癒しの T-Garden 赤い海の旅人

黒い瞳が邪魔をする 第一幕 30話

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Y side





少しウトウトしてしまった


今週は忙しかったからな・・・


目を開けて隣りを確認する


えっ? 


チャンミナが いない・・・


ついさっきまで
肌を温めあった相手がいなくなっている・・・





ベッドから飛び降りて裸のまま家の中を探した


リビング キッチン トイレ


シャワー?


バスルームを覗くけど
そこにチャンミナの姿はない・・・


朝 俺が使ったままのバスタオルが
洗濯機に引っかかった状態で冷たくなっているだけだった





まさか・・・


恐る恐る玄関へ向かう


チャンミナが履いてきたと思われる靴は何処にもなかった


あるのは見覚えのある自分の靴だけ


帰ったのか?





まだ何も話してない


それに 俺・・・


お前にまだ謝ってない


『ごめん』って言ってない


『急に別れを切りだして ごめん』って・・・


『お前の気持ちも考えず決めたりしてごめん』って・・・


俺・・・


まだ 言ってないんだよ?


『何も言ってないんだぞ・・・
何も・・・
謝りたかったのに 何でだよ・・・』





なんで行っちゃうんだよ・・・


こんな温もりの記憶だけ残して
なんで帰っちゃうんだよ


俺の気持ちを乱しておいて一言もなしかよ?


何 一人で完結してんだよ


スマホを手にするも
チャンミンの現在の連絡先を知らないことに気づいて愕然とした





物凄い喪失感・・・


玄関で足の力が抜け
しゃがみこんだ俺の目から
自然に溢れた涙


また お前を傷つけてしまった・・・





どんなに強く捕まえても
ふわりと笑って
するっと俺の手から すり抜けて行ってしまう


清らかな笑顔で俺を虜にする天使のような男


もう俺の手には届かないのか・・・?





しばらく ぼーっと床を見つめた後
力の抜けた身体で立ち上がり


どうしたらいいのか
わからない感情を洗い流したくて
シャワールームへ向かった


力いっぱい洗った


チャンミナの残り香
肌の感触
全てを力任せに洗い流した





冷静になって考えると
自分の行動は チャンチャラ可笑しい


引き止めて どうするつもりだった?


ユンアとの結婚を控えている身で
チャンミナとも続けようとした?


本当に好きなのはチャンミナだって
告白でもするつもりだった?


で チャンミナの気持ちは?


俺は いつからこんなに身勝手で
卑怯な人間になり下がってしまったんだろう


ミネラルウォーターを一気飲みすると
チャンミナのいた形跡を消すべく


シーツを丸ごと洗濯機に放り込んだ





ため息をついたのと
エントランスからのインターホンが鳴ったのは
ほぼ同時だった


スマホを確認すると
ユンアからのラインがいっぱい・・・


気になって来たんだろう


今 ユンアに会う気には到底なれず
友達が来ているからと いい加減な嘘をつき
インターホン越しに断った


父親の運転手に車で送ってもらったと聞いて
そのまま その車で帰ってもらうことにした


さすがに
この時間に女性を一人で帰すわけにはいかないからな・・・


部屋の電気を消し窓から下を見ると
マンションの前に黒塗りの車


立ち止まって上を見上げ
諦めたように車に乗り込むユンアの姿が見えた





結婚相手が来たというのに姿も見せない俺は
ユンアにもチャンミナにも何て不誠実なんだろう


ごめん・・・





自分がどうしたいのか
ますますわからず
大きなため息ばかりが耳につく





明日のランチは社食にしよう


今度こそ チャンミナの連絡先を聞き出さなければ・・・





そんな単純な俺の目論見も
翌日のお昼には
容赦なく無意味なものとなることを考えもしなかった
浅はかな俺





翌日 知ったことだけど
チャンミナは バイトを辞めていた・・・





うっとりと「逢いたかった~」なんて嘘だったのか?


一度身体を重ねれば それで良かったのかよ?


大きな目いっぱいに涙を溜めながら
「好きだったか?」と聞いたのは?


それで綺麗さっぱり最後にするつもりだったのか?


昨夜の妖艶で積極的なチャンミナを思い出し
胸が苦しくなった


チャンミナ・・・


お前 どんな思いで俺に抱かれたの?


どんな決意があった?


どうして一人で抱えるんだよ・・・


やり場のない後悔と やるせなさに苛まれたまま
その晩 ユンアと会った





チャンミナ 


お前は 今 何処にいる?





第一幕 偶然の再会 Fin




♥️ ♥️ ♥️ ♥️ ♥️ ♥️ ♥️ ♥️ ♥️ ♥️

第一幕が終わりました
読んでくださってありがとうございます🙇‍♀️
何日になるかは
まだはっきりとはお知らせできませんが
年明け1月から第二幕へと入らせていただきます
第二幕は2人の出会いから
(第一幕の8話にも最初にの出会いのシーンがあります)
つきあうまでの高校生時代のお話となります
以前ほど読んでくださっている方は多くないですが
ご感想などいただけましたら嬉しいです😘



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黒い瞳が邪魔をする 第一幕 29話

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今日も続けて C side です





何度も抱き合って
欲望を解放し合って


疲れ果てた僕たちは
シャワーも浴びずにベッドで横になった


毎日 このベッドで寝てるんだね


社会人になると家具も立派になるんだね


一目で高級とわかるベッドの上で
高い天井を見上げていた





『チャンミナ・・・後悔してない?』


ヒョンたら・・・


後悔なんて するわけがないでしょう?


僕は ずっとあなたの面影を抱いて生きて来たんだよ





「ヒョンは幸せなんでしょう?」


『えっ?』


「結婚する人もいて幸せなんでしょう?」


『チャンミナ・・・』


答えられないんだよね・・・


「わかってるよ
言いずらいよね・・・」


この部屋も このベッドも
本当は僕がいちゃいけない場所だって
痛いほど わかってる





困っているユノヒョンに
思い切って聞いてみた


「ねぇヒョン つきあっているとき
僕のこと 好きだった?」


『いきなり何を言うんだ』


ビックリしたのか 
ベッドから身体を起こし
目を丸くして僕を見据える


突然変なことを聞いた
僕の真意が読めないという風に眉間に皺を寄せた


『当たり前だろ?
俺が ふざけてお前とつきあってたとでも
思ってるのか?』


「そうじゃないよ
ヒョンに ちゃんと聞きたかったんだ
僕が前に進むためにさ・・・」


一瞬 苦虫を噛みつぶしたような顔をして
何か言いたそうな表情を見せたヒョン


『ああ 好きだったよ・・・
凄く凄く 好きだったよ・・・』


もう 過去形なんだね・・・


わかってはいても
涙が溢れて頬を濡らす


『チャンミナ なんで泣く?』


あ・・・また困らせちゃった


「泣いてない」


『泣いてる』


「泣いてない」


『これ以上 俺を惑わすな』


長い指で僕の涙を拭うと
ユノヒョンは その指を舐めた


僕は にっこりと微笑んだ


涙の味も覚えていて・・・


「ごめん ヒョンを困らせるつもりじゃなかったんだ
好きだったって言ってもらえて良かったよ」


僕と過ごした時間が嘘でないなら
それだけで僕は満足だよ


ヒョンが幸せなら僕も喜ばなくちゃ


これで前に進める・・・





『バイトは週に何日?』


「ん・・・3日 曜日不定」


『そっか じゃ できるだけ 昼飯は食堂に行く』


「ん・・・」


『嫌な奴がいたら俺に言えよ?
勉強との両立 頑張れよ?』


「うん わかった ありがと」


『応援してるから・・・』


「・・・」


『それから もっと食えよ
大食いだったろ?
もう少し肉をつけないと
これから社会で生きていくには体力が必要だぞ』


「そうだね」


ユノヒョンは僕の頭を撫でて
またベッドに横になった


食堂で会ったら
普通の知り合いみたいに
挨拶をするつもりなんだろうか?


しばらくすると
規則正しい寝息が聞こえて来た





ユノヒョン ありがとう・・・


僕は心の中でお礼を言った


そっと起き上がり 服を着ると
人指し指で 艶やかなヒョンの唇をなぞる


この魅惑的な唇・・・


正直 ちょっと惜しいな


手放すのは残念だけど
今日を限りに忘れることにするよ





ヒョンは どういうつもりで僕を抱いたのだろう


単に僕の願いを叶えてくれただけなのか
それとも
その場のムードに流された一時的な欲望だったのか


本当のところは わからない


もう どっちでもよかった





あの時は まだ子供で
取り乱したまま別れたことが心残りだった


自分の気持ちに区切りをつけたい


きちんと別れを受け入れたいと
ずっと思ってきた


ヒョン・・・やっと終わりにできるよ・・・





微動だにしないユノヒョンを起こさないように
そーっと部屋を出ると
もう11時半を回っていた


もうすぐ日付が変わり
ヒョンとの情事が昨日のことになる





『勉強とバイトの両立を頑張れ』と言われて
「うん」なんて答えたけど・・・


それは 僕がユノヒョンについた
最初で最後の嘘





その日を最後に
僕はバイトを辞めた


さよなら ユノヒョン・・・





💔 💔 💔 💔 💔 💔 💔 💔 💔 💔

明日が第一幕の最終回です😢



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黒い瞳が邪魔をする 第一幕 28話

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黒い瞳が邪魔をする 第一幕 27話

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黒い瞳が邪魔をする 第一幕 26話

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Y side





俺なりに少し緊張して店に向かった


店の入り口で深呼吸をしたのは
今更ながら 
チャンミナを呼び出したことが怖くなったからだ


一体 俺はどうしたいというのだろう?





別れて2年以上が経ち
新しい人生を歩んでいける算段だった


チャンミナも きっと輝かしい人生を
歩き出しているに違いない


そう思っていた





ただ一つ
予定通りに行かなかったことは
俺の心が変わらないこと


いや
変われないことだけだった





チャンミナ・・・


忘れたことなど一日もなかった


どんなに仕事で忙しくても
遥か遠いアメリカで頑張っているであろう
お前を想った


新しい恋人ができても
お前と一緒にいた あの頃のような
キラキラした毎日は やってこなかった


愛しくてたまらないという相手には
出会えなかったんだ





きっと 罰だ・・・


チャンミナのためと言いながら
一方的に別れを告げた罰なんだと
自分に言い聞かせていたけれど


いざ 偶然とはいえ
チャンミナに再び出会ってしまったことで
思い通りにいかない自分の心の奥底にある気持ちに
はっきりと気づかされてしまった


苦しい・・・





何か
やり残したことがあるよと
声のない言葉で言われているようだった





お酒に飲まれて
やたら絡んでくるチャンミナを目の当たりにし
あれ以上あの店に
いるわけにはいかないと思った


冷静に話ができると思って選んだ店だったけれど
あんなに酔った状態では
話すことはおろか
まともに座っていられるかどうかさえ危ぶまれたからだ





二人で逢うことは避けたかったという思いと
二人だけで逢って
きちんと詫びなければならないという思いが
交錯していた





なのに・・・


チャンミナが それを許さない


こんなに酔って
素直に甘えてくるなんて


想定外で・・・


素面では話せないって
こういうことなのか?





首筋に感じる吐息


額に触れる柔らかい前髪


俺よりも少し小さい手の感触


そのどれもが
今の俺から簡単に理性を奪ってゆく


一旦身体を離したけれど
すぐにまた近づいてくる美しい顔





ダメだよ・・・


キスなんかしちゃ・・・


これ以上 俺を刺激したら
また お前を傷つけるよ?


チャンミナからの突然のキス


どうした?


固まったまま
チャンミナにされるがままになっていた俺


「ヒョン・・・ 好き・・・」


俺の唇で遊びながら
漏れ囁かれる言葉


変わらない甘い声が
こんなにも甘美に俺を誘う


俺も いつの間にかキスに応えていた・・・





舌を入れようとすると
スルリと交わされ唇を離される


「ヒョン・・・」


今度はもっと甘い声で耳を犯しにくる


『あっ・・・』


そんな技 どこで覚えた?


誰に教えられた?


誰に使った?


どす黒い嫉妬の炎がメラメラと燃え上がり
もう我慢の限界だった


耳を舐めまわされ 声まで漏らす俺は
チャンミナに支配されていた





      

年内に第一幕も終わります
第二幕は年明けになります
予定はまた後日お知らせしますね



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