癒しの T-Garden 赤い海の旅人

くせ 86

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『チャンミン 可愛いー』

「なんだよ いきなり」

『あ このまま動かないで』

「・・・」

ユノは 僕を抱きしめたままま呟いた

仮にも ユノを育ててきたはずの僕に
可愛いって どういうことだ?





『俺さ チャンミンが家族で本当に良かった』

「家族って・・・
父親で良かったってこととは違うの?」

ユノがゆっくりと話し出したので
僕は大人しく
抱きしめられたまま聞いていた

『父親なんだけどさ
父親じゃないっていうか
友達でも兄弟でもない
やっぱり家族って言葉がしっくり来るかな』

「よく わからないけど・・・」

『チャンミン 見た目もイケメンだし
年よりぐんと若く見えるから
俺のクラスの奴らも皆
驚いてたよ』

「そう?」

『そりゃあ そうだよ
こんなカッコいい親父 いないって』

「でも 僕が怖がったから
変なことで有名になっちゃったね」

『あははは そうそう
チャンミンは本当に有名人』

「行かない方が良かったかな・・・
ユノ 恥ずかしくない?」

ずっと リビングで立って
抱きあったまま 会話を続けた

『何で恥ずかしいの?
チャンミンの可愛さが皆に知れ渡って
心配では あるけどさ
自慢のチャンミンを見せびらかせたからマル!』

「僕は恥ずかしくてしばらく学校には顔を出せないな」

『来ることないでしょ?
次の面談だけだし』

「うん まあね」



ユノの背中をポンポンと手の平で叩いてみると
以前に比べて随分と固くたくましくなったような気がした



『チャンミンと俺が似てないから
本当にお父さん?って何人も聞かれたんだ
だから 実は親戚のお兄さんなんだって言ったら
全員 信じた』

「え? そんなこと言ったの?」

実は 東方高校には
僕が実の父親でないことは告げていない

ユノが幼かった頃は それはそれは気を遣って
色々と画策したものだけど
高校生なら 敢えて言うこともないなと
ユノと相談して決めたことだった

『サッカー部の子たちは知ってるんでしょ?
僕とユノのこと』

「うん 何人かはね」

小さい頃に事故で両親を亡くして
今は父親代わりの親戚のお兄ちゃんと暮らしてるって
言ってるらしかった

まあ あながち間違ってはいないけど
僕が父親ではまずいのかな?なんて
一瞬 頭をよぎった

まあ 確かに顔は全く似てないし
親戚のお兄ちゃんの方が都合がいいんだろう

その方が僕も気が楽かも・・・



「そっか 親戚のお兄ちゃんは名案かもな?
かなり年は離れてるけどね」

『チャンミンは若く見えるから問題なし』

「ふふ
それより ユノ 逞しくなったね」

『だろ? チャンミンを守れる強い男になりたいからね』

「また言ってる」

『本当のことだもん
身体は随分と逞しくなったんだからな
ほらっ』





ユノが僕の手を
ユノの股間に導いた

「・・・」

咄嗟のことで 僕は固まり
身動きが取れなかった

どうしよう・・・





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

昨日会報が届きました
DVD はまだ観てないんですが
冊子の方はじっくりと拝見
何だか遠い昔のことのように感じる懐かしさでした
ライブはいつになったらできるんでしょうね



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赤い華 39

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『僕と付き合ってもらえませんか?』


「・・・???」


遂に俺の耳は おかしくなったのか・・・?





固まった俺の前で
少し はにかんだようなユノさんが
もう一度 口を開いた


『清水の舞台から飛び降りる覚悟で
言っているんです
恥ずかしいけど もう一度言います
僕と付き合ってほしいんです
恋人として・・・』


”恋人” って言った?


「こ こいびとって・・・
意味わかってるんですか?」


『もちろん
冗談でこんなこと言うほどバカじゃないですよ
男同士だということも勿論わかっています』


そりゃあそうだろう・・・


わかって言ってるんだって 
それくらいのことは俺もわかる





ただ・・・


頭が ついていかない・・・





看護師を一人も残さずに帰してしまったことを
後悔しながら
どうやって 
この場を切り抜けようか考えた





ユノさんを嫌いなわけじゃない


むしろ・・・気になる


でも・・・


そんな・・・


ありえない・・・





真剣な眼差しのアーモンドアイを
きつく睨み返して
ユノさんの表情を窺う





ここで情にほだされてはならないと
もう一度 自分を戒めた





韓国での練習生時代のことを聞いてみようと
ついこの間までは思っていたのに


今は ”聞いてはダメ” だと
もう一人の俺が言っている


思い出したくない過去・・・


そしてユノさんには絶対に知られたくない過去・・・


そう


知られたく・・・ないんだ


だから
これ以上は近づかないほうがいい


お互いに・・・





ゲイでもない俺たちが付き合ったところで
先は見えているではないか





以前にも
ユノさんに見つめられて
響いた警告音
あの時と全く同じ要注意信号





だから・・・


だから・・・


ダメなんだ・・・





『チャンミン先生?』


「はい・・・」


『僕の気持ち 伝わりましたか?』


温かい言い方で 
冗談でも
ふざけているわけでもないことは
本当に よくわかる





尚更 辛い・・・


心臓が激しく波打っていること
悟られてはいないだろうか





「ユノさんが さっき私に言ったこと
よく わかりました
でも 私は知っての通りの女たらしです
これからも気に入った女を取り換えながら
お気楽に生きていくつもりなんです
誰か一人とどっぷり というのは性に合わない
ましてや男同士で付き合うなんて
とんでもない
理解の範疇を超えてます」


『僕の気持ちを真剣だと
受け止めてくれて嬉しいです
でも 僕はまだ諦めません
チャンミン先生に 
僕の入る隙間など これっぽっちもないくらい
大切な人がいるのなら 
こんな告白は しなかったでしょう』


「含みのある言い方をするんですね
恋愛の相手は たった一人じゃなきゃいけないと?」


『女も選り取り見取りですか?
いつか人生を共にしたいと願う人が目の前に現れたら 
チャンミン先生も一人に落ち着くのかな?』


「そんな先のことは わかりません
とにかく今は ユノさんの言葉の意味が
理解できません・・・
ツアーに同行の話は
きっぱりとお断りします」


この人の担当医なんて 
引き受けるんじゃなかった・・・


こんな面倒なことに巻き込まれるなんて
想定外だ・・・


『今日のところは もう帰ります
びっくりさせてしまって すみませんでした
ですが
本気ですので 必ず返事をください
急ぎません
ゆっくり考えてください
僕は本気です』


「・・・」


『同行が無理なら 
お客さんとしてライブに来てください
じゃあ
お邪魔しました』


ユノさんは
全く気を落とした様子もなく
楽しそうに帰って行った





なんか


あの人といると


調子が狂う・・・





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赤い華 38

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~ 意気揚々 by Yunho ~





ライブを数後日に控え
どうしても話したいことがあると
チャンミン先生のクリニックを訪れた


診察では ないからと
看護師さんたちには帰ってもらって
2人だけで話をする機会を得た


念願のね・・・





案の定
俺の提案は断られた


しかも間髪入れずに・・・





『足が突然痛むときもあるし
横浜と名古屋だけでいいですから
同行してもらえませんか?』


「無理ですね・・・」


『週末はクリニックはお休みですよね?
週末2回だけ なんとかしてくれませんか?
美味しいものを沢山ご馳走しますから』


食通のチャンミン先生を食べ物で釣る作戦


「遠慮します
食べたいものは自分で食べに行けますから」


マネージャーのキムさんからも
一度電話でお願いしているはずだった


その時も断られたというので
今日は意を決して会いに来たというわけだ


だが
チャンミン先生は
頑として 首を縦には振らなかった





こうなったらストレートに勝負だ





『僕のライブを どうしても
一度 生で観てほしいんですよ
そんなにお嫌なら
横浜会場だけでもいいです
観に来てください』


「・・・どうして・・・そんなに私に?」


『言ったでしょう?
チャンミン先生がいいって』


「確かに聞きましたけど
でも それって どういう意味なんですか?
平日も貴重なデートの時間まで削られているのに
週末まで女と会うなってことですか?」


『彼女たちとのデート時間を奪ったことは謝ります
でも 週末は看護師さんたちとは会わないんですよね?
それとも まだ他に付き合っている女性が?』


「そんなことまでユノさんに言う必要はないでしょう?
おわかりですよね?
私は女性と接していないとダメなタチなんですよ
私が無類の女たらしだって ご存知ですよね」


『よく知っています
でも こんな女たらしなのに
サラさんたちは口を揃えて 
”チャンミン先生は誠実だ” と言うんですよね
その理由が知りたい・・・』


「それとライブに行くこと
ど関係が?」


『正直に言います
僕はチャンミン先生が好きです
とっても興味があります
あなたを もっともっと知りたいのです・・・
だから あなたを・・・
担当医であるシム・チャンミン先生を
もっと知る機会が欲しいし
僕のことも知ってほしいんです』


チャンミン先生はフッと苦笑いをして


「随分 勝手な言い分ですね
これ以上 知らなくても・・・
患者と担当医です
そこまで親しくなる必要は微塵も感じませんね」


少しの笑顔も見せることなく
バッサリと言い放ってくれた

チャンミン先生の真意が
本当に言葉通りなのか
はっきりと確かめるまでは
諦めるわけにはいかない





どんなに冷たくあしらわれても
怯むつもりなど さらさらなかった


こんなやり取りは覚悟の上
益々やる気が出てくるというものだ


チャンミン先生に冷たくされればされるほど
僕の気持ちは意気揚々とし
どんどん自分の気持ちを口にしていくことができた





『チャンミン先生・・・
これは告白です
あなたのことが好きだから
もっと知りたいと言っているんですよ
僕 チョン・ユンホも 
彼女たちの仲間に入れてはもらえないですか?』


「はっ? 
ユノさん 何をおっしゃっているんですか?
あなたのおっしゃっている言葉の意味が
全く理解できません」


『チャンミン先生も随分頑ななようですので・・・
では理解していただけるように 
言わせていただきます』


そう言って
自分の気持ちを包み隠さず
チャンミン先生に告げた・・・





『僕と付き合ってもらえませんか?』





キャッ♥️告白\(//∇//)\
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くせ 85

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『ただいまー』

「おかえり」

ユノは文化祭の後片付けで
随分と帰りが遅くなった

振替で明日の月曜日が休みだから
今日は遅くなっても
最後まで片付けをして帰ることになっていたようだ

担任の先生の計らいで
ちょっとした打ち上げもあったみたいだ





ユノは疲れたと言って風呂に入り
その後 腹が減ったと大騒ぎして
僕が作ったご飯を食べた

『やっぱりチャンミンの飯がサイコー』

「おかわりする?」

『もちろん するする』

「明日 休みだね」

『うん 少し出かけていい?』

「いいよ 友達と?」

『プチ打ち上げでさ
ボウリングしてカラオケ行ってお好み焼きたべようって』

「いいね 大勢で?」

そうか そう言えば
文化祭の後って
そんなのあったっけなぁ・・・

『うん クラスの子で来られる奴は全員手ことになってるけど
多分12人くらいかな』

「女子も?」

『うん 4人くらいはいるはず』

なんか 青春だなあ・・・

自分の地味だった高校時代を思い出し
ユノのキラキラした学校での姿を誇らしく思った





「お化け屋敷 凄く良くできてたよ」

『だろ?
てかさ 一番怖がってたのがチャンミンだって
噂になってた』

「えっ?」

『だって あんなにこわがる大人いないって・・・
クラスの中でも有名人だよ チャンミンは』

「ごめん・・・ユノ」

『何で謝るの?』

「だって 親があんなに怖がるなんて
息子として 恥ずかしいだろ」

『何言ってるんだよ
全然 そんなことないって
俺は寧ろ 嬉しくてさ
チャンミンが 俺を頼ってくれたし』

「ほんと ごめん
僕は自分が情けないよ」

『まあ 無理矢理連れこんだようなもんだし
俺にも責任はある
だから 気にしないで
あんなに怖い思いをさせちゃって
俺の方こそ ごめん』

「ユノ 頼もしかったよ」

その時 ユノが 
見たことがないくらいに嬉しそうな顔をした

目をキランと輝かせて・・・

『チャンミンに褒められて
俺 この上なく嬉しい
チャンミン ありがとー』

ユノが 僕に抱きついてきた

ああ 何だか久しぶりだ

動くユノの髪から
シャンプーのいい香りがした





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赤い華 37

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~ 虎視眈々 by Yunho ~





それからというもの
仕事が終わると長いシャワータイムに
チャンミン先生の攻略法を
考えることが日課になった


俺はゲイではない


ずっとノーマルだと思っていた


だけど・・・


よくよく考えたけど


今は やっぱりチャンミン先生しか
目に入らない


どんなに美人でも優しくても
女性に全く興味が湧かないのだ





頑なな態度を崩さない
チャンミン先生みたいな人の
心の扉を開くには・・・





小細工は俺の性に合わない


かといって
いきなり ”当たって砕けろ” が
通用する相手ではなさそうだ


一筋縄ではいかないことくらいは
実は大して恋愛経験のない自分でも
よくわかった





長期戦 覚悟だな・・・





自分を信用してもらうこと


話す機会を多く持つこと


チャンミン先生を知るためには
相当の覚悟で臨まないと





性別は男だというのに
チャンミン先生が男だとか女だとか
全く関係なかった


なんとなく ”特別” な気がしたんだ







準備してきたアリーナツアーのための
最終打ち合わせ等で 
忙しくなってきた


ギプスが取れて
随分自由が利くようになった足を
嬉しく思いながら


”良くなる” ということは
クリニックに通う頻度が減ることを
意味しているのだという事実に 
胸を痛めながら


シム・チャンミンという人間に
完全に惹かれている自分を 
はっきりと自覚した





足が完治していない状態でのアリーナツアー


でも 楽しみにしているファンのため
少しでも足に負担のかからない方法を模索した


協力してくれるスタッフと共に
準備で夜遅くまで確認作業に追われたり
セットリストに合わせて歌のレッスンをしたり
進行の打ち合わせなどもあり
夜遅くまで仕事が続いた


クリニックにも思うように顔を出せない上
看護師一人ずつを順番に誘うという
食事会も実行できないでいた


何とかして
チャンミン先生に会いたい





考えた末の苦肉の策は・・・


ツアーに同行してもらうこと


うん それがいい


一度は 生で自分のステージを
観てもらいたいと思っていたのだから
いいチャンスではないか





我ながら名案だとほくそ笑み
明日 キムさんに話してみよう





思わず 顔がニヤケるのを自覚した


断られることも承知の上
玉砕覚悟で頼みこむ予定


何度頼んでもダメなら
サラさんに聞いた秘策を告げるつもり・・・


”ああ見えて チャンミン先生は 
ユノさんのライブDVDを真剣に見てたんですよ?”


サラさんとの食事会だけは 
先に済ませておいて良かったと
これほど思ったことはない


カッコいいと思ってもらえるように


親近感が芽生えるように


”アーティスト チョン・ユンホ” の
全てを出しきろう


そして 虎視眈々と
チャンミン先生の心の扉の鍵を
開ける機会を狙うつもりになった





チャンミン先生が俺に向かって
笑いかけてくれる日がきっと来る


そう考えると
とてもワクワクしてきたのだった





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赤い華 36

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~ 興味津々 by Yunho ~


「ねぇ サラさん・・・
チャンミン先生の どこがそんなに好き?」


4人で行った焼肉店で
こっそりと サラさんに聞いてみた





クリニックの看護師全員と関係している医師って どうよ?


普通に考えたら おかしいよな?


職場の女性全員と関係を持つってさ・・・


しかも 全員が現在進行形とキてる


いくらイケメンでも
避難されるに値する行動だよな?


ただのスケベ野郎だろ?


S○X依存症とかいう病気もあるらしいから

もしかして そういう病気なのかも?!


ここの女性は皆
5股もかけられているというのに
悲壮感が全くない


クリニックに来るたびに感じること
それは みんな明るいということ


殺伐とした雰囲気は微塵もなくて
当の本人も 
悪びれたり後ろめたい様子もない


看護師たちは
チャンミン先生と楽しそうに話し
仕事もきっちりこなす


全員がチャンミン先生の恋愛スタイルを
理解しているようで
ひがみや妬みといった 


職場恋愛に ありがちと言われる
醜い争い事も ないように見える





初めは いつも欠かさずに飾ってある
クリニック内の花のせいなのかと思っていた


でも
どうやら違うようだ・・・


不思議だ・・・





偶然にも怪我の治療をしてもらうことになった
チャンミン先生のような人に
自分が興味を持つのも必然と言えば必然だった


今まで一人も会ったことのない
新しいタイプの人だったから・・・





仕事中は無駄口も一切叩かない
真面目な医師


男には全く興味がないようで


例え それが患者であっても笑いかけもしない


”愛想のない医師だな” とも思った


けど腕は確かなようで
近所の患者さんの評判も
すこぶる良かった


まあ これはマネージャーのキムさんのリサーチだけど・・・





芸能人と知ると
利害関係を露わにして近寄ってくる輩も多い世の中で


シム・チャンミンという名前の若い医師は
そういう俗っぽさが全くと言っていいほど
感じられなかった


それが担当医をお願いしたくなった理由の一つ


自分にとって
とても貴重な人間のような気がしたからだった


女と自由奔放に付き合う割には
いい加減には思えない人柄


何度か会ううちに
もっと知りたいと切に思うようになって


気づけば
チャンミン先生のことばかり考えている事実に
気づいてしまった


これって 恋みたいだ・・・





友達になりたいという感覚とは
少し違う・・・


どこか影のある その人を
もっと本質的な部分で知りたい・・・


今のような 一見冷酷に感じる人間性には
何か理由が あるような気がして・・・


それに最初に会ったときから感じている


懐かしいような感覚も確かめたいんだ


そんな思いも重なり 
どうしても もっと今よりも近づきたいと


そんな気持ちが日に日に強くなって
半ば強引に食事に誘ったというわけだ





だから サラさんに聞いてみたのだ





「チャンミン先生は とても誠実な方なんです」


女たらしと誠実が どうしても一致しない


俺の頭は固いのか・・・


これは チャンミン先生抜きで
看護師さんたちと食事をした方が
情報を得るには得策なのでは?と
感じた自分は
少しイカレちゃってるのかもしれない・・・







何食わぬ顔で 
黙々と焼肉を平らげる
チャンミン先生の整った横顔を 
視界の隅に捕えて


俺は自分が変なのかどうか
確かめなくてはならないと
妙な決意を新たにした




タイトル画の赤い花は彼岸花です
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くせ 84

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”大丈夫ですか?”

”ユノ君 お父さん 怖かったのかな?”

受付の女子が心配そうに声をかけてくれた

『チャンミンは怖がりなんだよ』

”チャンミン?”

『そう 俺 親を名前で呼んでるの』

”そうなんだ~
ユノ君のお父さんは若くてカッコいいって聞いてたけど
本当にその通り
お父さんって感じ全然しないね”

『だろ?』

”うん お父さんと言うよりは
知り合いのお兄さんと言う風にも見えるし
でも 何だか恋人みたい!”

『アーハーハー』





ん? 今 何て?

これ以上 みっともない姿を晒すわけにはいかない

僕は できる限り シャキンとして顔を上げた

「ありがと ユノ」

『大丈夫か?』

「うん あ 情けないとこ見せちゃいましたね
お化け大嫌いで・・・
凄く怖かったです
本物のお化け屋敷みたいでした」

”わぁ そう言ってもらえると嬉しいです
頑張った甲斐があります”

「明日もあるんでしょ?
頑張ってください
ありがとうございました」

”はいっ 頑張ります”

僕は早く ここから立ち去りたかった





スタスタと歩き出す僕に
ユノが声をかける

『チャンミン ちょっとまってよ』

ユノのクラスがあるフロアの端まで
早歩きして階段にたどり着いた

「ユノ 大丈夫だから」

『本当に大丈夫?
フラフラしてるような気もするし
顔もまだ青ざめてるじゃん』

「何か冷たいものでも飲んで休んでいくよ」

『じゃあ 一緒に行こう
グラウンドでたくさん店が出てるんだ』

「ユノは 時間があるだろ?」

『ん まだ20分くらいはある
俺も喉が渇いたよ
一緒に飲もうよ てか 奢って?』

「しょうがないなあ
じゃあ行くか?」

『そうこなくちゃ』





僕たちは グラウンドの出店で
マンゴージュースを飲んで喉を潤した

「みんな 頑張ってるね」

『うん 楽しいよ』

「じゃあ しっかりね
僕はもう少し ウロウロしてから帰ってるよ」

『気をつけて帰れよ』

「大丈夫だって」





心配性のユノに見送られ
僕はグラウンドを後にした

せっかく来たのだから
一通り眺めてから学校を出ようと思った





“ユノく〜ん“

『ミヨン』

背後から聞こえてきたのは
ユノを呼び止める女子の声

ミヨンチャンて あの・・・

やっぱり ユノはモテるんだな

ホッとしたような
寂しいような
複雑な気分で その場から立ち去った





いつも拍手やコメントありがとうございます
お返事できなくてごめんなさい🙇‍♀️
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赤い華 35

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ユノさんとサラと焼肉に行く約束の日


キムさんも一緒だと聞いて
結局4人になって少しほっとした





その日は撮影が長引いたとかで
衣装と思われる 
真っ白で長いジャケットという出で立ちのまま
診察に訪れたユノさん


焼肉にその服で行くのかと
不思議に思っていたら


『あまり遅くなってはまずいかと思って
このまま来ちゃいました』


薄紫の地味な花しか飾っていない
おとなしめのクリニックの中
ユノさんの周りだけが芸能人オーラ満開だ





サラは大喜びで


”わぁっ ユノさん 素敵~
それは何の衣装なんですか?”


『これ? 次のシングルのジャケットの一つね
内緒だよ?
まだ誰も知らないんだからね』


バチっと大きくウインクされて
サラは ”キャー” とか・・・


二人で やっててくれ


俺は正直帰りたいよ・・・


気乗りしない
ユノさんを交えての食事
サラだけが楽しいんじゃないか?!





”チャンミン先生 聞きました?
なんかユノさんの秘密を
教えてもらっちゃったみたいで嬉しくないですか?”


「そう? 良かったね サラ・・・」


精一杯 笑ったつもりだった


”あらやだ? チャンミン先生 どうしたの?
顔をひきつらせちゃって・・・”


サラは変なところで鋭いから困るんだ


「別に ひきつってなんていないよ?
あまりにもサラが嬉しそうだから
ちょっと驚いただけだよ?」


”ふふふ・・・
もしかして妬いてくれたの?
私がユノさんユノさんって うるさいから”


これ幸いとばかりに


「そうだね・・・
少し妬けたかな?
俺の可愛い恋人たちが
最近 みんなユノさんに夢中だからね」


そういうことにした


・・・別に俺よりもユノさんがいいのなら
そっちに行ってもいいんだよ?
俺は全く気にしないから・・・


”もう・・・ウソばっかり
チャンミン先生が妬くなんてこと ないくせに・・・
ユノさん ごめんなさい
気にしないでくださいね”


『チャンミン先生は本当に
人気者なんだね?』


”わたしたちね みんな
チャンミン先生のこと大好きなんです
でも ユノさんも好き
ホントですよ?”


『じゃあ チャンミン先生やめて
俺と どうかなっちゃう?』


サラの頭にスーッと手を伸ばして
引き寄せたと思ったら


ユノさんは自分のおでこと
サラのおでこをくっつけた





一瞬 固まったサラ・・・


ユノさんて
こういうこと できちゃうんだ・・・


やっぱり女慣れしてるのか?


こうやって口説くんだ・・・?





大人なサラも
これには ちょっとドギマギしたようだ


”あっ もう ユノさんたら
こうやって女性を口説くんですね”


そこで逃げたりしないのがサラ


『ごめんごめん 冗談が過ぎたよね
僕は そんなガラじゃないよね
ごめんね?サラさん』


”一瞬 本気かと思っちゃいましたよ~
チャンミン先生に なんて言おうかしら?
って考えちゃった”


えへっって笑いながら
そんな風に交わせるサラは やっぱり大人だ


全くユノさんは どういうつもりなんだか・・・





こんな些細なやり取りで
内心 穏やかでない俺は
まだまだ大人になり切れていないのかもしれない





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赤い華 34

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なんだか
初めの印象と少しずつ違ってくるユノさんに
戸惑いを隠せない・・・


いや 最初のイメージを 
自分が間違って持ったのかもしれない





何でもマネージャー任せの
女々しい奴だと思った


でも 実は
とても人気のあるアーティストで


歌やダンスの実力もさることながら
ファンやスタッフを大切に思う温かい人柄は
そのパフォーマンスをもっと観たい
人となりをもっと知りたいと


そう思わせるのには十分過ぎるほどに
ライブDVDで観た真摯な姿勢は
俺を惹きつける魅力に溢れていた


画面越しではない
直接 相対するようになって尚更・・・


どんどん好印象になるユノさんは
本当に不思議な人だ





売れっ子芸能人なら
大抵の人間は身の回りの世話を
マネージャーや付き人がするものだということを
最近知った・・・


考えてみれば当たり前だ


顔が知られている以上
自由に街中を歩くわけにも
行かないのだろう・・・


だから気安く女性とデートなど
できないということだ





なら 俺とならいいのか?


男性だから?


怪しまれないから?


変に勘ぐられないように食事をするために
利用されるのは ごめんだけど・・・


行きたい店が あるのなら
俺じゃなくても良さそうなものだけど
俺を誘うということは
何か別な理由があるのだろう





まずは サラやミナたちを楽しませて
そのあと一度だけ
ユノさんと二人きりで食事をすれば
いいだけのこと


それが済めば
ただの患者と担当医だ





ユノさんと二人で食事


二人きりで食事?


頭で予定を確認しただけなのに
胸がキュンとなるのは
どうしてなのか?





こうなったら
もっともっと 
チョン・ユンホという人間を暴いてやる


『チャンミン先生がいい』だなんて
どういうつもりか聞いてやる


妙に人懐っこい性格に
持っていかれそうになってる自分に
焦りを隠せない





『じゃあ また来週
よろしくお願いします
あっ その前に焼肉だー
ありがとうございました』


にこにこ顔で帰ろうとしたユノさんが 
振り返るときに見えた手の甲の傷


「あ ユノさん・・・」


『はい?』


「その・・・手の傷は痛くありませんか?
私のせいで怪我をさせてしまって・・・
申し訳ありませんでした
売り物なのに・・・」


『こんな傷 たいしたことないですよ?
それより売り物って・・・?』


「だって あなたは人気者の有名人なんでしょう?
ファンだって たくさんいるし・・・
その手を傷つけてしまって
ごめんなさいということです」


『あははは 全く問題ないですよ
男ですからね
ステージやドラマの撮影では良くあることです
それよりも
チャンミン先生が覚えていてくれたことの方が
驚きだし嬉しいなあ・・・』


真っ直ぐに俺の目を見据え
嬉しそうな顔をするユノさんに
なんか こっちが恥ずかしくなる


「もう痛くないなら安心しました
本当にすみませんでした」


極力冷静を装って
マネージャーのキムさんにも頭を下げた





『もっと派手に怪我したら
チャンミン先生に たくさん見てもらえるってことか…』


帰り際 ユノさんが 
背中を向けて
ひとりごとのように呟いた言葉には
敢えて 聞こえないふりをした





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くせ 83

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「ひゃあっ なっ何? 今の」

身体に柔らかい何かが当たった

『大丈夫だよ
布をひらひらさせて脅かしてるだけだから』

「ふぅ・・・まだ あるんだよね」

『もちろん まだまだ』

「うっ・・・」

手のひらは汗ばみ
顔面も油汗だ

ユノが 何度も僕を抱き寄せ直した

『チャンミン 大丈夫だからね』

「早く 終わってくれよ」

『まだ半分も終わってないよ
しっかり 俺に掴まってて』

「・・・」

ああ もう早くここから出たい

だからお化け屋敷は嫌だったんだよ・・・





ユノに みっともない姿を見られちゃったし・・・

これじゃあ 親としての威厳も何もあったもんじゃない

今までの親としての尊厳も台無しじゃないか

早くここから出ることだけを考えていると
突然 大きな音が僕を驚かせた

”バンッ!”

「ギャーッ」

思い切り大きな声を出してしまい
しゃがみこんでしまった

恥ずかしいったらないよ・・・

『チャンミン 安心して』

ユノが同じようにしゃがみ
僕を引き上げた

『本当に 嫌いだったんだね・・・
こんなに怖がるなんて思わなかった
ごめん』

僕を全身でぎゅうっと抱きしめたのだ





もう 泣きたい

情けないし恥ずかしいし
こんな姿をユノだけではなくて
ユノのクラスメイト達にも知られてしまう

ごめんね ユノ

こんな情けない父さんで・・・





暫くユノに抱きしめられて
僕は 少し落ち着きを取り戻した

ユノがいてくれて安心だった





時間にしたら
ほんの10分も ないくらいだったと思う

でも 怖がりでお化け屋敷大っ嫌いの僕には
10時間くらいに感じられた

教室の外に出た時には
あまりに疲れて 呆然と立ち尽くした

暗闇から明るいところに出たことで
目も開けられず 息を整えると
膝に両手をつき
頭を下げて 今度は気持ちを整えた

ユノが 僕の背中をトントンと
優しく叩いてくれていた





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