黒い瞳が邪魔をする 第三幕 (最終話)
C side
覚悟はしていた
もしかしたら 僕たちは
別れることになるかもしれないと・・・
正確には
別れを告げられるのではないかと・・・
一緒にいられないくらいなら
いっそのこと 別れた方がマシ
そう思い始めた矢先だった
久しぶりに呼ばれた
懐かしささえ感じるユノヒョンの部屋で
自然に身体を重ねた
ヒョンに抱かれるのは
きっと これが最後・・・
そう思うと涙が止まらなかった
行為の最中も
嬉しさや悲しさ
愛しさなんかが どんどん湧き上がってきて
このまま誰もいない世界に2人で飛んでいけたら・・・
なんて現実逃避になるようなことばかりを考えていた
激しい交わりのあと
ユノヒョンはハッと我に返ったような表情をして
いきなり僕から離れて布団をかぶってしまった
何も身に着けていない状態でベッドに仰向けになっている僕は
隣りで小さく震えるヒョンの塊りから
小さな後悔を感じ取った
帰ろう・・・
僕たちは別れたんだ
留学したら2年間は逢えない
韓国に残ったとしても
別れたらもう逢えない
どちらに転んでも逢えないのなら
僕たちは こんな運命だったのかもしれない
止まったはずの涙が また頬を伝う・・・
そっと服を拾い集め
身体中につけられているであろう赤い印を素早く隠す
この印が完全に消えてしまうと
もう僕たちを繋ぐものは何もない・・・
最後にヒョンの顔を見たかったけれど
布団を剥がすのは何故かいけない気がして
「ユノヒョン・・・ありがとう
愛してる・・・元気でね・・・」 とだけ声をかけて
幾度となく抱かれた馴染みのある部屋を後にした
バタンとドアが閉まると
し~んと静まり返る廊下
ワンルームばかりのこのアパートは
エレベーターホールの横の窓が開閉できる
誰が開けたのか
ホールの向こうから流れてくる風は
強く そして冷たかった
1人で立つ廊下は寒々しくて
早く自分の部屋に入って温まりたい
真冬でもないのに
凍えてしまいそうだ
寒いよ・・・
僕の心のように・・・
他階の自室に戻った僕は
すぐにバスルームに向かった
身体に残るヒョンの香りを消そう
明日から
僕は前を向いて歩いて行かなければならないのだから・・・
一人暮らし用の小さな部屋なのに
バスルームについている鏡だけが無駄に大きい
変なの・・・
素っ裸で鏡に映る自分の姿
この身体をヒョンは何度も何度も愛してくれた
あちこちに見える赤いしるしは小さいものから大きいもの
赤いものから少し薄紫がかっているものまで様々で
その数は改めて見ると異常なほど多い
どれほどヒョンが
僕に愛撫を重ねたのかが一目でわかるくらいの数だった
ゆっくりと 肩から胸 そして脇腹へと
しるしを指でなぞっているうちに
また僕の目から涙が溢れてきた
「うっ・・・ん・・・ううっ・・・ヒョン・・・」
僕は いつまでも いつまでも
熱いシャワーに打たれながら涙を流し続けた
どうして こうなっちゃったんだろう・・・
僕がヒョンのことを好きになり過ぎちゃったからいけないんだね
明るく「行ってきます」と言えなかったからなんだよね
ヒョン・・・
ヒョン・・・
僕はヒョンが好きだよ
ユノヒョンが大好きだよ
今も
今までも
そして これからも・・・
ヒョンが 新たに好きになった女の人と
これから新しい道を歩くのなら
僕も別な道を歩いて行かないといけないね
せめて
『面倒くさい男とつきあっちゃったな・・・』
なんて後悔だけは されないように・・・
シャワーの下でヒョンへの想いを噛みしめながら
僕は できるだけ早くアメリカに発とうと決めた
ヒョンと別れた翌日
僕は暮らし始めて日も浅い一人暮らしの部屋を
さっさと引き払った
僕の変わりようには教授はおろか
父さんも母さんも驚いて
こんなに急いで引き上げなくてもいいのにと
少し面食らった様子
訝しく思っているらしいことも わかってはいたけれど
今 勢いで行動を起こさないとダメな気がしていたんだ
夏休みに入り
僕は何度か大学に足を運び
教授とも話をした
それ以外の日々は
手続きやら準備やら留学先との連絡やらで
大忙しになった
友達に連絡を取り
留学が決まったことを知らせると
すぐに送別会を開いてくれて
本当に休む間もない毎日に助かっていた
妹のハナの家庭教師をしてくれることになったのが
親友のキュヒョンだったことは本当に救い
これがドンへさんだったら・・・
否が応でも
ユノヒョンの影を感じてしまうことになるからだ
キュヒョンには一度 家に来てもらい
僕とユノヒョンの関係について本当のことを話した
”いいのかよ? それで・・・”
親友の心配は有難かったけれど
僕の決心が これ以上揺らがないように
聞く耳は持たないと決めていたんだよ
毒舌だけど いつも優しいキュヒョン
これからも僕は君を頼っていいかな?
僕が部屋を引き払ったり
大学が夏休みに入ったおかげで
ユノヒョンとは あれから一度も会っていないし
連絡も取っていない
憧れだったユノヒョン
きっと あなたは自分の思い描く未来へ
真っすぐに突き進むのでしょう
隣りにはユノヒョンを支える可愛い女の人がいて
明るい太陽のもとで
成功者への道を確実に歩んで行くのでしょう
ユノヒョンには明るい太陽の下が似合うよ
僕に見せてくれたように そのおおらかな笑顔で
回りの人たちを幸せにしてね
陽の当たる道を堂々と歩く姿 見てみたいよ
いつか笑って話せる日が来るように
僕は自分の足で歩いてみせるよ
だから ヒョンも頑張って!
涙もろい母さんが見送りに行く行かないで揉めるとか
家族だけの貴重な時間を持った後
僕が留学先のアメリカへ旅立ったのは
大学2年在籍中の
7月も終わりに近い とても暑い日だった
さようなら・・・ユノヒョン
大好きな人・・・
僕が初めて愛した人・・・
*イメージ 画像お借りしています*
〜 第三幕 色褪せぬ想い出 Fin 〜
最後まで読んでくださりありがとうございました
少し間をおいて 第四幕の連載を開始いたします♪
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