赤い華 62
ユノさんは
ツアーの成功を祝って
打ち上げ旅行で沖縄に行った
サラが言っていた通り
必ずツアーの後には
打ち上げを盛大に行うらしい
『チャンミン
明日から沖縄へ行ってくる
帰ったら連絡するから
またデートしような』
そんなメッセージを残して
南の空へ飛んで行った
何度も そのメッセージを見返しては
頬が緩む
俺からの返信は
「行ってらっしゃい
沖縄いいですね
俺も行きたい」
『来れば?』
速攻で来る返信
行けるわけないじゃないか?
仕事してんの 俺は
そんな呑気なユノさんからの返信も
実は嬉しかったりする自分
完全にアウトだ
もう もったいつけてる場合じゃないよな?
どうやって返事をしよう?
答えは決まっているのだけど
その伝え方が わからない・・・
ユノさんが東京にいないことで
少しホッとする日々
ゆっくりと色々なことを考えられるからだ
ユノさんは
新曲のPVも併せて撮影するらしく
沖縄の滞在は1週間くらいにはなるということだった
その間に身の回りを綺麗にしなくてはと思い
まだ直接話をしていなかった ミナ アヤ モモの3人と
順番に食事をした
ユノさんのことは口には出さなかったけれど
医師と看護師という元の立場に戻りたい
という俺のことを
全員が了承してくれた
皆 薄々気づいていたような感じだったのは
少々決まり悪かったけれど
もしかしたら看護師全員で話でもしたのかもしれないなと
思うことにした
誰1人として
泣いたり引き留めたりする者はなく
驚くほど物分かりも良く
あっさりと言うことを聞いてくれたからだ
皆に責任を感じて悩んでいたのは俺だけか?
プレイボーイとして
最初から誰とも本気でつきあうつもりはないことを
公言していたおかげで
縺れることなく綺麗に終わることができたのは
“たくさんの女とつきあえ“ と
俺にけしかけた伯父の入れ知恵による成果だと思う
今までの感謝として
1人1人にプレゼントをすることも忘れずに遂行
話も もちろん誠実にしたつもりだったが
結果としては アヤだけがクリニックを辞めることになった
”チャンミン先生みたいに素敵な人 いないと思います
今は 新しい恋人なんて見つかる気がしません
やっぱり 好きだったみたい
毎日顔を会わせるのは ちょっぴり辛いです・・・”
そんな風に言われて
少しだけ申し訳ない気持ちになる
女性に本気になれない俺みたいな男を
褒めてくれるだけで十分だ
いい娘だったな・・・
新しい看護師が決まるまでは
何とか4人で回してもらうしかなく
その代わりに
ユノさんとの食事をセッティングするハメになった
身から出た錆ってヤツだ
5人と正式に別れた俺は
晴れて独り身となった翌日から
仕事のあとの予定が全くなくなった
何の予定もない日なんて
今までは考えたこともなかったから
暇だ・・・
今夜は
誰もいないクリニックで
一夜を過ごしてみようか・・・
白衣を脱いで手を洗い
スマホを手に取ると
ユノさんから沖縄の写真が送られて来ていた
綺麗な海・・・
揺れる赤い小さな花・・・
青くて高い空・・・
目を閉じると
潮の香りが鼻先を掠めたような気がした
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