも愛しているかと問われれば
胸の奥から湧き出るような劣情は
ないと言うしかなかった


身体を重ねるときに
ハヌルから幾度となく囁かれる “好き“ と言う言葉


でも僕はそれに対して可愛いよとしか
答えることができなかった


きっと彼女も
僕が彼女と同じ熱量でないことには
気づいていたと思う





彼女に申し訳ないような
つきあいを続けた僕が気づいたのは


ユノヒョンを忘れるためには
勉強しているのが一番いいということ


僕は授業は全部真面目に聞いたし
家にいるときも
かなり集中して勉強に時間を費やした


おかげで教授からは
呑み込みが早いと褒められたりした


このまま頑張れば
英語力もかなりのものになるだろうし
アメリカで仕事をすることも夢じゃなくなるかもしれないと


僕のことを
かなり かってくれていることがせめてもの救いだった





アメリカでは
クリスマスは家族と過ごす一年で一番大きな行事だ


ブラウン夫妻の息子たちも自宅に帰って来て
それぞれの生活の話を聞いて
とても新鮮な気持ちになった


ハヌルはというと
クリスマスと年末年始に韓国へ帰ることにしたらしい


一緒に帰らないかと誘われたけれど
一人になるいい機会だと思い
帰っても家族が出かけていていないのだと嘘をつき
アメリカに残る選択をした


ブラウンさん一家は僕に対して
本当の息子みたいに接してくれていて
年末年始もずっとここにいていいのよと言われていたことも
一時帰国を断る良い言い訳になっていた





そんなこともあって ハヌルは
僕が真剣にハヌルを見つめていないことを
認めざるを得なかったのかもしれない・・・





現に ハヌルのいない日々は少しだけ気が楽で
誰にも邪魔されずに勉強できることが嬉しかった


夜も 本を読んだり音楽を聞いたり
たまにマークやジョンとご飯を食べたり
映画を観たりするのも
とても楽しかったのだ


ブラウンさんの奥さんには料理も教わったりして
恋人がいなくても充分充実していたのは
隠しようがない事実だった





僕はアメリカに来てから
1週間に一度
ソウルの自宅にコレクトコールをしていた


その度に “アメリカには行けないから
一度くらいは帰っていらっしゃい“ と
母に しつこく言われていたのだが


年末年始に帰らなかったことで
更に強く言われ
仕方なく
授業の一区切りとなる春先の短い休みに
一度 韓国に帰る約束をした





そして 新しい年になり
韓国から帰ってきたハヌルに誘われて
一度だけ彼女の部屋で過ごした後


彼女から 別れを告げられた





"チャンミンはずっと違う誰かを見てる・・・
前からわかってはいたけれど
どんなに頑張っても
その人を超えることは絶対にできないって
わかったの・・・
お休みの間に よくよく考えて出した結論よ"


返す言葉がなかった





三ヶ月足らずの短いつきあいだった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 13話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





チャンミナへの想いを完全に捨てきれないまま
時間だけが どんどん過ぎて行く


運動もしないのに 腹が減るのと同じだ


気づけば年が明け
いよいよ就職まで秒読みという時期になった





高校時代からの悪友ドンへから
何とか卒業の見込みとなり
やっと就職も決まったと 疲れたように電話があったのは
年が明けて 10日程 経ったときだった


”ユノ 旅行しようぜ”


『はっ? 今更?』


”やっと決まったんだよ
お世話になっている親友の卒業&就職祝をしてあげようとは思わないのか?”


『誰が世話になってるって?』


”ユノが俺に”


『どの口が言うか?
世話してやってるのは こっちの方だって 誰が見てもわかるだろ』


”そんな冷たいこと言わないでさ~
俺と一緒にアメリカ行かない?”


『アメリカ・・・?』


ドンへの口から “アメリカ“ という言葉が出て
俺は思わず食いついてしまった





”おー ユノ君 さすがだねー
アメリカという言葉に すぐさま反応を見せてくれて
俺の読み通りってヤツ”


『何だよ? その読みって・・・
てか なんでお前からアメリカ行きを提案されなきゃなんないの?』


”知りたいだろ?”


『別に』


”おーおー やせ我慢しちゃって”


『何だよ もったいぶって』


”実はさ 当たったの
ペアの航空券”


『はっ? お前って一生懸命懸賞とかに応募するタイプ?』


”そんな面倒なことしないよ
スマホが壊れてさ 新しいのに買い替えたんだけど
なんか電話屋でキャンペーンやっててさ
その場で申し込んだら当たったんだよ”


『へぇー 商店街の年末福引セールみたいだな
オバチャンかよ』


”で その航空券で俺が世話してる大事な友達ユノ君を
アメリカへ連れて行ってあげようと思ったってわけ”


『親と行けよ
俺はいいから』


”それがさ 母親も腰が痛いとかでさ
今は長時間の飛行機は無理そうなんだ
父親は仕事で無理だし
ねーちゃんも行きたいけど無理だって”


『そっか・・・で? 暇そうな俺を誘ってんのか?』


”そう卑屈になるなって”


『何だか 偉そうに言ってるけど恩着せがましいぞ
それに これだけははっきりしておくけどな
お前に世話されてると思ったことは今までただの一度もない
わかったか?』


”そう言うと思ったよ
ま 事実 俺の方が世話されてるのかもな?”


『当たり前だ』


”でさ これ春までに使いたいんだよ
仕事始めると どうなるかわからないだろ?
だからさ はっきり言うよ
チャンミンのいるアメリカへ行こう”


『いいよ 俺は・・・』


”なんでだよ”


『俺たち もう別れたんだよ・・・
お前だって一部始終を知ってるじゃないか』


”でも ユノ 未練たらたらだし・・・”


『そんなことない
それに チャンミンには彼女がいるらしいじゃないか
だから もう俺には関係ない』


”あ 聞いた? おばさんから・・・
おばさん言ってたぞ 
ユノは めっきりチャンミン君の話をしなくなっちゃったんだけど
あの2人 何かあったのかしら?って・・・
あんなに仲が良くて 実家にもお互い出入りしていたのに
急に話題にも上らなくなったって・・・”


『だからって あんまり親にペラペラ話すなよ』


”チャンミンに彼女がいても平気なのか?”


『平気とか平気じゃないとか そういう問題じゃないんだ
もう関わらないって決めてる
連絡先も消したよ』


”ユノ・・・”


『誰か他の友達でも誘って行けよ
俺は本当にいいから・・・』


”ますます心配になるな・・・
チャンミンの親友キュヒョンがさ 
チャンミンがあっちで無理してるんじゃないかって
文字だけでの連絡だけど
元気がないように感じるって言ってたからさ”


『そっか でも 本当にいい』


いくら俺が諦めきれないみたいに見えるからって
アメリカへ行ってどうなる?


チャンミンに会って どうすればいいんだ?


何もすることはないじゃないか・・・


俺が別れを決め アイツも納得したはずだ


今更・・・





”ユノ? お前がそこまで頑ななら
もう何も言わないけどさ
一度チャンミンと会ってみろよ・・・
で 本当に良かったのか
その場で決めてもいいんじゃないか?
まだ間に合う気がする”


『今更?』





別れて半年か・・・ 


そろそろ きっぱりと前に進めるように吹っ切らないと・・・


ドンへに言われなくても
そんなことは俺自身が良くわかっていた


本当に忘れられない


ドンへの言うことは図星だ


だけど
チャンミナは困惑するだろう?





その晩
同じ会社に入社することになっていたイェソンから連絡があった


研修で何度か顔を合わせ 
仲良くなった男だ


イェソンの大学時代の友だち数人と一緒に
スノーボードに行かないか?という誘いだった


一人どうしても行けなくなったらしく
穴埋めで呼ばれた その一泊旅行で
俺は また新たな出会いをすることになる


そんなことは想像もせずに
ただ 予定が出来たことが嬉しかった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 12話

黒い瞳 四幕 1~





C side





少し寒くなってきたからと
ハヌルは チゲを準備してくれていた


同じ韓国人同士という気楽さもあり
食べ物の好みも似ていて
一緒にいて とても楽な相手だった





ハッキリとした顔立ちのハヌルは
世間で言えば 美人の部類に入るだろう


大学内で 他国の男子学生から
声をかけられているところを
遠くから見たことがある





だからと言って
ハヌルがいないとつまらないとか
毎日でも会いたいとか
そういう感情が湧いてくることはなく


僕は女性に興味がないのかと
自分は もしかしたら
性的マイノリティの一人なのかもと思ったりもした


自分でもよくわからない


だって 僕は
ユノヒョンしか
好きになったことがないのだから・・・





「美味しかったよ」


”良かった~ 
こっちに来て 誰かにお料理を振る舞うのは 
ルームメイト以外では初めてだったの
その初めてがチャンミンで良かった”


「僕も まさか彼女に手料理をご馳走になる日がくるなんて
思ってなかったよ・・・」


”え・・・別れて来た彼女は?
お料理とか あ 自宅住まいだったのかな?
それじゃあ 手料理なんて食べられないわよね
ごめんごめん”


聞いてはいけないことを口走ってしまったというように
彼女は慌てて謝った


別に悪くなんてないのに・・・


別れて来たのは
料理なんてしない男だったんだから・・・





食器洗いを一緒にして
ジュースを一緒に飲む


彼女は まだ お酒を飲んだことはないと言うし
僕も ソウルにいた頃は
父のお酒をほんの少し 口にしたことがあるだけだった


苦いビールの何処がそんなに美味しいんだろうとか
焼酎の良さなんて わかる気がしないと思っている


それに ハヌルも20歳になったばかり


僕に至っては
誕生日の2月まで あと数ヶ月


今はまだ 19歳なのだ





ジュースを飲んだ後
小さな二人掛けのソファーに座ってテレビをつけた


二人ともソワソワして
テレビの内容なんて全く頭に入って来なかったと思う


一瞬触れた手が ビクッとして
彼女の緊張が伝わる


こんな時は やはり
僕から彼女にモーションをかけるべきなんだろうな


映画やドラマの中の記憶をもとに
僕は横に座る彼女の肩を抱いた





ハヌルは ほんの束の間 身体を硬くしたけれど
数秒後には
僕の方に身体を倒し 寄りかかってきた


女の子って こんなに華奢だったっけ・・・





”チャンミン・・・”


「ん?」


”今日は来てくれてありがとう”


至近距離での上目遣い


恥ずかしそうな小さな声


僕は そんなハヌルの頬を
空いている手で優しく抑え
そっと唇を重ねた


”ん・・・”


暫く止まっていた2人の動き


僕はこういう戯が暫くぶりで 溜まっていたせいか
彼女の吐息と少し開いた唇に欲情した


多分 相手がハヌル以外の女性だったとしても
同じように突っ走ったと思う





だんだん深くなる口づけと
お互いの身体の熱さ


「いいの?」


”うん・・・”


そこからは あまり覚えていないけれど
いつも以上に深い口づけを交わし


お互い 服の上から身体をまさぐり
我慢できなくなると服を脱がせ合い


僕たちは そのまま


初めて身体を繋げた





僕が 人生で初めて 女性を抱いた瞬間だった


初めての割にはスムーズに行き
僕は遂に童貞を卒業した





ハヌルは涙を見せ
”ありがとう” と言った





しばらく抱き合った後
ハヌルの部屋を出て
ブラウン夫妻の待つ家に帰る


シャワーで念入りに身体を洗い
ベッドに横たわった僕は
スマホに入っている
ユノヒョンとの高校時代の制服2ショット写真を眺めては
画像の中のユノヒョンに話しかけた


「ヒョン・・・僕は これで良かったのかな?
こうして僕は ユノヒョンとの想い出から少しずつ
離れて行くのかな・・・」


「ヒョンも好きな人と身体を繋げたりしてるんだよね
きっと僕よりも もっともっと優しく
相手を思って抱いてるんだろうね」





ユノヒョンが 僕じゃない誰かを抱く光景が
脳裏に生々しく現れた


相手は ソウルで見かけたコでもない


誰だか わからない女性とヒョンが
裸で抱き合っている光景が妙に鮮明なのだ


僕は即座にスマホの電源を切り
声を押し殺して泣いた


ブラウンさんに聞こえないように
枕に顔を押し当て
一人 いつまでも泣いていた・・・





このままでは目が腫れてしまう


明日も休みで本当に良かったと思った





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 11話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





就職・・・


俺の人生の中での とても大きな出来事


転機となる就職という事実に どれだけ救われただろう


正式に就職するまでにも研修などがあり
いくら単位を取ったと言っても
卒業までには
就職の準備とバイトの予定がぎっしり


俺も結構忙しかった


けど
友達と楽しく飲んでバカ騒ぎしてられるのも今のうちとばかり
最近はドンへ以外の友達とも飲みに行く


あまりお酒に強くない俺は
少し飲んではいい気持ちになり
余計なことは考えずに良く眠れるのだから
友達の存在に助けられていることは事実だった





今日もこれから大学のゼミの仲間との飲み会だ


実家を出ようと玄関を開けると 
ぴゅーっと最近感じることのなかった風が頬を掠めた


『もう 秋も終わりか・・・』


少しだけ 冬の気配を感じた


”ユンホ 風ひくといけないから
上に羽織るものを持って行った方がいいわよ”


いつまで経っても小うるさいのは どこの母親も一緒か・・・


気にかけてもらえるうちが華だなと
苦笑いをしながらも返事はきちんとする


『そうだな 夜はもっと冷えそうだしな』





俺は自分の部屋に戻り
クローゼットから革ジャンを取り出した


バイトで貯めたお金で買った お気に入りは
去年の冬 チャンミンとデート中に見つけたもの


ふらりと入った店で目に留まった


見た目の割には値ごろ感もあり
何となく呼ばれているような気がした


薄くて柔らかく デザインもシンプル


これなら当分着られそうだなと思い
貯めたバイト代で
好きな黒を 迷いなく購入したのだ


そのまま タグを切ってもらい
着て帰ることにしたんだっけ


お気に入りの革ジャンを着て歩く街


去年は 隣りにチャンミナ
お前がいたんだよな・・・





買ったばかりの革ジャンを着て歩く街


チャンミンが
とても嬉しそうにしていたのを思い出した


「ユノヒョンは何を着ても似合うけど
その革ジャン 一番似合ってる
カッコいいよ 惚れ惚れしちゃうよ」


『チャンミナも着てみるか?』


俺の革ジャンを羽織るチャンミナは大人びて見えた


「僕も もう少しバイトして
こういうの買おうかな・・・」


少しでも俺に追いつきたかったんだろう


2歳の年の差を結構気にしていたから・・・


『そんなに気に入ったか?』


「うん でもね
ヒョンが着るからカッコいいんだと思うよ
僕はまだ あまりハードなのは似合わないかも・・・
ヒョンみたいに着こなせるようになりたいな」


『よしっ 明日 買いに行こう』


「えっ? 無理だよ
僕 まだそんなにお金持ってないし」


『俺が買ってやる
それに これはセールで安くなってたし』


「でも 僕にはとても無理だよ」


『セールで半額だったのに
チャンミンは店で値段までは見てなかったんだな
俺 チャンミンにプレゼントしたい』


「でも・・・」


渋るチャンミンだったけれど
何かカタチのあるものをプレゼントしたいという思いは
実は前から抱いていたのだ


『チャンミンが沢山バイトできるようになったら
俺に何か買ってよ
だから明日は俺が買う』


そう言うと 納得したようで


「じゃあ 明日はデートだね」


心から嬉しそうに笑ったチャンミナの笑顔を
俺は忘れることなど 到底できない





翌日 チャンミナを連れて行った店には
同じものがもうなくなっていて
がっかりと肩を落とすチャンミナが可哀相になった


店の人に 他店にないか探してくれるよう掛け合った


すると 


”これ 色違いじゃないですか?
こげ茶色ですけど こんな色は お好きではないですか?”


店の奥から商品を持ってきてくれたのは
店のバイト君


”色が違うと同じものには見えなくて
見つけられないことがあるんですよ”


チャンミナが がっかりしているんじゃないかと
恐る恐る顔を見ると
俺の予想に反して嬉しそうに声をあげた


「わぁ これいい」


”ご試着なさいますか?”


「はい お願いします
ユノヒョン 着てみるね」


『ああ 見てるよ』


「どう? こんな色 欲しかったんだよ」


小顔でスタイルも良く
甘いマスクのチャンミナには
真っ黒の俺の革ジャンよりも
ダークブラウンの方が似合っていると思う


痛く気に入ったチャンミナが
そうっと値段を確認していたのを見つけ
声をかけた


『チャンミナ 大丈夫だよ』


チャンミナが喜んでくれるのなら
ドンへと旅行に行けなくたって
ちっとも惜しくなんかなかった





お前は この革ジャン
アメリカに持っていってるのかな?





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 10話

黒い瞳 四幕 1~





C side





ハヌルからの告白で 
僕たちは つきあうことになったけれど
二人の関係は 今までと何ら変わりはなかった


学校で会い 一緒に授業を受け ランチを取る


授業が終われば一緒に歩いてバス停まで


そして また明日の約束をして
それぞれの家に帰って行く


そんな変わり映えのしない毎日だった


僕は特にハヌルにドキドキすることもなかったし
朝起きて すぐに会いたいと思うわけでもなかった


そして 


彼女が欲しいとも思わなかったのだ





そう 僕たちには特に何の進展もなかったのだ


気づけば秋も深まり
肌寒い季節から薄いコートが必須の季節になった


カリフォルニアとはいえ
少し内陸に入ったこの地は海沿いに比べると
少し気温が低いのだそうだ


Tシャツに短パンだった僕も
長いチノパンにネルのシャツを着て
ニットを羽織ったり 薄いブルゾンを持って行くようになった


ハヌルはと言えば
ノースリーブのワンピースばかり着ていたのが
最近は薄いニットにシックな色合いのスカートを履き
少しばかり女性らしい感じになっていた


そんな僕たちはデートらしいデートもせず
休みの日は
ブラウンさんと出かけることもあるのを理由に
僕は勉強に専念した


恋人同士らしい雰囲気は全くといっていいほどなく
そんな関係をハヌルが寂しく思っていたなんて
思いもしなかった


だって 僕には 男女の機微はわからない


女のコとつきあった経験は ただの一度もないのだから・・・





大学からの帰り道 たまに
強請られてキスをするくらいだった僕たちだけど


その日は 前触れもなくやって来た


夕方のキャンパス内を いつものように
お喋りをしながらバス停までの道を
一緒に歩いていた


”ねえ チャンミン・・・
明日はお休みでしょ?
うちに来ない?”


「ハヌルの家?」


”うん ルームメイトがね 
この週末は オハイオ州の自宅に帰るんだって
だから 私一人なの・・・”


彼女は アメリカ人の同級生とルームシェア中だ


少し 恥ずかしそうに俯いて
僕を誘った彼女の真意を
その次の言葉で僕はようやく理解した


”恋人同士なんだから
2人きりになりたいって思うことがあっても
おかしくないでしょ?”


「・・・」


”チャンミンと2人だけで部屋で過ごしたいの”


「ハヌル・・・」


彼女が僕との関係に進展を求めていることが
その時 はっきりとわかった


女のコに そこまで言わせて
僕は 確かに今まで 
恋人らしいことなんて何一つしてこなかったなって 
ちょっとだけ申し訳ない気持ちになった





”ダメ? またブラウンさん?”


「いや 違うよ・・・」


不安そうに 目をキョロキョロさせる彼女がいじらしく思えた


ハヌルに不満はない


明るくて 僕を気遣ってくれる優しいコだ


僕は このままでは良くないと思い
ハヌルとの関係を少し深くしてもいい時期に来ているのかもしれないと
彼女を見て思った


それは 僕自身が前に進むためでもあった


「行くよ 明日」


”チャンミン・・・”


「ハヌルの部屋 見るのも初めてだし」


”ありがとう 嬉しい”


ぎゅうっと抱きついてきて


”お昼ご飯 用意するね
私ね こう見えてもお料理は得意なほうなの
チャンミンは辛いものがいいよね?”


ホッとしたような表情を浮かべたと思ったら
とても嬉しそうにはしゃぎだす


ああ 僕は彼女に寂しい思いをさせていたんだな・・・





「マズかったら 来週のランチはハヌルの驕りね」


”えーっ? そんなぁ
わざと不味いとか言わないでよ~?”


嬉しそうに微笑むハヌルを抱きしめ返し
軽いキスを落とした





丁度 到着したバスに
僕たちは手を繋いで乗りこんだ


繋いだ手は温かく 小さかった





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 9話

黒い瞳 四幕 1~





Y side





ひっきりなしに声をかけられ
写真を強請られる日々


いい加減 辟易として
就職が決まった身としては
早く大学というところから離れたかった





幸い 成績もまあまあだったし
論文も早めに教授に提出してあったから


冬の訪れを感じる頃には
大学に行くことも殆どなくなった





そして
俺は入学以来ずっと住んでいたあの部屋を


かの人との想い出が
たくさん詰まったあの部屋を引き払った





今でも チャンミンのことを想うと 
胸がぎゅうっと締め付けられる


それでも 自分で決めたことだ


前を向くと決めたのだから
俺は 頑張らなければと
自分に言い聞かせた





高校の制服を着て一緒に撮った写真


まともに2人で写るのは この1枚くらいなもの


これだけは自分の人生の一時期の想い出にしようと
取っておくつもりだ


机の引きだしに そっとしまってある


これだけが チャンミン お前との唯一の想い出





北風が吹きだす頃
俺は就職先の研修やら準備で忙しくなってきた


最後の最後まで 論文に追われたドンへとは
なかなか会えず


一緒に旅行でもしようというプランは お預けとなった


”悪いな ユノ そのうち飲もうぜ”


『おう 旅行も忘れんなよ』


”就職してさ 金が入るようになったら どっか行こうぜ”


『お前次第だな』





久しぶりに戻った実家


俺の部屋は高校時代と変わらない


ただ パッと見は同じでも
俺には 決定的に違うものがあった


ベッドだ





下宿中に壊れたことにして
新しいベッドに買い替えたのは俺の勝手


バイトで貯めた金は
ドンへと行く旅行に使う予定だったけれど


アホなドンへのせいで行けなくなったから
思い切ってベッドを買った


俺の実家の部屋に入るものだから
普通のシングルベッドなんだけど


チャンミンとのコトを
どうしても思い出してしまうあのベッドを
捨てたかったんだ





”あら 綺麗に収まったわね・・・
シンプルな黒いベッドは 少し大人っぽくなった感じがするわ
ユンホもついに社会人になるのね~
ちゃんとやっていけるかしら?”


『失礼だな・・・
せっかくいい会社に入れたっていうのに
息子にもっと優しい言葉をかけられないのかよ』


”あら? 大人っぽくなったって褒めてるんじゃない
あとは精神的に もう少し落ち着くと尚いいわね”


『なんだよ・・・』


相変らずだ


実家ってのは楽な反面
少し小うるさいのが玉にキズ・・・


きっと これからも
家族とは喧嘩をしたり 文句を言ったりし合うんだろう


でも 母さん 感謝してるよ・・・





部屋を出て行った母さんが
くるっと振り向いて戻ってきた


”そうそう そう言えば・・・
チャンミン君 アメリカで楽しくやってるみたいね”


『そ・・・そう・・・』


”連絡 取ってないの?”


『ああ 忙しいみたいでさ アイツ・・・』


”ふーん あの子はハンサムだし利発だし
きっとアメリカでも ちゃんと英語をモノにして帰ってくるわね”


『そうだな』


”あなたと同じ会社に就職とかだったりして・・・”


『それはないだろ・・・』


俺たちの事情を知らない母さんは呑気極まりない・・・


もういい加減出てってくれよ・・・


”彼女ができたらしいわよ?


『えっ? チャンミナに?』


”そんな食いつかなくても・・・
やっぱり あなたたち連絡取ってないのね”


『だから忙しいんだって お互いに
母さんこそ そんな嘘かホントかわかりもしない話 
誰に聞いたんだよ?』


”ドンへ君に決まってるじゃない
先週駅前で ばったり会ったのよ”


『ちっ ドンへの奴 俺には言わないくせに・・・』


”ユンホも モテるからって えり好みしてると
いつまで経っても彼女 できないわよ”


『っるせー』


母さんは 一人 楽しそうに鼻歌を歌いながら
部屋を出て行った





彼女?


チャンミナに女ができた?


どうせドンへもキュヒョンにでも聞いたんだろう


チャンミナ・・・


お前・・・


遂に俺を忘れたんだな・・・


一歩前に進んだんだな・・・





チャンミナが可愛い女のコに
優しく微笑みかける姿が思い浮かび


胸の奥が チクンと痛んでも
俺には それを問いただす資格はない





チャンミナ 


チャンミナの人生はチャンミナが決めるんだ


日の当たる道を当たり前の顔をして
堂々と歩くんだ


それが俺の願い





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黒い瞳が邪魔をする 第四幕 8話

j黒い瞳 四幕 1~





C side





”ねぇ チャンミンの夢は何?”


「僕は建築家
父が建築士でね その後を継ぎたいと思ってるんだ
ハヌルは?」


”んー 私はね  英語の先生
韓国に戻って英語教室を開きたいの
近所の子供たち相手に”


「そっか 立派な夢だね」


”チャンミンも
私の実家 ボロいのよ・・・
チャンミンに建ててもらおうかしら?”


「ははは 僕が建てるなんて いつになるかわからないよ」


”チャンミンが設計した家 素敵だろうな”


「子供たちに英語を教えてるハヌルの様子も想像できるよ
きっといい先生になる・・・」


”もうっ そんなこと言って・・・
自宅で教えていたら いずれ自分が母親になっても
ずーっと できる仕事なんじゃないかな?って
そう思ってるの”


「そこまで考えてるんだ
やっぱりハヌルは立派だよ」





暦の上ではすっかり秋だというのに
僕たちを包む風は まだ暖かく日差しも強い


カラっとして 気持ちのいい秋晴れが続いていた





自由の地
アメリカに留学している国際色豊かな学生たち


10年後は 皆どうなっているのだろうか・・・?


それぞれの故郷に帰って夢を叶える者


諦める者 


アメリカに残って仕事を見つける者


きっと それぞれの心の中に ここアメリカでの生活が
良い想い出として残っているんだろうな・・・


僕は無事に父の建築事務所で仕事をしているだろうか・・・





何処までも高い空を見上げ そんなことを考える


ふと視線を感じて 隣りを見れば
ハヌルが優しい顔で僕を見ていた





”チャンミン 私とつきあわない?”


予想外の言葉だった


「・・・僕が ハヌルと・・・?」


”うん きっとね 私たち 合うと思うの”


「・・・」


突然の申し出に僕は返事ができなかった





固まってしまった僕に 焦ったハヌルが気を遣う


”ごめん 驚いたよね
私ったら一方的に ホントごめん・・・”


見れば ハヌルが赤くなっている


僕のこと好きなの?


”あ もしかして韓国に・・・
チャンミンはソウルだったよね?
ソウルに彼女を残してきたとか?”


彼女・・・ではないけど 


大切な人はソウルにいる


いや 大切だった人


ううん 僕一人だけが大切に思っている人だ


涙ぐみそうになるのを阻止するように 
僕はハヌルの顔をしっかりと見据えた


「彼女なんて いないよ」


”ほんと?”


「ほんとだよ」


”じゃ 別れて来た・・・とか?!”


「そんなんじゃ ないよ・・・」


”怪しいなぁ なんかそんな感じするんだけどな~
チャンミン たまにボーッと一人で遠くを見てるでしょ?”


「・・・」


”私 いつもあなたを見てるから 知ってるの・・・”


「・・・」


”きっと 大切な人を想ってるなって
でも とても寂しそうで・・・
声 かけられない感じよ”


「僕が寂しそう?」


”うん とても”


「そっか 根暗だからかな?
ひとりが好きだし ゲームオタクだし・・・ははは」


”チャンミン・・・
別れて来たんでしょ?
私では その人の代わりにはなれないかな?”


「・・・」


”あなたが好き”


「ハヌル・・・」


”大好きなの チャンミン”


「・・・」


歩きながら話をしていた僕らだけど


ハヌルの思いがけない告白に
大きな木の下で立ち止まった





ふわりと抱きついてきたハヌル


”ぎゅっとして?”


このまま突き放すのは可哀相な気がして
僕はハヌルを抱きしめた





”少しずつでいいの 私を見てくれたら・・・”


「・・・」


”好きなの あなたの恋人になりたい”


「ハヌル・・・僕は・・・」


”忘れたいんでしょ? 今までの恋・・・”


「・・・」


”私 頑張るから・・・”





そうだ 


忘れたいんじゃなくて 


忘れなくちゃいけないんだ


ユノヒョンは
とっくに僕から離れて行ったのだから・・・





いつまでも
1人ウジウジしているわけにはいかないし
自分を変えたかった 


ハヌルとなら
楽しい毎日が送れるんじゃないかと


男女の恋人同士に なれるんじゃないかと
そんな気が してきた





「わかった・・・
僕たち 始めてみようか?」


”・・・”


「・・・」


”い・・・いの?”


思わず目を見開いたハヌルが僕を見上げた


みるみるうちに溢れる涙をぬぐいもせず


”ありがとう チャンミン”


僕の胸の中で彼女は声を上げて泣いた





ユノヒョン・・・これでいいんだよね


僕は これでいいんだよね





風が優しく吹くばかりで
ユノヒョンからの返事は聞こえてこなかった





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