
〜 LONDON にて 8
男同士なんて
終わったあとは そっけないもんだ
少し違和感の残る身体をシャワーで綺麗にし
MAX が差し出したギネスを飲む
ボトルのまま飲むビールは少し苦目
一晩限りの関係
少なくとも俺はそう割り切っている
多分 MAX も・・・
あまりにチャンミンに似ているこの男は
知り過ぎない方がいい気がした
お互い すっきりしたところで
少しだけ 聞いてみる
『なぁ MAX ・・・お前 慣れてるだろ?
もともとゲイなわけ?』
俺がどっちだろうが棚に上げて
この男と身体を合わせた後では
ズバリ聞いても大丈夫だと思った
頭を掻きながら渋々答える MAX

「僕はゲイじゃないよ
しいて言えば バイ・・・になるのかな?
学生時代は女のコとつき合ってたし
普通に SEX もしてた
その後 たまたま好きになった人が
男だっただけ・・・」
『そうなんだ・・・
で? 今は?』
「ん・・・先月 別れたから
今は完全なるフリー
ユノ・・・は?」
俺の名前を口にするとき
少し躊躇うような仕草をみせる
『俺も もともとゲイではない
たまたま好きになった奴が
男だったってだけ・・・
一緒だな?』
「そう・・・」
ふっと笑う
『たばこ 吸ってもいいか?』
「ごめん 母さんが嫌がるから・・・」
『了解』
「チャンミン・・・て言うんだろ?
ユノの恋人」
『ああ 恋人なのかどうか わからないけどな・・・』
「なんで?」
『逢えないんだ アイツはオランダにいるから・・・』
「遠距離恋愛か・・・辛いね」
『ああ・・・』
「僕とチャンミンて そんなに似てるの?」
『うり二つだよ・・・
正直 驚いたし今もまだ
信じられないくらいだ』
MAX は2本目の瓶ビールを開けた
ごくごくと早いペースで飲んでいく
口についた泡を手の甲で拭う仕草もセクシーだな・・・
「僕の別れた恋人
ユノって言うんだ・・・」
『マジか・・・?』
「うん ユノ 顔も似てるんだよ
そっくりというわけじゃないけどね
色白で 小顔 すーっとした鼻筋に
アーモンドアイは同じだよ」
『ほとんど俺じゃないか?』
「ふふふ ユノ・・・面白いね
声が違うんだ あと体型も」
『どう違うの?』
「ユノ あ 今ここにいるユノね
ユノの方がスタイルいいよ?」
『じゃあ お互い驚いたってわけだ・・・』
そうだったんだ・・・
だからなのか?
俺がユンホじゃなくて ユノって言ったときに
少し様子が変だったんだ・・・
ベッドの上での MAX の様子に納得がいく
『思い出させちゃったな・・・』
「まぁ お互いさまでしょ」
『あのさ
MAX は その・・・
どっちだったの?』
「どっちって?」
『恋人と その・・・するときだよ・・・』
俺 何てことを聞いてるんだ?
「知りたい?」
その上目遣いは計算か・・・?
心臓がドキリと音を立てる
ここは俺らしくストレートに・・・
『ああ すげー知りたい
教えて? どっち?』
「両方だよ・・・
男は基本決まってる人が多いみたいだけど
僕たちは その時の気分でしてたから・・・」
『じゃあ 俺がお前を抱くのもアリってことだよな?』
「初めはそのつもりだったくせに・・・」
『まあな・・・』
「チャンミンのこと 抱いてたんでしょ?
だから いつものように僕を抱こうとしたんだよね?
でも 途中でユノが止まっちゃうから」
『ごめん・・・』
少しバツが悪い・・・
そんな雰囲気を一蹴するように
MAX からの突然の誘い
「明日さ サッカー観に行かない?
チケット あるんだけど」
明日は 昼間はアレックスと撮影の打ち合わせがあるな・・・
時間を聞くと夜だという
夜なら行けそうだけど・・・
再び MAX と会うことに少しの躊躇いがあった
そんな俺の様子を感じ取ったのか
MAX が言葉をかけてくる
「バイトも休みなんだ
しつこいお客さんが置いて行ったチケット
貴重らしいよ?
ユノとなら・・・行きたいなと思ったの」
『俺とで いいの?』
「ありがとう 嬉しいよ」
俺に向ける静かな微笑みには
包み込むような優しさがあった
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~ AMSTERDAM にて 10 最終回 ~
次の日も その次の日も
俺はチャンミンの元へ通った
そして
チャンミンを抱いた・・・
まるで青天の霹靂
つい数日前までの自分と今日の自分が
あまりに違い過ぎて
チャンミンと出逢ってしまったことが
夢なのではないかとすら思える
人生って不思議だ
幾重にも重なる偶然や必然
タイミングや運で どんどん変わっていく
ここ アムステルダムでの出来事も
本当に偶然なのか
それとも仕組まれた運命なのか?
俺に わかるのは
この出逢いが 2度とないくらいに
貴重なものだということ・・・
初めて男を抱いた
チャンミンのリードによるところが大きかったけれど
感じたことのない類の悦びは衝撃的で
多分 もう やめられない
俺は チャンミンを愛してしまったのだ
明日には韓国に帰らなけれはならないという日
俺はチャンミンをデートに誘った
ここなら2人で一緒にいても
誰にも後ろ指を指されることもないし
知り合いに会う確率もゼロに近い
何と言っても オランダという国は
性的マイノリティに対して寛大だ
いわば LGBT先進国と言えよう
世界で初めて
同性婚が認められたという話も聞く
チャンミンが
この地を選んだのも納得がいくというものだ
昼間 外で見るチャンミンは
薄暗いところでの様子とは打って変わって
健康なはつらつとした青年だった
『オランダって綺麗だな・・・』
「ヨーロッパの景色は美しいよね
僕も好きだな・・・
ユノが撮った写真たくさん見たい」
見せてやりたい
叶うものならば・・・
公園を散歩して
観光名所で まだ廻ってないところを
チャンミンに案内してもらった
「ユノが嫌じゃないなら
ハイネケンビールの博物館に行きたい
僕もまだ行ったことないんだ」
『いいよ
一緒に行こう』
チャンミンと一緒なら何処でもいい
ビールが大好きだというチャンミンの目が
キラキラとして楽しそうに輝く
カメラに興味があるというチャンミンに
ファインダ-をのぞかせ
俺の写真も撮ってもらう
自分の写真は殆どないから
アムステルダムに来た いい記念になると思った

俺も今日1日で
たくさんのチャンミンをカメラに収めた

けど
現像しても一緒に見ることはできない・・・
夜が近づくにつれ
段々胸が苦しくなってきた
「最後の夜だから
ユノの食べたいものを食べに行こう
僕は いつでも行けるから
何がいい?」
言葉に詰まる・・・
明日 帰国することは伝えてあったが
チャンミンは ”わかった” と言っただけで
何か気持ちを飲み込んでいるに違いなかった
きっと 言葉にしてはいけないと思っているのだろう
それは 俺も同じ・・・
このままチャンミンを連れて帰ることができたら・・・
せっかく明るく振る舞ってくれている
チャンミンの優しさに報いようと
俺も 精一杯 初めてのデートを楽しんだ
日暮れは 韓国よりも少し遅いんだな・・・
今日のデートを
俺は一生忘れることはないだろう
その晩は また
チャンミンが借りた部屋で愛し合った
宿泊しているホテルの部屋に
敢えて呼ぶのをやめたのは
帰してやれなくなりそうだからだ
別れられなくなるから・・・
何度も何度も抱き合い
キスして
お互いの肌を温めあった
最後に抱いたとき
チャンミンはイク寸前に
「ユノ・・・ありがとう・・・」 と言った
その目が涙で光っていた・・・
俺もまた・・・
チャンミン・・・
次に会える保証もないまま
俺たちは別れなければならない
『写真 送るよ・・・』
「見送りには行かないよ
飛行機の時間も聞かない」
『2人で撮った写真も送るから』
「うん 待ってる」
俺たちにあるのは 気持ち・・・
ないのは 約束・・・
いつか また お前を抱ける日まで
しばしの別れだ・・・
『チャンミン・・・元気でな?』
「さよなら・・・ユノ」
静かに交わす口づけ
この唇は俺だけのもの
翌朝
俺はアムステルダムを離れた
発つなら早い方がいいと
帰国便の時間を早めたのだ
空から見たオランダの景色は
ガイドブックに負けないくらい美しかった
〜 FIN 〜
【俺はさすらいのカメラマン (オランダ編) 】
終了です
まさかのお別れ・・・
でも2人の気持ちは繋がっています
このままではお互い可哀相なので
まだ逢える日を書く予定でいます♪
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~ AMSTERDAM にて 9 ~
『チャンミン どういうこと?』
わけが分からなくて
このまま帰るわけにはいかないと思った
チャンミンを問い詰めると
ぼそぼそと話し出した
チャンミンは俺と同じ韓国人でソウルの出身だということ
ゲイの恋人がいたが回りに知られて
酷い扱いを受けたこと
親戚のいる この地に来て2ヶ月ほど
語学学校に通いながらアルバイトをしていること
飾り窓で働くつもりで部屋を借り始めてから
まだ2週間しか経っていないこと
『何で? 俺が初めてなの?』
「その・・・韓国で前につき合っていた人が
僕を女装させるのが好きで・・・
興奮するって言ってたから
赤いドレスを着てみたら
一番初めのお客さんに殴られて・・・
腫れが引くまで家に引っ込んでたから」
なんと
そりゃあ そうだろ
ここは男が女を買うところだ
いくらチャンミンみたいに綺麗でも
女と思って入ってきたら男だったなんて
俺だって キレたんだから・・・
だから?
久しぶりに窓に立ったときに
来た俺が初めての客だと
そういうことか
『バカだな・・・
なんで そんなことした?』
「女じゃないとわかれば 抱かないで帰ってくれるかなって・・・
いくら僕がゲイでも
知らない人に好き勝手にされるのは
どうしても怖くて 嫌で・・・」
『じゃあ なんで ここで働こうとしたんだよ?』
「こっちでは まだ 友達もいなくて
それに
英語もオランダ語もまだ不自由だったから
あまり話さなくて済むバイトを考えたらこうなって・・・
寂しいし だからせめて身体だけでも
慰められたらいいと思って・・・」
俺は その告白に
盛大なため息を吐いた
『チャンミン もっと自分を大切にしろ
いきなり慣れない外国で危ないだろ?こんなバイト
まあ お前を買った俺が言えた義理じゃあないけど』
少しバツが悪くなって下を向いた
「ユノ・・・?」
『ごめんな・・・
俺が余計に嫌な思いをさせたかもしれないな』
「謝らないで
ユノは悪くない」
『何の事情も知らずに
興味本位で ここに来て・・・
チャンミンの言う通り
何もせずに帰ったほうが良かったのかもな?』
「そんなこと言わないで
僕 実は お兄さん・・・あ ユノのこと
前から知ってたんだ」
『俺を?』
「うん 何ヶ月か前にソウルで個展開いてたでしょ?」
確かに3~4ヶ月ほど前に初めての写真展を開いていた
『まさか 来てたの?』
チャンミンが恥ずかしそうに無言でうなずいた
「僕もカメラに興味があって
友達との待ち合わせまで時間があったから
ちょっと目についた看板に惹かれて
入ってみたんだ」
『そうだったのか・・・
そこに 俺いた?』
「いました
写真も素敵で どんな人が撮ってるのかな?って
思っていたら受付の女の人が
”あの方がチョン・ユンホさんですよ” って
教えてくれた」
『全然知らなかったよ・・・』
「ふふ 当たり前だよ
ユノは知り合いみたいな人たちと
楽しそうに談笑していて
眩しいくらいにキラキラしてたもの」
『で そのまま出て行ったの?』
「うん・・・
その時に 僕はユノに一目惚れしたんだと思う
ずっと頭から ユノのことが離れなくて・・・
あ その時はもう前の人とは別れてたよ
で 次の日 行って見たら
もう個展は終わってて・・・」

『ああ 最終日に来たんだな?
あの日は来客が多くて
一日中 めちゃくちゃ忙しくてさ
せっかく来てくれたのに ごめん』
「カメラマンて
もっとオジサンなのかと思ってたから
若くて驚いたんだ
そして昨日 ここでまたユノを見かけたから
心臓が止まりそうになるくらいビックリした・・・」
『じゃあ 俺だとわかって手招きしたの?』
「ごめんなさい・・・
こんなところで働いている僕なんか
本気で相手にしてくれるはずはないって思ったら
一度だけでも この人と・・・って思いました」
そんなことが あったなんて
予想だにしなかったこと
あの日は本当に来客がひっきりなしで
一見のお客さんとか全く会話する時間はなかったことを
改めて思い出した
俺はチャンミンが更に愛おしく感じた
自分がゲイであることで
傷ついたことも多かっただろう
今まで どんな思いをしてきたのか
どんな決心でオランダまで来たのか
申し訳なさそうに裸で俯く可愛い男を
俺は心を込めて抱きしめた
『チャンミン 明日も来るし 明後日も来る
だから客は俺だけにしてくれ』
「ユノ・・・そんな いいの?
お仕事は?」
『いいんだよ・・・
もうアムステルダムでの撮影は終わったんだ
あと 数日はここにいられるから』
「ありがとう」
あと 数日・・・
自分で言ってから
胸がズキっと痛くなった
チャンミンは これから どうするのだろうか?
俺は どうしたいのだろう?
『風邪ひくよ? シャワーで流そう』
「一緒に浴びても・・・いい?」
遠慮がちに上目遣いで言うチャンミンの
願いを叶えてやりたいと思った
一緒にシャワーを浴びて
キスをしてから
俺は部屋を後にした
チャンミン・・・
振り返ると窓から
ニコっと笑っているチャンミンが
手を振っていた
俺も精一杯の笑顔で大きく手を振って
後ろ髪を引かれる思いでホテルに戻った
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