癒しの T-Garden 赤い海の旅人

赤い華 62

赤い華51〜





ユノさんは
ツアーの成功を祝って
打ち上げ旅行で沖縄に行った


サラが言っていた通り
必ずツアーの後には
打ち上げを盛大に行うらしい


『チャンミン 
明日から沖縄へ行ってくる
帰ったら連絡するから 
またデートしような』


そんなメッセージを残して
南の空へ飛んで行った


何度も そのメッセージを見返しては
頬が緩む


俺からの返信は


「行ってらっしゃい
沖縄いいですね
俺も行きたい」


『来れば?』


速攻で来る返信


行けるわけないじゃないか?
仕事してんの 俺は


そんな呑気なユノさんからの返信も 
実は嬉しかったりする自分


完全にアウトだ


もう もったいつけてる場合じゃないよな?


どうやって返事をしよう?


答えは決まっているのだけど
その伝え方が わからない・・・





ユノさんが東京にいないことで
少しホッとする日々


ゆっくりと色々なことを考えられるからだ





ユノさんは 
新曲のPVも併せて撮影するらしく
沖縄の滞在は1週間くらいにはなるということだった


その間に身の回りを綺麗にしなくてはと思い
まだ直接話をしていなかった ミナ アヤ モモの3人と
順番に食事をした


ユノさんのことは口には出さなかったけれど
医師と看護師という元の立場に戻りたい 
という俺のことを
全員が了承してくれた


皆 薄々気づいていたような感じだったのは
少々決まり悪かったけれど
もしかしたら看護師全員で話でもしたのかもしれないなと
思うことにした


誰1人として
泣いたり引き留めたりする者はなく
驚くほど物分かりも良く
あっさりと言うことを聞いてくれたからだ


皆に責任を感じて悩んでいたのは俺だけか?


プレイボーイとして
最初から誰とも本気でつきあうつもりはないことを
公言していたおかげで
縺れることなく綺麗に終わることができたのは


“たくさんの女とつきあえ“ と
俺にけしかけた伯父の入れ知恵による成果だと思う





今までの感謝として
1人1人にプレゼントをすることも忘れずに遂行


話も もちろん誠実にしたつもりだったが
結果としては アヤだけがクリニックを辞めることになった


”チャンミン先生みたいに素敵な人 いないと思います
今は 新しい恋人なんて見つかる気がしません
やっぱり 好きだったみたい
毎日顔を会わせるのは ちょっぴり辛いです・・・”


そんな風に言われて
少しだけ申し訳ない気持ちになる


女性に本気になれない俺みたいな男を
褒めてくれるだけで十分だ


いい娘だったな・・・





新しい看護師が決まるまでは 
何とか4人で回してもらうしかなく


その代わりに
ユノさんとの食事をセッティングするハメになった


身から出た錆ってヤツだ





5人と正式に別れた俺は
晴れて独り身となった翌日から
仕事のあとの予定が全くなくなった


何の予定もない日なんて
今までは考えたこともなかったから
暇だ・・・


今夜は
誰もいないクリニックで
一夜を過ごしてみようか・・・


白衣を脱いで手を洗い
スマホを手に取ると
ユノさんから沖縄の写真が送られて来ていた





綺麗な海・・・


揺れる赤い小さな花・・・


青くて高い空・・・


目を閉じると
潮の香りが鼻先を掠めたような気がした





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くせ 92

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『チャンミン!』

「ユノ・・・」

周りが ザワザワしている

『見てくれた? 俺の応援』

「うん 見たよ」

『どうだった? 良かった?』

「凄くカッコ良かったよ」

『だろ?』

ユノが嬉しそうに笑う

強い日差しの下で微笑むユノは
とても綺麗だ





”あっ ユノの親戚のお兄さん?”

『そうそう カッコいいだろ?』

”ホントだ 女子たちが言ってた通りだ”

『チャンミン 一緒に応援団やってる イエソン』

「こんにちは 応援カッコ良かったよ」

”ありがとうございます”

僕たちの会話を聞いていた周りの保護者たちも
なぁ~んだ関係者だったのかといった感じで
明らかに ホッとしていることがわかる

ユノは救世主だよ・・・

僕は怪しい者として通報されるところだったんだから・・・





「ところでユノ ここに来てて大丈夫なの?」

『うん 少し出番まで間が開くんだ』

「そっか 最後のリレーまで全部見るからね」

『うん たくさん写真撮ってよ?』

「任せとけ」

僕は ワザと大きな声で

「たくさん 写真撮るからね」 と言った

偶然とはいえ ユノのおかげで
助かったよ

その後は 僕も堂々と写真を撮り続けることができた

お天気にも恵まれ
写真の枚数は膨大になった



ユノは昼休憩か終わった後も
イエソン君と一緒に顔を出してくれた

そのおかげで僕は
朝とは別世界のように居心地が良くなった

その後も
"あれがユノくんのお兄さん" とか
"わっ カッコいい" などの声が聞こえたりして

怪しまれはしなくなったけど
注目されていることには違いないと
苦笑いをしたのだった





💖 💖 💖 💖 💖

短いですが更新しました
また明日〜



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赤い華 61

赤い華51〜





ユノさんと2人でご飯を食べた日


そして キスされた日


思わず帰り道でユノさんを抱きしめてしまった





夜で 周りに人がいなかったとはいえ
大胆なことをしてしまったなという
ちょっと照れくさい思いで
ユノさんとのこれからを考えた





シャワーを浴び
1人 ワインを飲みながら
ユノさんを抱きしめたときの感触を思い出す


自分よりも肉厚で柔らかいあの身体に
もっと触れたい・・・


もっと ちゃんとキスをしたい


いつか 見てしまったユノさんの上半身


白くて赤い柔肌が 
目の前に幻影のごとく浮かび上がる


ああ・・・


俺 やっぱりオカシイな・・・





話が したい


声が 聞きたい


顔が 見たい


けど 何よりも


あなたに触れたい・・・


あの白い肌に口づけたら
どんな感触なんだろう?


ユノさんは嫌がらないだろうか?


年上なのに可愛い人


ユノさんを抱いてみたい・・・





俺が強くキスをしたら
どんな反応をする?





お気に入りのワインが1本空いた


いつもよりペースが速いのは
さっき飲み足りなかったせい


もう1本 開けようと立ちあがったとき 
さして物のない殺風景な部屋なのに
TVの脇においてある
Bru-ray が やけにはっきりと目に入った


それは 衝動的に買ってしまったユノさんの・・・





もう1本 ワインを開けて
観てみようか・・・





練習生だったころから ちっとも変っていない


あの美しいダンスに酔ってみようか・・・


ワインとチーズとユノさんは
真夜中の至福のひとときだ





今まで付き合った女の誰一人として
夜中に恋しく思うなんてこと 
そういえば なかった


かと言って
男で好きになった奴もいない・・・


ユノさんが初めてだ


こんなに会いたくなるのは
好きだってこと・・・


ユノさんに恋しちゃってるってこと


そういうことなんだ・・・





14歳の時に見た あのユノさん


そして 俺をずっと覚えていたユノさん


赤い糸で繋がっていると思えるのは
決して錯覚なんかじゃない





好きなんだ 


あの人が・・・


だから 思うだけで・・・こんな


その夜 ユノさんを想いながら
2回も自分を慰め
こってりとしたものを吐き出した





ベッドに入るとき
ここで お互いを確かめ合う日も
そう 遠くはないような気がした


返事をしよう





そして


素直に気持ちを伝えよう


僕は優しく笑って話せるだろうか?





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赤い華 60

赤い華51〜





ユノさん・・・


今 何を・・・?


突然のことで 笑えないどころか
固まって 動けない・・・





今 俺の唇にキスした?


よね・・・?


俺 男からキスされたことなんて ないんだけど・・・


この人といると
何かと初体験が多くて戸惑う





当の本人は何食わぬ顔で
にこにこしている


しかも テーブルに肘をついて
両手を自分の頬に当てて
顔を斜めにして微笑むとか


女か・・・?





ステージ上のドヤ顔と力強いダンス


目の前の可愛いアーモンドアイ


到底 同じ人物とは思えないギャップに
マジで面食らう


何なんだ?





「ここが何処だか わかってるんですか?」


やっとのことで絞り出した声


『ごめん 驚いたよな・・・
俺も 堪え性がないな
チャンミンの動く口を見ていたら・・・つい』


「そういう問題じゃなくて
こんな人の集まるところで あんなこと するなんて
もう少し考えてくださいよ」


本当は そんなことを言いたいのではない


”キス” という行為に驚いている


平静を装ってはみるものの
俺の胸は音がしそうなくらい


バクバクと大きく動いている





『ごめんごめん 
この席は死角になるかと思って・・・
返事は待つとか言っておきながら
あんな急に ごめん』


本当に この人は・・・





店は今日もそこそこ混んでいて
常連さんぽいグループで ほぼ満席


それぞれのテーブルから響く大きな声


まあ 他のテーブルを気にしている人は 
幸い いないようだけど・・・





「ユノさんは おやつを我慢できない子供みたいですね」


『あははは よく言われる』


それからというもの
運ばれてきた料理も あまり喉を通らず
普段食欲旺盛の俺が あまり食べないことに
おばちゃんが心配する始末


「きっと すきっ腹に飲んだから 
変にお腹が膨れたのかも
また 来ます」


おばちゃんに挨拶をしながら
ユノさんをチラッと見る


自分が遅れて来たことを申し訳ないと思っているのか


突然キスしたことを申し訳ないと思っているのか


わからないけれど シュンとしている


別にいじめてるわけじゃないんだけどな・・・


それでも 店を出る時には


『また 必ず来ます』 とか言ってるし


来る気満々だな・・・





綺麗な月夜


今日も爽やかな夜風が
火照った頬を音もなく すり抜けて行く





そして 俺たちは
何となく よそよそしく少し離れて歩く


今日も この通りは人影もなく
店の中の賑わいが嘘のように静かだった





大通りへ曲がるまでの間
殆ど話さずに時間をかけて 
ゆっくりと歩いた


まるで時間を稼ぐように
お互いの様子を視線の端で
追うようにして


どちらかが声を出すのを待っている


そんな空気だった





もう少しで大通り


この間 ユノさんに抱きしめられた場所


俺が 突然 足を止めたから
ユノさんは数歩先


その後ろ姿をめがけて近づいて行く


ユノさんが気づいて振り返りそうになったとき
俺は後ろから 
ユノさんを抱きしめた


一瞬 何が起きたのかわからないといった感じで
ユノさんが固まる


今度は あなたが固まる番


動こうとした人に


「振り向かないで・・・」


耳の後ろで声をかけた


『チャ・・・チャンミン・・・?』


「振り向かないでください・・・」


再度 言う


だって 


ここで振り向かれたら


今度は 俺が我慢できないから・・・





「ユノさん さっきは あんなに驚いてごめんなさい
あまりに突然で・・・
でも 嬉しかったです」


『チャンミ・・・ン』


「返事は もう少し待ってもらえますか?
あと 数日だけ・・・
待ってください」

『・・・』


ユノさんは抱きしめている俺の手の上に
自分の手を重ねて
無言で強く握った





俺は
更に強くユノさんを抱きしめて
自分のおでこをユノさんの後頭部に押しつけて
目を閉じた





必ず返事をするから・・・


いい返事をするから・・・


あと 少し 心の準備に時間が欲しいんです


あなたの ”本気” に向き合えるように・・・





そのままの態勢で ユノさんは言った


『待つよ・・・今度は ちゃんと待つ
だから もし いい返事をくれるなら
そのときは 俺に笑顔を見せて?』


ユノさんには 
冷たい態度しか取ってこなかった俺


無言でコクリと頷いた


『大好きなんだ 
チャンミンの笑った顔
必ず見せてくれると信じてるから』


「ありがとうございます」


そっと身体を離すと
すーっと身体をなでる風が
少し涼しく感じた





💛 💛 💛 💛 💛 💛 💛 💛 💛 💛

昨夜は中秋の名月と満月が重なりました
8年ぶりだそうですね♪
とっても綺麗なお月様を見ることができましたよ
仕事帰りには 低く大きな真っ黄色の月が
夜は高く白いまん丸の月となり輝いて
川面をキラキラと照らしていました
なんだか穏やかな気持ちになりました



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赤い華 59

赤い華51〜





~ by Yunho ~


少し酔っているチャンミンが
去っていくおばちゃんを
ちらっと不思議そうに眺め 席に着いた





「俺の悪口でも言っていたんですか?」


『あ~あ また可愛くないこと言って…』


盛大に溜息をついた


『悪口なんて言うわけないだろ?
どうして そう捻くれたことばかり言うのかなあ?』


「じゃあ何を喋ってたんです?
まさか口説かれてた?」


『えーっ? 俺が? おばさんに?
あはははー それなら嬉しいんだけどな
残念だけど口説き方を教わってたって
言う方が正しいかな?』


「はっ?」


『チャンミンのな?』


大きな目を見開いて
また驚くチャンミン


そんな顔も魅力的なんだな





わかったか?
とでも言わんばかりにドヤってみせる


全く・・・すぐ 捻くれるんだから・・・


マッコリをグイッと飲み干して
お代わりを注ぐチャンミン


この男を笑わせるには
どうしたらいいんだろう?


正確には
俺に笑顔を向けさせるってことなんだけど・・・





『チャンミン 俺さ
駆け引きとか苦手で・・・
それに せっかちなとこもあってさ
人間が単純なの』


「そのようですね・・・」


『ねぇ 好きな人を振り向かせるには
どうしたらいいの?
チャンミンなら わかるだろ?
たくさん恋人いるんだし』


「たくさん恋人?!
人聞きの悪いこと言わないでくださいよ」


『だって本当のことだろ?
サラさんにリオさんにミナさんに…』


「ストーップ 違いますよ
恋人じゃありません
お付き合いしている女性ということです」


手のひらを俺に向けて 
しきりに恋人ではないと言い張る


毎週会って いいことしてたら
それ恋人って言うんじゃないのか?!


それとも ただの何とかフレンドって言いたいのか?


『俺にはチャンミンは恋人が5人いるように見えるよ?』


「それは・・・違います
それに もう今は3人です」


下を向いてボソっと言うけど
対して変わんねーじゃん





『もしかして 俺が原因?』


また うぬぼれないでくださいよ?とか
言われるかと思ったのに
しばらくの沈黙のあと


「そうですよ」 と言った





『えっ? マジ?
それって・・・
俺 喜んでいいの?』


「本当のことです」


『おっしゃーっ!』


俄然 やる気!!!


「ユノさんが変なこと言うから・・・」


チャンミン


お前がどんなに捻くれていようとも
素直じゃなくても
女たらしだったとしても
全く気にならないよ


だって


俺のこと好きだろ?





まっすぐに見つめれば


目を逸らす愛しい人


戸惑いも 


驚きも


迷いも


全て俺に繋がっているといいな なんて・・・


今の俺は 
チャンミンの全てを受け止める覚悟がある


だから素直になってほしいんだ


どんなことも受け入れるから
俺を受け入れてほしい





何度でも言うよ?


『チャンミン
俺 やっぱ お前が好き
練習生だったあの頃から
ずっと好きだったみたい』


「ユノさん
彼女 いないんですか?」


『誰にも心が動かなかった
付き合った子も何人かいるし
その・・・そういうこともしたけど
今 抱えてる感情とは ほど遠かった』


「・・・」


『ねぇ チャンミン先生?
シム・チャンミンは俺に堕ちてくれるかな?』


チラッと俺を見て
探るような視線を浴びせるくせに
目を伏せると その長い睫毛が 
ふるふると震えている





「俺は 女が好きだったはずなのに・・・」


ぼそっと下を向いて呟く


きまり悪そうに目の前のキムチを口に放り込む


それって
俺 やっぱ喜んでいいんだよな?





向かい合うテーブル


俺は身を乗り出して


キムチで もぐもぐしているチャンミンの口に


チュッと軽いキスをした





大きく見開いた目


箸を置いて


瞬きを数回


大きな目を更にそんなに大きくしなくても・・・





『チャンミン 
俺と 本気の恋愛してみない?』





こんな驚くことは人生の中でも 
そうそうないんじゃないかというくらい
チャンミンは驚いたようで
固まったまま無言で動かなかった





大好きなチャンミンとの
初めてのキスは
キムチの味がした





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くせ 91

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競技の合間合間に入る
応援団の応援演舞

ユノは 長い赤い八巻を頭に巻き
大きな声を張り上げて長い手を動かす

動きと風に煽られて
赤い八巻が背で揺れる

あれは初めて見るから
ずっと学校に置きっぱなしだったものだろうな

かなりの長さ
きっと1m以上あるんじゃないだろうか



僕は1人だから
自由に動いて見ることができる上
せが高いから

動いた場所で前に人がいても
カメラを構えるには不都合はなかった

それに
応援に来ている父兄といえば
ほぼ95%がお母さん達だった

「小学校の運動会とは随分違うんだな」

毎年思ったことだけど
改めて感じたことだった

お父さんと思われる人は少なくて
殆どが いわゆるママ友同士で見に来ている感じだった

僕は ユノが良く見える位置でカメラを構えた

強い日差しに照らされて
ユノがキラキラしている

本当に眩しいくらいに
輝いている

ユノ・・・カッコいいよ

体操着から伸びるスラリとした足は
長くて綺麗だ

笑った時に見える白い歯も
優しそうな瞳も
僕の欲目かもしれないけれど
周りのどの子よりも
一際 光って見えた

夢中でシャッターを切る

ユノの晴れ舞台だ

僕は 周りのことが目に入らないくらい
ユノに夢中だった



“写真は後日 販売があるって聞いたわよ“

“そうなの? あ あの人 プロの人かもしれないわね
じゃあ 無理に撮らなくても大丈夫ね“

“動画だけ 撮ればいいんじゃない?“

“でも 腕章とかしてないけど“

応援が終わってカメラを下ろした時
後ろで何やら お母さん同士の会話が聞こえた

“あれっ? やっぱり違うんじゃない?“

“でも 父兄って感じでもないけど“

「・・・?」

もしかして 僕のこと?

学校が依頼したプロのカメラマンと間違われてる?

1人で夢中でシャッターを切る
父兄のなかでは かなり若い男は
確かに異質かもしれない・・・

居心地が悪くなって
場所を移ろうとした時
また囁きが聞こえた

“ここ 誰でも入れちゃうわよね“

“うん 一般の競技場だしね“

ん?

“長い望遠レンズでJKの写真撮って
売り捌いてる人もいるって聞いたことあるわ“

“うん ちょっと怪しいかも“

“保護者にしちゃ若過ぎるもの“



ちょっと待てよ?

もしかして
JK狙いの盗撮と間違われれてる?

かなり怪しまれてるだろうことは
僕に聞こえるように話していることからもわかる

やや それはヤバい・・・
かなりヤバい
僕 保護者なんですけど・・・

息子であるユノを撮りたいだけなのに
この状況は かなりマズいのではないだろうか・・・



いたたまれなくなって
動くに動けない

後ろを振り返るにも
かなり勇気がいる

この状況 どうしたらいいんだろう・・・

父兄の知り合いなんて1人もいない僕は
固まったまま
どうしようかと焦っていた



ずっと此処に立っているわけにもいかず
移動するために
目を瞑って振り向こうとした時

『チャンミン!』

僕が決して聞き間違えるはずのない
大好きな声が聞こえた





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赤い華 58

赤い華51〜





~ おばちゃんの話 by Yunho ~


チャンミンて本当によく食べるな


見ていて気持ちがいい


そして 可愛くて美しい・・・





初めてクリニックで見た彼の姿は
昔のそれとは全く違っていて


すぐには わからなかったけれど


隙を見せない できる男の裏側にある
ほんの少しの寂しさを 何故か感じ取って
チャンミンを知りたいと思ったんだ


接するうちに どこか感じる懐かしさに 
同じ事務所の練習生だったことが わかったときは
”赤い糸” と感じて・・・


チャンミンが中学生だった あの頃から
俺はチャンミンが好きだったんだと
はっきりとわかった


ここで やっと見つけた美しい君を
手放すわけには いかない


絶対に・・・





チャンミンがトイレに立ったとき
店のおばちゃんが席に来た


”ユノくん ちょっといい?
あなた歌手なんだってね・・・
私は疎いから よく知らなかったんだけど
この間 チャンミンから聞いたの
もしかして あの子が練習生だったこととか
知ってるの?”


やはり この人は
チャンミンとは相当親しいようだ


『あ はい この間 わかったんです
実は 同じ事務所にいて・・・
練習生時代に お互い顔を合わせていたんです』


”そう・・・
あの子ね 高校生になるときに
日本にいる伯父のところに来たんだけど
最初は全く話さなくて・・・
それはそれは暗い子だったの
でもね 何度か伯父さんと来るうちに
色々と話してくれるようになってね・・・
初対面の人には不愛想で 
ちょっとぶっきらぼうなところがあるけれど
本当は とっても優しくて いい子なのよ”


おばちゃんが突然 チャンミンのことを話し出して
俺に 何か言いたいことがあるんだろうなと思って静かに聞いていた


”頭も良くてね 
伯父さん夫婦とも本当の親子みたいに仲良くやってて
私も息子みたいに思えてきて可愛がるようになったの
だから アメリカに行っちゃったときは本当に寂しかったわ
また こうして戻ってきてくれて
近くで立派なお医者さんになって・・・”


ちょっと泣きそうになったおばさんを見て


『ちょっ・・・だ 大丈夫ですか?』


他人の子なのに こんなに親身になれるなんて
チャンミンとおばさんとの歴史を感じて


きっと この人は 
俺の知らないチャンミンをたくさん知っている・・・


少し 嫉妬したのも事実





”あの子 プレイボーイだけど
本当に好きな人がいないだけ・・・
早く いい人に巡り合えたらなあって願ってるの”


なんだろう・・・


この胸の痛みは・・・





やっぱり 早くいい女性を見つけて結婚してほしいとか思ってる?


まあ 普通は そう考えるよな・・・





少し下を向いて 黙り込んだ俺に
おばさんが言った


”あなた チャンミンの全てを抱える覚悟は ある?”


真剣な眼差しで俺をじっと見るおばさんは
心底チャンミンが可愛いのだろう


本気で心配していることが ひしひしと伝わってきた





『どういう 意味ですか・・・?』


俺も 真剣に聞く


”あの子のこと 好きなんでしょう?”


参った・・・


バレてる・・・


『・・・ええ ずっと好きだった人に ようやく会えたんです
チャンミンの気持ちは まだ わからないんですけど・・・』


”早くいい女の子でも見つけて
幸せになってほしいと思ってたけど・・・”


やっぱり そうか・・・


何も 答えようが ない・・・


世間じゃ そう考えるのが普通





そのとき トイレから出て 
こちらに歩いてくるチャンミンが目に入った





”あの子には結婚するつもりも当分なさそうだから
まあ 頑張ってみなさい
ユノくんのこと私も応援させてもらうわ”


チャンミンが出て来たことで
話が中途半端に なってしまったことが残念で
今度 一人で この店を訪ねてみようと思った


まだまだ 知りたいことがいっぱいあるんだ


高校時代のチャンミンのこととか
何で日本に来たのかとか・・・





僕は慌てて


『また 教えてください』


おばちゃんに お願いをした


にっこり笑ったおばちゃんが厨房の方へ歩いて行くのと
チャンミンが席に戻ったのはほぼ同時だった





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赤い華 57

赤い華51〜





『こんばんは』


どんよりとした後ろ向きの気持ちを
あっという間に後悔させる


自然に 俺の気を引いてしまう人が
爽やかに登場した





”いらっしゃい
さぁさ こちらへどうぞ~
もう チャンミンたら待ちくたびれてね
早く来ないかなってビールをこんなに飲んじゃったのよ?
チャンミン 愛しのイケメンの登場よ~”


「おばちゃん 誰がっ!」


話 盛り過ぎだよ


俺の反応を楽しむように
おばちゃんが厨房に入っていく


俺で 遊ぶなっていうの


『ごめんな チャンミン
待たせちゃって・・・』


嬉しそうに言うユノさんがイケメン過ぎて絶句する


ああ やっぱり好きかも・・・





『ん?チャンミン どうしたの?
そんなに待ちくたびれた?』


「おばちゃんの言うことなんて
信じないでください ウソばっかりですからっ
そんなに飲んでないし」


”はい お待たせ~
最初はビールでいいわね?
チャンミン あなたの気持ちを代弁してあげたのよ
美味しいのをたくさん作ってあげるから
ほらほら仲良く食べなさい ねっ?”


「・・・」


『チャンミン・・・』


照れくさそうに俺を見るユノさん


「遅いから待ちくたびれて飲んじゃっただけですから」


『でも 食べないで待っていてくれたんだろ?
少しは喜んでも いいのかな?』


「食べなかったわけじゃ・・・」


『だって お皿が1枚もないよ
ありがとう 待っててくれて
ホントに ごめんな?』


「いいですよ・・・飛行機が遅れたんですから
仕方ないです」


『何杯 飲んだの?
お酒 強いんだろ? なのに結構赤くなってる』


「すきっ腹に飲んだからですよ・・・
誰かさんのせいで」


『だから ごめんって・・・』


向かい合って目を合わせると
やっぱり恥ずかしい


この人と付き合うとか
会うたびに心臓が止まるんじゃないかと
心配になる・・・





”お待たせ~ はいコレ食べてみて”


キムチの盛り合わせ


全部 自家製で美味しいことはわかってる


おばちゃんの登場で少し気が逸れて
こんな時だけ助かったと思う





『おー美味そう いただきます』


”ユノくんだっけ?
チャンミンが叔父さん以外の男性とここに来るのは
初めてなの”


『えっ? そうなんですか?』


「おばちゃん いいよ
そんなこと言わなくて」


”女性しか連れてこなかったからね~
しかも とっかえひっかえ”


「おばちゃん・・・」


”いつも女の子ばっかりだから 
チャンミンには友達がいないんじゃないか? って
心配していたのよ”


「いるし」


”きっと あなたは特別なんだろうねぇ
ここに連れてくるんだから・・・
チャンミン ちょっと素直じゃないとこがあるけど
根は優しいし いい子だからね
これからも よろしくね
ずっと 仲良くしてやってね”


『はい そのつもりです』


おばちゃんは 
ムッとしている俺のことはガン無視して
にこにこと下がっていった





なんだか いつもと違うことを感じ取っていたみたいで
おばちゃんも女だから 
勘が鋭いのだと
今更ながら
このお店を選んだことを後悔した





『乾杯』


「あ はい 乾杯」


今日 何杯目かわからないビールジョッキを口に当て
美味しそうに喉に流し込むユノさんを ちらりと見た


『最初の1杯は ほんとに美味いんだよな?』


「そうですね」


『今日はチャンミンが一緒だから特別に美味い』


「ありがとうございます 
お世辞でも嬉しいですよ」


ありがちなセリフで答えてみると


『お世辞なんかじゃないこと
もういい加減わかれよ?』


「・・・」


わかってるよ・・・


わかってる・・・


あなたの気持ち届いてるし


帰国後 真っ先に俺に会いに来てくれたのだって
特別な思いがあるからだって わかってるよ・・・


「すみません・・・」


胸に じわ~っと広がる痛み


ユノさんを傷つけたり
怒らせたりしたいわけじゃない


『ほんと 可愛くない
あ これ美味いな~ 食べたかったんだよな』


何事もなかったようにキムチに箸をつけるユノさんに


「嬉しいですよ ホントは嬉しいですっ」


強い口調で言って ビールを一気飲み


「おばちゃん マッコリちょうだい いつもの」


そんな俺を見て ユノさんが 
『1歩 前進』 と呟いた





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

チャンミン先生も いい加減 素直になってきましたよ
ユノ もう2人の気持ちは同じですね♪



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くせ 90

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体育祭当日は快晴だった

ユノは 応援団長も引き受け
ここ2週間くらいは 朝も早く学校に行き
朝練をこなした

疲れているだろうに
帰宅後も 自分で決めた勉強だけは
必ずこなしてから寝た

きっと 相当疲れている





「ユノ 今日は見に行くからね
頑張って」

『俺 めっちゃ頑張るから
チャンミン 俺のこと格好良く撮ってくれよ?』

「任せて カメラのメンテナンスもバッチリだから」

『後は腕前だけか』

「さては僕の実力を知らないな?」

『楽しみにしてるよ
最後まで 見てよ?』

「もちろん そのつもりだよ」



僕は ユノの人生の最後の体育祭のために
精魂込めて 特製弁当を用意した
飲み物もいっぱい持たせ
特性弁当の中身は
ユノの好きなものばかりにした

「ちょっと荷物になっちゃうけど
最後だし 皆と食べて」

『わー すごっ 
友達の分も作ってくれたの?
アイツら 喜ぶな』

ユノのサッカー部の友達や
クラスの仲の良い友人たちは
僕の弁当を知っている

サッカーの試合にも何度も差し入れたことがあるし
学校行事で弁当持参の日には
少し多めに持たせたりしたから
よくユノからは友達が喜んだ話も聞いていた

「そんなに多くはないけどさ
ユノ一人では食べきれないくらいはあると思う
から揚げもミートボールも多めに入れておいたから
みんなで食べてよ」

『チャンミン
本当にありがとう
俺 チャンミンの作る飯が世界一美味しいと思ってるからさ
今日は 元気100倍
リレー ぜってー優勝する』

「張り切り過ぎて 怪我しないようにね」



クラスのカラーの赤い鉢巻きや着替え
弁当に水筒 応援グッズなど
ユノの荷物は多かった

『行って来まーす』

ユノは たくさんの荷物をものともせず
軽々と肩にかけて
満面の笑みで出かけて行った

さて 僕も準備するか・・・



体育祭は 学校の校庭ではなく
少し離れた 公共施設を使って行われる

校庭だけでは 保護者達まで十分に入れるスペースが取れないからだ

公共のスポーツ施設なら
トイレも綺麗だし 休憩処もあることから
保護者の間では 好評らしい

去年も一昨年も 僕はユノの雄姿を見た

今年は最後だから
ユノ本人と同じくらいに
僕も気合いが入っていた



弁当用に作った おかずたちとおにぎりで
朝食を済ませ
それでも食べきれなかったものを簡単にタッパーに詰め
出かける準備をした

水筒にカメラ
これを絶対に忘れてはいけない

事前配布の家族用プログラムを見ると
ユノは最初から最後まで
万遍なく出番がありそうだ

ユノがリレーで活躍する姿を楽しみに
少し早めに家を出た



爽やかな初夏の朝だった





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

台風の通過した地域の方
大丈夫だったでしょうか?
東京は 午後から晴れています
買い物 行こうかどうしようか迷います
ちょっと湿気が多くムシムシするので
やっぱり家で大人しくしているのがいいかな?



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赤い華 56

赤い華51〜





”これから日本に帰る
8時にあの店に直接行くから
先に行ってて”


何 勝手に決めているんだ?


俺の返事も聞かず
一方通行のラインを入れてくるユノさん


それでも
その画面を開いただけで
胸がじわ~っと温かくなる感覚


これは きっと好きな人を待つ感覚
相手が その人だからこその熱い胸の中





あと数時間


どんな顔をして会えばいいのか わからないなんて
俺は 恋愛経験がないみたいだ・・・





”勝手に決めないでください”


また 可愛くない言葉を送ってしまった


一度相手に送ったトークは消せないんじゃなかったっけ?


いや 最近は送ったメッセージを取り消す機能があったはず


オロオロしてしまう自分に また戸惑う


俺はこんなキャラじゃないのに・・・





まっすぐなユノさんには
自分も まっすぐに向き合わないと失礼だと
ここ数日考えていたこと





5分ほどしてから
”気をつけて・・・” とメッセージを送った


今夜は ユノさんの気持ちをちゃんと確かめよう


そう決めていた


看護師たちとの仲を
はっきりと清算することにした俺にとって
今日は とても大切な日になる


心を決めて
シャキッとせねばとスマホをしまい
白衣を着た





午後の診察が あと少しで始まると言う時間に
今日の当番リオが言う


”チャンミン先生 そんな怖い顔していたら
患者さんに嫌がられますよ?”


「そんな 怖い顔してた?」


”ええ 無意識に・・・
スマホの相手はユノさんですね?”


なんで そうなる?


「こらっ」


”真剣な表情してましたもの・・・
何か悩んでるんですか?”


「悩んでいるように見えた?」


いつものクセで リオを抱き寄せて
間近で右目を細めて ニヒルに笑う


俺の必殺技だ


おでこにチュッとキスを落とすと
両手で押し返されて


”説得力ないですよ?”


驚く俺に
リオが更に驚く行動に出た


”先生 目を瞑って”


俺の首に細い両腕が
巻き付いたかと思ったら


唇に柔らかい感触・・・


しっとりと吸い付くだけのキス


数秒で その感触がなくなり 
リオの唇が 離れたことを知った


リオの真意がわからず
まじまじと目を見つめる俺に注がれた言葉


”最後のキス
私は大丈夫ですよ?”


こんな優しい顔で微笑まれたことなど
なかったというくらいに
その顔には
未練も 嫉妬も 感じられず


リオが天使に見えた・・・


「リオ・・・」


”チャンミン先生 今までありがとうございます
お仕事は続けますから
これからも よろしくお願いしますね♪”


どういうことだ・・・?


まさか サラが・・・?


”そんな不思議がらないでくださいね
初めから 
本気で付き合うつもりはないって
正直に言ってくださったじゃないですか?
もう十分です
先生に好きな人が できた以上
私は きっぱりと諦めます” 


わかったような 


わからないような・・・


確かに 今まで好きな人なんて
いなかった・・・


女とは世間並みに
それなりに楽しく付き合えればいいや くらいにしか思っていなかった





ものわかりのいい女たちに囲まれて
俺はラッキーなのかもしれない


ユノさんは 飛行機が遅れ
店に到着したのは 9時を回っていた


おばちゃんは
“また あの男前が来るの? って
名前も覚えていないくせに
何故かウキウキしていた


”あまりのイケメンぶりに 名前なんて どうでもよくなって・・・”


というのが おばちゃんの都合のいい言い分


全く 俺にはちっとも興味を示さないのに・・・


ユノさんが来るまでの時間 


おばちゃんと たまに話をしながら結構飲んでいたせいか
かなり いい気分・・・


こんな時は お酒の力を借りてもいいのかな?





この間 タクシーに乗り込むときに
ユノさんが俺に向かって言った言葉


『俺 本気だから・・・』


あれから ずっと頭の中から離れない


”本気” って どういう意味?


ユノさんの ”本気”に応えるって・・・?





ユノさん 俺のこと知ったらどう思うだろう?





忌々しい過去が蘇る・・・


どうしても破れない壁


忘れられない過去


自分は汚いのではないかという 
ずっとずっと自分を苦しめてきた思い・・・


ユノさんの気持ちを確かめてどうする?


俺は どうすることもできないだろう


彼は こんな俺を受け入れられるのか・・・?


そう思ったら悲しくなった





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