俺はさすらいのカメラマン (オランダ編)
〜 AMSTERDAM にて 6 〜
チャンミンが本当に女性だったなら
さぞかし美しいだろうと
本気で思った昨日の夜
一度も見せなかった笑顔を俺は想像した
まさか もう一度会ってしまうなんて・・・
「お兄さん 今日も ここへ?」
『あ・・・ああ』
なんと答えていいか戸惑った
すると下を向いたチャンミンが言った
「わかってるよ・・・
昨日 嫌な思いしたからなんでしょう?
今日は女の人を抱こうと思って来た・・・ってことだよね」
『・・・』
「この辺よりも あっちの方が若くておっぱいの大きい子が
たくさんいたよ」
『チャンミン・・・』
昨日とは全く違い
目の前のチャンミンは普通の男の子だ
俺にタメ口で話す様子は
まるで弟のようだ
「お兄さんなら みんな喜んで ご奉仕してくれるはずだよ?
アジア人は優しいって意外と人気があるみたいだし・・・
お兄さん とてもかっこいいから・・・
好みのコが見つかるといいね・・・じゃあね」
そう言うと 静かな笑みを浮かべて 俺に背を向けた
まただ・・・
胸をギューっと掴まれたみたいな気になった
『待てよ チャンミン』
大きな声で呼び止めると
ビクッと俺にもわかるくらい
大きく身体を震わせて立ち止まった
「・・・」
『待てってば』
追いかけて 後ろからチャンミンの細い腕を取り
振り向かせた
驚いたように俺を見るその目には
うっすらと涙が浮かんでいた
『何? どうした? 何で泣いてるんだ?』
「泣いてないよ・・・ほらっ早く行かないと
可愛い子には すぐに客がつくんだよ?」
『今日は男の恰好をしてるのか?
客は取らないのか?』
涙を隠すように
ずずっと鼻をすすったチャンミン
「部屋は借りたんだけど・・・
今日は そんな気になれなくて」
『・・・』
「少し喉が渇いたからビールを買ってきたんだ」
見ると 手に持ったショップの袋の中に
オランダのビールが数本入っていた
『一人か?』
「当たり前だよ 僕はいつも一人だよ
客は一人で取るもんだし
いくら僕でも2Pや3Pの趣味はないよ・・・」
そう言って自嘲した
『なら 俺を客にしろ』
「えっ?」
『客として俺を取れ
部屋はどっちだ?』
「何言ってるの?
お兄さんは女のコを抱きに来たんでしょう?」
『気が変わった』
「思いつきで そんなこと言っちゃだめだよ?
お兄さんはノンケでしょう?
僕なんかと喋ってないで早く行って・・・」
『だから チャンミンを買う』
「どうして?
ちっとも楽しくなんかないはずだよ?
それとも昨日の仕返しでもするつもり?
俺を どうにかしてしまえとでも考えてるの?」
『俺は そんな度量の小さい男ではないよ』
するとチャンミンは怒った顔で言った
「僕はゲイだ・・・
所詮 ノンケの男とは関わっちゃいけないんだ
どうせ 嫌な思いをするのは こっちだから・・・
面白半分で買われても困るんだよ?」
プイっと踵を返して歩き出してしまった
俺は更に追いかけて チャンミンの前に立ちはだかる
じーっと睨むその目は
俺が見たことのないチャンミンの目だ
『仕事だろ?
変なことはしないから割り切って俺を部屋に入れろ』
「割り切れないよ・・・
お兄さんは割り切れないんだ
だから もう行ってって言ってるのに・・・
旅行中だろ? すぐに帰るんだろ?
さっさと女を抱いて帰ったほうがいいよ?
それとも
”飾り窓行って男とヤった” って自慢する?」
チャンミンの言った言葉が引っかかった
”割り切れない” って何なんだよ?
俺は その意味を知りたいと思った
どうして昨日からこんなにも
モヤモヤしているのかも知りたかった
チャンミンを抱けば
その答えがわかるのではないかと思ったのだ
だから・・・
だから部屋に行きたいと
お前を買いたいと言ってるんだよ
しばらくの沈黙の後
チャンミンが口を開いた
「そんなに暇なら来ればいい
でも変な気を起こしたら
すぐに怖い人が飛んでくる仕組みだよ?
それ 知ってる?」
大方 この地区の取り纏めでもしているボスが雇った
強面の用心棒たちが控えているんだろう
どこの国でも同じだ
『そんな奴らには世話になりたくない
チャンミンと一緒にいたい』
明らかにチャンミンの目が動揺した
少し俯いて ボソッと呟く
「じゃあ 来たら? こっち・・・」
俺の顔は見ずに ゆっくりと歩き出した
今日は本当に客を取らないつもりだったのだろうか?
俺はチャンミンに興味を持ったことを
もう認めざるを得なかった
たとえ旅先の男娼の一人だとしても
もう少しチャンミンを知りたいと思った
そして ”割り切れない” 意味を聞き
チャンミンを抱こうと決めた
「ビール 飲む?」
部屋に入ると
チャンミンは すぐにビールの栓を開けた
美味しそうに飲むと
俺にも “飲め“ と目で合図をした
長い 沈黙・・・
『今日は 抱いてくれと言わないのか?』
「無理矢理抱いてもらうなんて嫌だ」
『ドレスは? 着ないのか?
化粧もしてないし それは地毛か?』
「昨日はコレをかぶってた」
チャンミンが昨日つけていたウイッグを見せてくれた
『お前 女装なんてしない方が ずっと可愛いよ』
「褒められたら嬉しくなるから もう褒めないでよ」
何だ そりゃ?
「褒められると期待しちゃうから・・・」
俺の目を じーっと見つめて
悲しそうな顔をした
『俺の名前 聞かないの?』
「聞いても意味ない・・・」
『どうせ一度きりの客だから?』
「客には名前なんて聞かない主義
余計な情報は ないにこしたことはない
ただ 1時間くらい身体を重ねて
後腐れなく終わればいい」
半ば投げやりともとれる言い方に
チャンミンは恋愛で
何かとても辛い経験をしたのではないかと考えた
『どうして ここで働くようになったんだ?』
「お兄さんには関係ないから・・・言わない」
『あっそ 言いたくないなら言わなくていい
ずっと男だけか?』
「僕はゲイだって言ったろ?
女は一度も抱いたことがない
ましてや 女の性器すら見たことはない」
『生まれつきか・・・』
「ゲイなんて生きにくい世界だ
でも ここは少し楽でいられるから ここにいる」
チャンミンに何があったかは知らないが
根っからのゲイだということだけはわかった
『なぁ・・・チャンミン
男同士の SEX 教えてくれない?
ふざけて言ってるんじゃないんだ
チャンミンがどういう風に性を解放しているのか
知りたくなっただけだから・・・
誰にも言わないし笑いもしない』
「後悔されたくない
ビール飲んだら もう帰って?
お兄さんにはお兄さんの世界があるだろ?
ここにいては いけない」
『なぁ チャンミン いいだろ?』
「帰ってよ・・・お兄さんとはしない
もう そんな気も起こらないし・・・
昨日はごめんなさい
何もしないで もう帰って?」
昨日とは立場が真逆であることに苦笑いしてしまう
俺は チャンミンを諦めたくなくて
何も言わずに さっさとシャワールームへ向かった
チャンミンが声を出す前に
もう服も全て脱ぎ身体を洗っていた
シャワーを終え
残ったビールを飲み干す俺を
あっけにとられたまま
少しの怒りを含んだ目線で俺を見るチャンミンに言った
『教えて?
チャンミンが 抱かれる気がないのなら
俺を抱いてもいいよ?
どういう風にするのか教えてくれ』
裸でチャンミンの前に立つと
チャンミンは顔中を赤く染めて
潤んだ瞳で俺を見上げた
「いいの・・・?」
『ああ・・・』
「じゃあ一度だけ・・・」
チャンミンの目に欲の色が宿った
ポチっと応援お願いします♪
↓
にほんブログ村